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小学生のぼくは日記を書くことにした

文戸玲

人にやさしく


 ぼくは将来偉い人になるらしい。おばあちゃんは夏休みに会うたびに,「コウくんはえらい人になる。あんたは賢いねえ。」という。今年で80歳になるおばあちゃんが言うのだからぼくが偉くなるのは間違いないのだろう。おばあちゃんに言わせれば,ぼくは他の子どもとは違うことに興味を持って,何にでも疑問を持ち,そしてよく探検に出る。そんなところが天才なのだという。コウくんという名前も天才たるゆえんで,ぼくのコウシという名前は昔の偉い人と全く同じ名前らしい。「名前から他の人とは違うのだ」と言っていたけど,そうだとしたら名付け親のお父さんとお母さんはかなりの天才なのかもしれない。お母さんのことはほとんど知らないのだけれども。
 とにかく,ぼくは他の人とは違う性質を持っていて,生まれながら特別な存在であるらしい。そして,ぼくが賢いことはよくよくおばあちゃんから言われていたのだけれど、本当にぼくのすごいところは優しいところらしい。やさしいというのは生きるうえでとても大切なことだとぼくは知っている。おばあちゃんが良くいっているからだ。賢いだけではいけない。人にやさしくないといけない。人にやさしくしていると,自分のやさしくされる。人は,人にやさしくして,やさしくされていないと幸せを感じることをできないんだ。人は幸せを感じるために生まれてきているから,人にやさしくしないといけないんだ。やさしくないといけないんだ。っておばあちゃんはよく言っていた。どういうことか分かるにはもう少し時間がかかりそうだけど,きっともう少し大きくなったら分かるだろう。だってぼくは賢いんだから。とにかく,人にはやさしくしないといけない。やさしくだ。

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