三日月
(53) ズキ
お2人が帰ると同時に鈴木さんは店の中居さんを呼んで帰った方のテーブルセットを新しいものと取り替えてもらった。
その間に残りのすき焼きの具を鍋に放り込み足を崩してリラックスして座り話始める
「カネ、ありがと!契約取れたよ、ジャンジャン食べてください。とっても美味しいですから」
「ズキ、おめでと!約束だから同伴してよ」
「喜んで、お供いたします。
ところでエリちゃんは変わらないね、昔っから美人だったもんね。同窓会に来るって言うから行ったのに 会えなくて残念だったよ。今日はカネ、まさか本当に連れて来てくれるとは 驚きで。って、ほんとにエリちゃんだよね?」
「えっと、ズキ覚えてます。」
この学校は、皆んな名前の一部ちょっと変わった部分からアダ名を作るのが流行っていたようで、私が転校して来たときもユニークだなと思ったものだ。
中でもズキは、ありふれた苗字がここまで変化しているので特に印象に残っている。
「嬉しい!オレ、エリちゃんの影の信者でした。秘密結社」
「ウソばっかり」
それからズキに進められるままお酒と美味しいすき焼きをたくさん食べた。
「美味しい!焼き豆腐なんて幸せな味がします」
「エリちゃん感じ変わったね?トゲが抜けて幼く見える。可愛いね」
ストレートに言われて顔が熱くなる
「エリちゃんて、それが素なのか? ウブなんじゃないか?」
もっと、図星をつかれ返事に困って頭がクラクラして来た。
「ごめん、からかいが過ぎたようだ。ちょっとビックリしたのと、嬉しくて舞い上がっていました。」
「大丈夫です。私の方こそ大人気ない反応をしてしまって、驚かせてごめんなさい。」
そこにカネが手を叩いて割り込んでくる
「ハイハイ、そこまで!これから先エリちゃんとお話ししたければお金を払って下さい!」
 そう言うと呼んであったタクシーに四人で乗り込んで銀座7丁目に向かった。
着いたビルは一階入り口からゴージャスなゴールドに彩られ乗り込んだエレベーターが開くと、そこはまさしく高級クラブの世界だった。
床は紫のフカフカな絨毯、それと同じ色のソファー、壁と天井は薄いゴールドで、微かに景色を反射して写すようになっていて、更に天井と壁には惜しげもなくシャンデリアが散りばめられていて正気を失う圧倒的トリックに足を踏み入れた途端に飲み込まれてしまった。
店内を彩る女性の美しく華やかな事にも圧倒された。
途端に私はキラキラで、ピカピカで美しい店内に魅入られてしまい
「エリちゃん行こ」
ズキに声をかけられるまで、立ち尽くしてしまっていた。
席には、お客様であるズキに案内してもらって 12時の約束の時間までズキの横に座ってズキに水割りを作ってもらって、たまに帰ってくるカネは
「ズキ、エリのグラスに水割りを作ってあげて。」
と、いうだけで行ってしまう
アルコールに酔っているのか、この場の雰囲気に酔っているのかわからないまま私は全くお仕事などせずに終わってしまった。
帰りはタクシーで家まで送ってもらって12時半には帰りついたと思う。
着物を脱いでいると母親が起きて来て驚きながらも手伝ってくれて着物は匂いを取るために風通しの良い場所に吊るしておいてくれたので、シャワーを浴びて1時過ぎに暗い部屋からカズの部屋の窓を覗いてみるのだが窓もカーテンも閉まっていた。
今日1日にいろんなことがありすぎて、頭を整理する気にもなれない。
今夜は何も考えずに ただ眠りに付きたい気持だった。
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