三日月
(51) 心臓に毛
「そうだカズ、今夜は用事があってお散歩できないの。ごめんなさい!カネちゃんから連絡があってお茶して来る」
「りょうかい!エリが来れないならオレもお休みしてハサミのお仕事の時間として使うことにするよ」
「明日は一緒に会社まで出勤できるんだけど、帰りからは別々だ、お散歩もお休みさせて欲しい」
じゃあ、これからはいつカズと合えば良いの?
そう思うととても胸が苦しくて、何も言えない。
「うん」
とだけ、なんとか声を絞り出した。
「エリ、お弁当食べれる?」
首を左右に一回ずつだけ動かした
「オレもだ。3時にお腹が空いたら食べよか?」
その言葉に俯いたまま うなずいた
「えっと、三木谷建設で働き出したのは、5月21日からで、今日が6月8日だから18日間か?40年って、たった18日で変えることができるんだね。凄いことを発見してしまった!実り多い時間を共に過ごしてくれてありがとう」
明るく振る舞おうとしてくれている。
カズの研修期間は終わったのね。
また寂しくなるわ。
「でも、まだ不完全なオレの彼女として隣でご指導してくれるかな?」
俯いたままうなずく
「良かった。動物園も年パスだし、クリスマスにはピアスを買ってあげたいし、シャボン玉の液もまだあるし、料理の毒味もお願いしてあるし、オレのお願いばかりだな。。エリはお願いないの?拗ねたり、甘えたり、オレで練習して欲しいな」
「わかった、私も練習する」
返事をしたが、喉に詰まった声が出たので、私は泣いているのかもしれない。
もうそんなことどうでも良いほど空虚な気分だ。
こんな苦しい気持ちになったのも初めてだ。
カズは私が知らなかった感情の窓をたくさん開いてくれる大切な人だ。
今夜はこんな気持ちのまま、また新しい窓を開けろ!という神にはホントに困ったものだ。
きっと、そこには私に必要な何かが待っているのだろう。
昨夜の心臓のバクバクは一切しなくなっている。
きっと心臓に毛が生えたのだろう。
「カズ、私お弁当食べるわ。もう大丈夫みたい」
「わかった、オレも食べる。ベンチに行こうか」
何事もなかったかのように、4人の最後のランチタイムでは、週末の100枚写真をネタに笑い声で幕を閉じた。
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