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三日月

ghame

(45) 同窓会

 カズは出かける5分前にメールを入れる事が、すっかりパターン化していて、5時10分にメールが来た

 私が今日選んだ服はカズと恵比寿のアトレで気に入って買ったワンピ。
 ボディー部分は光沢あるゴールドベージュで、肩から手首までは同色でシスルー。
 裾はフワッと風に揺れる軽いデザインで、全体的に上品なところが気に入っている。
 
 そして今日の髪は母親に手伝ってもらってフワッとアップにして、パールが付いたゴールドのクシを刺した。

 三日月のネックレスと、揺れるダイヤのピアスにベージュのミュールを履いて、小さめのゴールドのバックを肩に引っ掛けた。

 玄関から外に出て ドキッとした

 私の家の門には、おめかししたカズが立っていたからだ。

 髪はジェルを使った様で湿っていて、普段隠れているおでこを出し、パリッとした好青年だ。

 濃紺で細身の3ピースのスーツを着て、シャツは薄いグレー、それにネクタイは水玉に見える柄でスーツと同色だ。
 今日のホテルでピアノを弾くことを考えてのことだろうが、このハイグレードな仕上りは、舞台に上がれば今日の主役間違いなしだ。

「エリ、とっても綺麗だ、今日はオレの横から離れちゃダメだぞ、目薬とか盛られて連れ去られる」

 カズは絶対山下くんに感化されているわ、どこまで本気なのやら、、。
「わかったわ、目薬盛られたら、家まで連れて帰ってください!カズに目薬盛られたら、私が連れて帰ってあげる」
「もちろん無事に送り届けるよ。そして、オレが盛られるなら毒だ!浅草の土に埋めてくれ!」
     私の心配より、その姿で舞台に上がって注目を浴びる自分の心配をすべきだと思いますが、、、。

「そろそろタクシーが来る頃だと思う、一緒に自撮りをしよう。自主練の成果を見せてやる。」
 すごく自慢気に見える
「練習の成果、見せてください」

 タクシーが来る間、2人で自撮りをするのだが、どれだけ練習したのか?
 ほんとに上手く撮れるようになっている、切れてない!調子に乗ってタクシーの車内でも写す。

 先週の100枚写真のおかげで映ることも、ポーズも、2人揃ってお手のものである。
 あれから私は、更に自宅に帰ってからも気になって他にもポーズはないのかと、復讐までしてしまった根っからの優等生である。

 2人の写真が増えて、離れている時間もカズを見て楽しむことが出来る。
 その写真の背景には、くだらないエピソードの映像が付いて来るので、なかなか楽しい時間を送れる。
 明日は動物園で4人の写真が撮れるのが楽しみだ。


 20分ほど走ると、タクシーは今夜の会場へ到着して、タクシー代はカズが出してくれた。

 浅草にあるスカイツリーを望めるホテルの宴会場に着くと、受付の人と幹事が当時のブレザーを羽織っていた。

「ほらやっぱりジャージにすればよかったんだよ」
「本当、残念だわ。今夜の主役になり損ねた」
と残念がって見せる。

 一緒に受付をしに行くと、カズの名前には印がされてあって、そこにサインをすると、ピアノの打ち合わせにと呼ばれた。
「じゃあ、ちょっと行って来る」

 一人になり、会場に入る前に外の景色を眺めていると後ろから「エリちゃん」と呼ばれたので振り向くと、ハサミに感じの似た華やかで、美しい女性が立っていた。
 誰だか思い出せないでいると、自分から名乗ってくれた
「カネよ。川島あかね!エリちゃん全然変わらないね、すぐわかった。
でも正直、他の人は変わってて誰だかわからなくて声をかけられないの」

 彼女は当時から派手な方で学校でも目立つ存在だった。
「カネちゃん、綺麗になり過ぎてわからなかった。元気そうね」
「うん元気にしてる。エリちゃんは?」
 それからしばらく近況報告をしていると、カズが戻って来た。

「えっと、こんな綺麗な方いたっけ?」
「三日月くんね。そうだ!カズって呼ばれてたわよね!背はすごく伸びてるけど、顔が変わらないからすぐわかった。私は川島あかね、カネよ。このあだ名のせいで金好きとか言われていじられまくったわよ。あはは」

 カネちゃん、社交的だわ!久々に会った人に、こんなに話が広げられるなんて、すごい人間力!
「折角だから写真撮らない?待ってて」
 と言ってホテルのスタッフを連れて来て自分のスマホを手渡し3人夜景の前に立つ。

 縦と横で数枚写すと、写真を転送するからとラインアドレスを聞かれて、早速写真は送られて来た。
 その写りを見るとカズも私も初めて写した時とは違い、こなれた感じに写っていて満足した。

 予定時間より少し遅れてスタートしたのだが、まずは皆んなの注目を集めるために校歌からにしたようで、校歌の歌詞がステージのスクリーンに映し出される。 
 人数は5クラス中、100人も集まっているよう見える

「校歌、ピアノ伴奏者 桜井三日月」

 舞台横のグランドピアノに光が集中し
カズが舞台へ上がり、その光の中へ向かい背筋を伸ばしてゆっくりピアノに歩み寄って行く。
 私が緊張してしまう。

 美しいお辞儀をして浅く椅子に腰掛けると、会場に居た皆んなは、パーティーの始まりの神妙な空気の中に立つ、紺色の美しいラインの青年に魅入られる。

 ピアノに座る、頭から背筋を真っ直ぐ伸ばしたカズの姿勢は、本当に綺麗だ。

 カズは目を瞑って深呼吸すると、次の瞬間目を開いたと同時に力強く曲がスタートした。

 ドラクエのオープニングテーマ曲だ。

 会場からは「おーー」と言う声が、あちこちから小さく上がる

 この曲の始まりは 一本の力強い光線を感じるのだ。
 そしてそれは2本3本と次第に数を増やし、やがて朝日が姿を現し、その光に向かって真っ直ぐ進む仲間たちの勇ましい様子が目に浮かんで来る。

 ドラクエ世代の皆んなの心は、いきなり中学生へとタイムスリップし希望に膨らむあの感覚が胸を満す。 
 それから徐々に思い出の校歌へと繋げていく。

 私の頭から足の爪の先まで鳥肌が立っていて、その見事な演奏にため息が漏れ 
  涙が溢れた
    「カズ、、、」

 大きく轟く校歌の中なぜか胸が苦しくて、歌うことができなかった。

 校歌が終わると大きな拍手が会場を満たし、いつまでも鳴り止まなかったので、何度も何度も頭を下げてカズは満面の笑顔を送り続けた。

 隣の席に戻って来たカズは、シャワーを浴びた様にすごい汗で、テーブルに用意されていたお絞りで顔を拭き、エリの耳元に顔を寄せて言った。

「気持ちよかった。けどすごく疲れたから、もう帰りたい」

「じゃあ帰ろっか?」

 カズと、ニッと笑い会い
こっそり会場から抜けて、浅草の街を歩く事にして、外に出て歩き出した。

「エリお腹すいた」
「カズお腹すいた」

「会費高かったな」
「だな!」

「ちょっとくらい食ってくればよかったかな」
「会場戻るか?」

「それはダメだ」
「無駄遣いの罰はマックだな」

 それから2人は場違いな服のまま浅草のマックをたっぷり注文してガッツリ食べた。

 お腹いっぱいのカズは帰りのタクシーで寝てしまったので 本日2度目の膝枕をしてあげた。

 家に着くとカズは名残惜しそうに私のワンピース姿を見たので、負けずにスーツ姿のカズを綺麗だなと思って見返した。

 しばらくするとカズが口を開いた
「今日は誰にも見せなくて良かった」
「??」
 カズは私を見せないように早々と帰ったの?

   キューン。

 って、この私の胸の音はなんだ?

 カズに向かって儀式のパンチを飛ばすと、カズもオズオズとパンチを返して来た。

「今日はお疲れ様、感動して涙が出ちゃった、明日は8時ねおやすみ」
「エリ、おやすみ。涙を流してくれたんだ。良い夢見れそうだ、ありがとう」

 カズのこのレッスンは、いつまで続くのかしら?
もうバーチャル彼女なんて居なくても、十分に実力はあると思うんだけど、、、。


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