三日月
(43) ボルボ親心
6月6日 土曜日
昨夜は閉店時間のAM1:00まで皆んなで楽しく飲んで、山下くんは、カズの部屋に泊まる事になったのだが12時前に「接待が終わった。」と、社長が合流した頃には既に、彼はお眠になっていて、社長が来たことは気が付いていない。
更に接待に同席したという義理の息子(三木谷さんの父親)も一緒で、それからもう一盛り上がりした。
三木谷さんの父親は大手建設会社に勤務していて、三木谷建設にとっても大口の取引先になっている企業だったのでよく知っているが、今日の接待もそう言った関係のものだったらしい。
話を聞くと、その大企業の営業部で課長なので かなりのエリートなはずだ。
年齢はエリ達より少し上に見えるが、このての人間は実際よりも若く見えるはずなので、もっと上かもしれない。
帰りは自転車を置いたままタクシーを呼んだ。
そんな感じの夜だった。
そして今朝は早くから窓を開けてPCに向かい、隣の窓を伺っているのだが10時になってもカーテンが開かない。
まだお隣は寝ているのか気になって仕方がなくて、「しょうがない、私の負けだわ」みたいな気分になりながら、カズにメールする。
<山下くんどう?大丈夫?>
すると返事がすぐ来た
<熊冬眠中、部屋を暗くしたままオレは今夜の練習をしていたとこ。冬眠から目覚めたら、一緒に飯く?>
カズは起きてたのか。
山下くん、アルコール強そうな体格してるのにまだ起きれないなんて弱いのね。
<行く!メールして>
それから1時間くらいしてからメールがあった。
<熊、冬眠から目覚めました。12時ごろに自転車取るついでに駅前まで行ってランチしようか?>
<OK!三木谷さんも誘ってみます>
<よろしく~>
さて、と。
三木谷さんにもメールを入れて 準備を始めた。
メールの返事は<行きます~>と来たので12時半の待ち合わせをした。
時間になって出て来た山下くんは、今時のデニムのパンツとちょっとサイズがちっちゃいかな?って感じのTシャツを着ていて、ガタイの良さが強調されていたが、どうやらスーツのまんまじゃなんだからとカズのお父さんの会社のサンプル品をもらったそうだった。
駅前まで行くと20歳の女の子らしい可愛いショートパンツを履いた三木谷さんが眩しい笑顔で手を振っていた。
それを見た山下くんが「眩しい若さが刺さる」と、私まで納得してしまうピッタリな表現で本日の一発目の笑いを皆んなから頂いた。
「主任もそのファッション若いですよ!着替えまで持って来てたとは?さては昨夜はお泊まりしたくて寝たふりだったんですね」
「そうなんだよ桜井くんにどうしても お持ち帰りして欲しくて、そして彼の部屋で一緒に寝ちゃった」
「そう、、昨夜の主任はッ。ブーッッ。あははッ」
思い出し笑いを我慢でないようでカズは爆笑しながら話し始めようとして、山下くんからの強烈タックルをくらうが負けないで話す
「こいつさ、寝言ッ、寝言いったぜ、昨日ッ。。皆んなに見せたかったよ。来週は、こいつ酔わせて寝てるとこ皆んなで動画撮ろうぜ!寝言、呑んだら必ず出るパターンだと思う。あーッいいもん見た」
更に笑う。
何て言ったのかが気になる
三木谷さんが、我慢出来ずに聞いてくれた
「なんて言ったんですか?」
カズは、更に大笑いで言葉にならない
「熊語だぜッ!あ&^%$あ@#$%きぱ&^%。こんな感じッ!!あれ、なんって言ってたんだ?」
山下くんは、両手で真っ赤になった顔を隠して背を向け白状する
「赤パジャマ、青パジャマ、黄パジャマ」
それを聞いた3人は大爆笑した。
一番喜んだ三木谷さんが発言
「主任て面白引き出しいっぱい持ってますね。自宅での様子も見てみたい。オベント屋さんも見てみたいし、いつか皆んなでオベント買いに行きませんか?」
「行きて~住所教えてくれよ」
「あ!お店の名前で検索できるはずです。山下修理工場で検索したら良いんですよ。戸越銀座の商店街です。一号線、私車で来ました。行きましょうか?」
「おいおい、おまえら!!」
「今から行く?オレらは今日同窓会があるから遅くても4時までに戻って来れたら大丈夫かな?」
「私は遅れて行っても問題ないわ、カズのピアノさえ間に合えば。」
「そっか、じゃあ熊亭へ行くか」
私達 3人はノリノリで
「イエ~い!」
そして山下くん1人は座り込んでいる。
「家に来ても熊くせーぞ!!」
早速飲み物を買って三木谷さんの乗って来たボルXC40に乗り込む。
「さすが、お嬢良い車乗ってんなぁ〜」
「ん~。パパのだよ、ぶつかっても死なないからコレに乗りなさいって」
「お~納得親心」
道を教えるために山下くんが助手席に座り、そのナビがとても良かった為、道を一度も間違えずに到着することになるのだが、彼は下に3人弟がいてその3人とも車の運転を教えて立派にしただけあって説明やらよちよちしている運転のお世話が上手だ。
辛抱強く横でサポートするのだ。あのピチピチのTシャツで、、山下くんはそんなことには無頓着なタイプなので20歳の三木谷さんはさぞかしドキドキしていることだろう、と思うとちょっと笑える。
そんなお世話上手な彼だから、きっと現場でも沢山の若者を一人前にして来たと想像出来る。
「山下くん、ご実家が車の修理工場なのに何故建設業会に?」
「課長、それは大学の時にバイトで金になるので始めて、就職活動の時に社員として採用してもらったのがきっかけです。体を動かす仕事がしたかったのでオレには向いていると思っていて今は事務職ですが、それも必要かなと。そのうち営業もやってみたいと思ってます」
なんだか思ってたより、しっかり考えていたのね。
カズは隣で得意の睡眠中、フラフラしている頭をゆっくり私の膝に乗せてあげる。
「桜井さん、寝ちゃったんですか?」
三木谷さんはバックミラーにカズが映らなくなったので聞いてくる。
「そうなのよ、カズは私が居るとすぐ寝ちゃう体質なのよ」
「安心してるんだ、三日月王子」
「王子って柄じゃねーよな、オレこいつのこと好きだ」
三木谷さんも嬉しそうに
「私も皆んな好き、おかげで会社に行くのが楽しくなったの。」
「お前虐められてたのか?」
「そうなの、2階の事務のYさんに。」
「本当かそれ!オレが締めてやる。Yって山下か?オレのことだろ!このやろ、ほんとに虐め倒してやるぞ」
「あはは冗談。キャラが違うってだけ。やっとお友達を見つけたって感じなの」
「俺たちか?そりゃ嬉しいな。お友達になってくれるのか?」
「よろしくお願いします」
「三木谷さん、じゃなくて お友達ならココハちゃんね。私もよろしくお願いします。」
「オレもよろしくお願いします」
その時 フワッと膝にあったほっぺたがバウンドしてカズが目を覚まして
「オレもお願いします」
と、仲間に加わった。
「桜井、何がよろしくだ?聞いてなかったくせに」
「いや、聞いてた。赤パジャマ、青パジャマ、黄パジャマ、だろ?」
山下くんは、また真っ赤になった顔を両手で隠して
「ひゃん」
と言ったので、車は笑いで充満した
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