三日月
(42) 小料理屋 あゆ
仕事が終わって4人で一緒に歩いてあゆママの店に着くと、カウンター席に、私、カズ、山下くんの順で座わり三木谷さんは厨房へ入っていった。
「皆さんいらっしゃい、初めまして山下主任ですね。私はママのあゆです、よろしくお願いします。」
「はい、山下茂生と申します、ココハさんにはお世話になってます。よろしくお願いします。今日は楽しみにしていて仕事も巻きで済ませて来ました」
生ビールを3杯注文して、メニューはお任せにした。
「主任、アルコール弱いんじゃ無いんですか?歓迎会の時顔真っ赤でしたよ?」
「そうなんだ、あまり強くは無いんだ。が、飲みの席は愛してる。お持ち帰り出来ないのが難点なのだが、お前と違って」
「お持ち帰りって何だよそれ!男のロマンだな!」
「おうよ!」
「ちょっと待て、響きは良いけどダメだろ女性の前で!!」
「おう!そだな、課長の前では、やめよ!」
「あゆママ、どうして俺たちは彼女が出来ないのか教えてください。大人の女性からのアドバイス」
「そうね。2人とも素敵だから良い人すぐ見つかると思うんだけど。折角質問してくれたから参考になるかどうか。。自分の事がもっと好きになれたら良いんじゃないかな? どういう事かと言えば、誰が好きか、でなく、、誰と一緒にいるときの自分が輝いてたり、好きになれるか。 そんなことを意識してみたら自分にとっての良い人が見つからないかしら?」
感動したカズは、感想を述べずには居られなかったようで、目が生き生きしている。
「響いた。誰と一緒にいる時が一番自然体かってことか。霧が晴れていくようだ。」
「あゆママ深い!さすが良い女ですね!ママにも良い人、いるんですか?」
「そうですね、私は好きなことを続けさせてもらって理解ある良い人を見つけましたよ」
「ママにとっては、ここに立っている自分が好きってことですね」
「そうなんです、子供が大きくなってやりたい事や居場所が無くなるのなんて嫌じゃないですか。あなた達のような若者がママって、私に会いに来てくれるのはとっても嬉しいわ」
「桜井、良い店紹介してくれてありがとな。オレ、毎週金曜日来ます。結婚資金貯めてたんだけど使い道無くなったから。」
「あら、じゃあ素敵な恋をしなきゃね」
「はい!オレ、恋します」
敬礼
三木谷さんが顔を出してコメントに加わって来た
「ふふふ、全財産吸い取ってやる」
「こら、ココハちゃん、傷ついている方にそんな事言っちゃダメよ。」
この時マナーモードになっている私のスマホにメールが届く、神からだ
「明日の同窓会は三日月の隣に座るべし」
メッセージを見た私は、みんなの会話や周りの音が消えた。
カズの隣に座るって一体どういう事?後でゆっくり考えましょう。
と思うが頭の中でぐるぐる推測が始まる。
どうやらみんなは、朝カズが話していたお料理の話をしているようだ、そして自分にも作れる簡単料理をアドバイスされて、それをカズはスマホにメモしている
「エリ、一番最初に毒味してくれるか?」
「もちろんよ楽しみにしてる。」
返事はしたが、頭の中は先ほどのメールで満たされていた。
なぜ神はカズと私をくっつけたがるのかしら?
私たちには異性としての意識は、この先も全く存在するとは思えないんだけど、、。
これが恋愛シュミレーションゲームだとしたらゴールは私達が恋人?もしくは結婚?そんな他人のお遊びみたいなことに踊らされるなんてまっぴらゴメンだわ。
そうと決まったわけではないのに、腹が立って来た、、静まれ自分!
その後の時間はそのことで頭がいっぱいで、話にも参加できず酔った事にしてボッとさせてもらった。
楽しそうな皆んなの様子が羨ましく思い、この心配性な自分の性格を呪ったが今夜の自分はまだその殻を割る事ができずにいた。
カズはこんな時どうしたのかな?
彼も今の変化を手に入れるためには、きっといっぱい葛藤したはずだ。
私には気持ちを切り替えるスキルはもう少し時間がかかるようだ。
頑張って気持ちを切り替えて話に加わろうと思った頃には、皆んな日本酒に切り替わっていて、話題は4人で日曜日に上野動物園に行こうという話になっていた。
「あちゃ、取り残された」
と、思ったが気持ちはホクホクと一気にあったまって早く日曜日が来ないかな?
と、気持ちを切り替えられた自分がいた。
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