三日月
(38)枕弁当
お昼休み、私は毎日見回りと称して屋上の鍵を持って10分前にオフィスを出る。
上司がいると堅苦しくて、お昼休みに入りにくいと考え配慮しているつもりだ。
今日は三木谷さんが、お昼はどこで食べているんですか?
と、付いて来た。
新人だから、あの秘書課ではきっと居心地悪い事だろう。親の七光などと妬まれるに違いない。
「私は、お弁当を毎日屋上で食べているのよ。」
「今日は私も良いですか?事務所で1人で食べても寂しいんで。」
「もちろんよ、一緒に食べましよ。」
「入社して毎日1人で食べていたの?」
「いえ、初めのうちは秘書課皆んなで社食で食べていたんですけど、なんとなくそのうち会話も噛み合わなくなって来て、無理に会話しなくても良いようにお弁当に変えました。課長。今朝、大岡先輩とお泊まりの話をしていたでしょ?それも気になって、」
「どうしたの?人に聞かれるといけないわね、続きは屋上でも良い?」
「はい、ありがとうございます。」
屋上に着くと
「課長ここ気持ち良いですね。事務所で食べるのとは大違い」
6階に相当する高さから広がる街並みは確かに気分が良い。
程よいサイズの人が信号待ちをしている所、普段は見えない上から見たトラックの木材の積荷など、その景色は常に動いていて一度見入ってしまったら、いつまででも見ていられそうな気がする。
「そうなの、私はここでずっと1人でお弁当を食べていたわ。よかったらいつでも来て!」
「やったー。で、さっきの話なんですけど。私、入社前からここにアルバイトに来ていて。以前は私が、その、、課長がさっき受けた役をやっていたんですよ。でも一度家族旅行でお断りしたら、なんだかギクシャクしちゃって。何せ私新人なので、先輩との距離感なんかも分からなくて ちょっと困ってます。だから課長も、その、、気をつけて下さい。頻繁だし、1人にOKすると、わりと他の方からもお願いされるようになっちゃって、それで親からも『何?』みたいになるし、金曜日はあゆママのお手伝いがあるから無理だし、、。」
  なんだか彼女は、こんな大きなビルのご令嬢としては、なんだか、んー?普通の子ね。きっと周りが信念を持った子育てをされて来たんだわ。
    とっても良い子。
「それは、大変な思いしてたのね」
その時階段から大きな音がした。
「エリ逃げろ!熊が来た!」
「何だと!熊ってオレの学生時代からのあだ名だー!!」
「あれ?課長、ココハちゃん」
「エリごめん、巻けなかった。あれ?ココハちゃん?」
「あはは!お二人おそろいで賑やかですねッ!」
「何だよオレも混ぜろよ!いつもここで集まってたのかよ」
「混ぜろって何だよ。一緒に食うのか?ここには川はないぞ、鮭は取れねーぞ!」
「オレもベントーだ。」
バーンと大きなお弁当箱を出す
「わあ。山下主任のベントー特大ッ!!」
ココハの目が輝く
「実はそうなんだ。オレの食費はバカにならんので弁当!!彼女との結婚資金を貯める為に節約してるんだ。」
「主任ッ彼女いたんですか?」
「ココハちゃん、バカっ!それ聞いたら長くなるよ~。」
「桜井、焼酎持ってこい!飲まずには話せん。」
「じゃあ、金曜日に来て下さいよ!話を聞いてあげますよ!小料理屋あゆに」
「行く行く!!何処だそこ?」
「わかった。ココハちゃんがよければオレが案内するよ!そうだ、あゆママきっと主任のこと知ってるぞ。歓迎会の動画でいっぱい写ってたから。」
「そうなんですよ。実はママが会いたがっていて、もう、既に主任のファンなんです。」
「キャいん。金曜日楽しみ。」
「主任のお弁当のご飯の量、枕作れますね!おかずは、卵焼きと、ウインナーと、ブロッコリー。昨日の晩ご飯は、肉じゃがだったんですね、で、これは何ですか?あれ?スパムですか?」
「勝手に食うなよ!」
「じゃあ、私のメインディッシュのししゃもどうぞ!」
「良いのか?お前そんな小ちゃい弁当箱で、メインが無くなったら何食うんだ?痩せるぞ、まだやっと20代になったばかりで育ち盛りだろ?」
「課長と桜井さんのお弁当は、あれ?2人とも餃子!しかも手作り餃子、作者は同じ方ですね?」
「何だとぉ~!」
「おい、ココハちゃん誤解しないでくれ。この餃子は昨夜のエリの家の晩ご飯をオレがもらった。ようだ、入ってるから、きっとそうだ。やましくない、もらっただけだ」
エリが大爆笑
「カズ、意味わかんない。三木谷さん、山下主任意味わかる?私もわかんない。なぜ私とお弁当の中身が同じなの?」
「エリ、ずるいぞ理由はわかってるくせに。それはだな、、俺たちの家は隣同士で、母親が幼馴染でよくこうやっておかずの交換をしているからです。」
「よくできました。」
「なるほど」
全員食べ終わって
「ご馳走様でしたまた明日~」
「明日も来るのかよ!」
家に帰り着くと、カズの様子を伺う。
部屋のカーテンが全部外されているので洗っているのかな?部屋からは掃除機の音が聞こえて来る。
たまにチラチラ人影が見えるので頑張っているようで、なんか笑える。
絨毯なのかな?畳かな、フローリングかな?
さて今夜の夕食当番は私なので、お好み焼きを作ろう。
明日はあの窓の向こう側が見れるのかぁ、楽しみだな。
夕食の準備をしていると、神からのメールが届いた。
内容はこうだ
「あした友達の部屋へ遊びに行って 何かを感じるべし」
カズの部屋に遊びに行く約束をしたのは昨夜お散歩の後。
それを知っているのはカズだけ?イヤ。
カズの両親も知っているのかも。
いずれ、真実がわかるでしょう、、。
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