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三日月

ghame

(29)紺色のワンピース

  5月30日土曜日

 朝1時間ほどピアノを練習してから、朝食を食べて着替えるとエリにメールで8:40の約束をした。
 それから部屋へ戻り2人が選んだ雑誌の写真とオレの気に入った女性用の髪型を写メしてエリにも共有しておいた。

 選んだ髪型は、背中まであるロングで前髪は作らず、おでこが出ていて、とにかくフワッと軽い感じで、オフィスで綺麗なお姉さんと見出しのついたものだ。
 時間になるとエリは外に待っていてくれて、今日はシフォンの柔らかい素材で紺色のワンピースを着てくれいた。
 綺麗に真っ直ぐ伸びた黒髪は、いつものように束ねないでおろしていた。

「エリおはよう、ワンピース似合ってるよ!髪も綺麗に伸ばしてるのに切っても良いの?」
 髪は女の命とか聞いたこともあるし、お手入れの行き届いたその清潔感に果たして、神に弄ばれるようにハサミをハサミが入れても良いのだろうか?

 しかし、ハサミの手にかかれば化粧気の無いエリの実力が発揮されるはずだ。 
 正直のところ楽しみでしょうがない。

 転校生として初めて教壇に立ったエリは、今と同じツヤツヤな長い黒髪を垂らし前髪は真っ直ぐた揃えてカットしてあった。
 なんと言っても目を引いたのが大人びた光を放つ瞳と真っ白な肌。
 東京の人とは違う国の民族に見えたものだ。
転校当初は、そんな近寄りがたい雰囲気が魅力で皆んなチヤホヤしていたんだが、いつまで経っても全く打ち解けず話しかけてもあまり返事をしないエリはそのうちなんとなく影の信者を持つクールビューティーと、その手のマニアのマドンナ的存在になっていた。
 だが、そんなとこも気に入らない女生徒からの評判は最悪で嫌がらせもたくさん受けて来ているはずだ。

 一方オレは、とにかく豆粒みたいにチビで、女の子みたいな顔をしていて更にピアノなんて弾いていたのでクラスでは格好のいじられ役となっていて、それをあの冷ややかな目で見られるのが心底屈辱的でしかたなかった。

 エリはオレがやられているところをよく見ていた。庇うでもなく、他の人と同じように笑うでもなく、感情のない冷たい瞳でただ観察しているように見えた。
 その視線が何より嫌で、何をされても冷静さを欠くことがなく自分を保てた、周りに合わせて自分らしさがなくなることの方が、よっぽど馬鹿げてるとそう思わせるような視線だった。 

「どうせまた伸びるから平気」
それだけ言うと、さっさと行ってしまった。
 
 美容室に到着すると早速ハサミが朝からハイテンションで絡んできた。
「まあ!カズくん相変わらず男前じゃない?彼女さん?今日はどんな髪形にしたいかリクエストはありますか?」
 ハサミの様子に複雑な顔を見せたエリはスマホを取り出し、さっきオレが送った写真を見せて
「こんな感じにできますか?」と伝える
「はい、もちろん大丈夫よもっと美人にしてあげる。 カラーと、顔も触っても大丈夫?眉を整えるのと少しメイクになるわ。1時頃仕上がるので、カズくんは帰ってよし」
「カズ、ありがと。じゃ、後で1時に」
「おお!じゃあ、終わったらランチして恵比寿でいい?」
「わかった。連絡する」
「お楽しみにー」
 ハサミは本当に楽しそうだ。

 自宅に帰ると早速気の利いた晩ご飯とジュエリーショップをネットで検索する。
 お誕生日のプレゼントはネックレスにすると決めていたからだ。
 しばらく部屋のPCの前に座って検索していると スマホが鳴ったのでエリからだと思い開いてみると珍しく昼から神のメールで、その内容は

<明日デートをしろ。>とあった。

 それで早速動物園も一緒に検索を始めた。
 ここ足立区にも生物園というものがあるが、白熊は居ない。
 近場では上野動物園、横浜ズーラシア、八景島シーパラダイスにいるようだ。
 検索して白熊の画像を見ている内にオレも白熊が見たくなって来て、気分が乗り明日は上野動物園に行くことに決めると、ネットでチケットを予約できるか確認してからエリにメールを入れる。

「明日、上野動物園に白熊を見に行かないか?」
「行きたい!」
返事はすぐ来たが短い。
 上野動物園は家から近いので¥2400の年間パスポートを2枚購入することにした。
 なぜかと言うと、1年間に土日は100回以上もあってエリの好きな動物園には何度でも行けば良いと思ったのだ、お誕生日のサプライズとして喜んでくれると良いんだけど。

 次にアクセサリーは、恵比寿のアトレに行ってみることにして、晩ご飯はその近くにある美味しいお豆腐屋さんに決めた。
 何故なら写真に映る鍋に入ったチーズの様にとろけた豆腐の画像がすごく美味しそうだったからこれはエリを満足させられるはずだ。と、思ったからで、早速19:00で予約をいれた。



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