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三日月

ghame

(17)ギューん

 
 家に帰り着くと、あまり時間が無かったが食べてから出ようと決めていたので玄関からキッチンへ直行した
「母さんご飯はいらない。おかずだけ食べる」
と告げ、ネクタイも閉めたまま椅子に座ってテーブルの上に乗ったおでんの大皿から、厚揚げ、こんにゃく、卵、大根、はんぺん、竹輪ふ、竹の子の順番でお皿に乗せ、冷めた順に口に押し込んだ。

 皿が開くと大根と2つ目の厚揚げを皿に乗せ

「父さん、大根冷ましてる間に着替えて来る」
と早口で言い、すごい勢いで2階に駆け上がった。

 オレの慌ただしい様子をビール片手にオヤジは呆気に取られて、あわあわとただ見ていた。

 5分前にはなんとか準備が終わり、外に出てエリにメールを入れると柔軟体操を始め、これがまた痛気持ち良くて爽快なんだよな。
 と、一日中椅子に座りっぱなしで特に固まっている首と腰を念入りに伸ばしてアキレス腱もついでに伸ばしているところに高校ジャージを着たエリが現れた。
 今日も胸元はキツそうだ。

 いつものコースに向かって歩き出すと
「今日は月曜日だから、明日から今週のダービーが始まるんだけどカズはどうするの?」

 早速ヘイデイの話が始まった。
 この話の時だけは、ちょっと考えてから話す普段のエリの癖がニュートラルになり脳と発言が直結しているようだ。
 そして、きっとその明日からのダービを一緒に参加して欲しいのだろう。

「エリはどうするの?オレはダービ今は休憩中だけどいつでも参加できるよ。」
「カズ、ダービーのチーム一緒に組まない?」
「面白そうだね。明日から途中の公園で一緒にダービー始めよっか?」

 その言葉を聞いたエリは、初めて見る表情をオレに見せてくれた。
 それは嬉しいと、興奮と、期待と、楽しいがセットになったとっても良い笑顔だ。

 他人にこんな表情をさせることは自分もこそばゆい喜びがあるんだなと知り、胸はギューんとポカポカしたのだが、この感情は子供の頃に確かに経験したことがあると考えてみるのだが、いつの事か思い出せないでいた。

 それともう一つ気がついたのは、エリの笑顔って見たことあったっけ?

 オレに初お披露目じゃないかな?
こんな良い表情ができるなら、もっと皆んなに見せて友達作れば良いのにと、お節介にも人前でこの顔をさせたい。と薄らその計画を考え始めるのだった。

 そのあとの時間は、中身に別人が入ってるんじゃないかと思うほどニュートラルエリが笑顔の安売り状態でゲームについて話し続けるのだ。

 ドラクエから始まって、FFなど30過ぎて目覚めたらしく、会話に出て来るゲームソフトの名前は全てオレもクリアしたものばかりで、会話は面白かったしエリの初めて見せる表情が何より嬉しかったから、いつもより一緒にいる時間が短く感じた。

 無言でのお散歩も心安らぐ時間だったが、楽しそうに話す他人と並んで歩くのは自分も楽しくなる。
 明日からのこの時間は歩く+ゲームと楽しみが増えた。

 妄想にふけっていると、スマホからメールの呼び出し音が鳴った。
「神だ!」
昨日と同様にエリの前でメールを開いて確認してみる

「会社帰りに誰かを誘って飲みに行け」
 その指令を読んだオレの脳裏には一人の男の顔が浮かんだ

「いける、あいつだ!」
 明日のミッションは 楽勝な気がしていた。



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