三日月

ghame

(22)別れ際の儀式

「じゃあ、オレらは大事な用があるから主任は用事が済んだらお引き取り下さい!主任がいると話が脱線しすぎる。」
「わかった。課長の笑顔は本日終了だぞ!明日までもう見んなよ!ではでは課長、隣ん家のストーカーに気をつけて!また明日」

 山下が帰って静かになると、オレはまた雑誌を広げてパラパラとめくリ始める。
 実は気になっている服が2つあって、一つは白の綿でレースのシャツ、もう一つはワンピースなんけど、ワンピースに関してはどれも良くて、自分の好みを知った事は新発見だっだ。

 好みは決まったけど、それを伝えるのは、少し照れるので、まずはエリの好みを聞いて見ることにした。
「何か気になるのあった?」
「カズは?」
 質問返しをされてしまったので、潔くお目当てのページを開いて指を差す。

「まずは、このブラウスで、理由はなんとなく好みだ。色は、白が良くて肩がフリルになってるとこも良くて 彼女に着てみて欲しいと思った。それとワンピースはどれも良いんだけど、このフワッとしたのが特に良い」

「可愛い。こんなの着たことも着る予定も無かったけど、彼女だから今後意識して見るわ。カズの好みってこんな可愛い感じなんだね、大人っぽい例の美容師さんが着そうなタイトな感じを選ぶと思ってたのに柔らかい雰囲気か、、。」

「エリは?」
「私は 色が濃いめのスッキリしたパンツと、Vネックが好み見たいよ。丸襟だと見てて苦しく感じちゃってもっと首はリラックスして欲しいの。こんな感じが好みよ。」
「コレならオレでも余裕で着れる、週末に恵比寿に見に行って見るよ。」
「楽しみにしてるね。」

「それと、10個の質問は内容あれで良い?」
「いいと思う。LINEで送って!」

「よし、じゃあ腹減ったし帰るか?」
 恒例のお散歩は、昨夜いつもの半分しか歩かなかったので、気合入れて早歩きをしようと2人の意見が一致して  競歩をしてみると、大量に汗を流して気持ちの良い達成感を味合うことが出来た。
 サボった翌日に向いてるな、などと思い1人でその提案を採用した。
 今日は話をする余裕は無かったんだが、適度な運動によって思考が研ぎ澄まされていて いろんなことが頭に浮かび消えていく、それは解きかけで放置されたままの宿題が机の上にらばっていく様でモヤモヤするばかりだった。

 さらに新しい宿題が出される音がしてスマホの画面を見ると新しい指令はこう書いてあった
「明日お誕生日の人をご馳走する。」
コレはエリのことだ。と思ったので早速食事を誘うことにした
「エリ、明日の誕生日食事をご馳走したいんだけど予定もう入っちゃった?」
「予定は特に無いわ。恋人同士なんだから一緒に過ごさなきゃいけないわね?会社から直で向かう?一旦帰る?」
「明日は平日だから会社から直で簡単に済ませて、週末にゆっくり美味しいものを食べにいくのは、恋人らしくてよく無い?」
「わかったわ、週末も開けておく。」

「明日と週末、食べたいものがあれば考えておいて!特にエリの希望がなければ、小料理屋を考えてる。じゃ!帰ってから宿題やらなきゃだな。」

「そうだ!恋人同士の別れ際の儀式を ずっと考えていたんだけど、コレなんてどう?」

 オレは 握り拳のパンチをエリに向けてゆっくり放つと、エリはその拳に向かって自分もパンチを返してチョンっと当てた。

 さよならの儀式にぴったりで2人とも気に入り、採用された。

 シャワーを浴びたオレは宿題を終え、エリに送信してからカーテンをめくり、お隣の部屋の電気がついているか見ている最中、自分のストーカー行為に気が付き既に前科もあることだし、山下の発言を認めることにした。

 エリの部屋は電気がついているので、シャワーの後、お肌のお手入れをしてからドライヤーで髪を乾かした後宿題に取り掛かるのだろう。
 こんなことを考えているオレは、名付けて妄想ストーカーと言ったところだろう。
 さて寝るか。


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