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三日月

ghame

(19)バーチャル彼女

 
 5分前になったので外に出て柔軟体操を始めたんだが、大ジョッキを2杯も飲んだのでお腹がジャブジャブしていて、頭を振ると中のものが出て来そうだったので、アキレス腱を伸ばす事にして昨日より2倍伸びた頃にエリが現れた

 最近はニュートラルエリな場合が多く
いきなり
「先に始める?歩いた後?」
と聞いてきて戸惑ったが、ダービーのことに決まっているので少し休みたかったオレは
「先にダービーしようか?」
 喜ばせてやって、エリの貴重な笑顔を拝ませてもらった。

 もう今となっては、数日前までは長年苦手だったエリが双子の妹がいたらこんな感じなのかな?
 とか想像するほど、家族のような存在になっていて
 一番一緒に居て気楽な友達になっているが、待てよ? 
 エリはどう思ってる? 
オレといて昨日のヘイデイまでは無表情で特に楽しそうになんて見えたことは一度も無いぞ!

 仕方ない、もう一押しだ。このダービーを期にニュートラルエリに、オレのことを腹違いのツインズだと思わせて親友になってやる!

 新な目標に燃える毎度、大袈裟なオレだった。

 さて、しばらく歩いて一番近くの公園のベンチで スマホを片手にお昼休みのうちに仕込んでおいたダービーを開始する事になったんだが、エリの機嫌がスゴぶる良くて腰掛ける直前にこの先も拝めないんでは無いかと思うほどとびきりの笑顔をオレにくれた。
 無表情だったエリのこのギャップは反則だ。

 今のオレはエリに少し勝ってる。
と、優位に立っていたつもりが、なるほど世の一般の方達がよく口にするギャップとはこれか! と、感心させられてエリからは毎日学ぶ事があり過ぎて、ここ数日の自分の成長が隣の家にずっと埋まっていた事に気がつかなかった無駄な時間を返して欲しかった。

 しかし気が付いたからには日々成長して後半残った人生をカスカスなものにしてたまるか! 
 まずはダービーで1位取ってエリの笑顔でもいただくか!
 と、また大袈裟に燃えてしまった。

 一方、隣に腰掛けたエリは、最近のカズの変わり様に驚いて昔を思い返していた。

 元々顔立ちも成績も良かったカズは私が越して来た中3の頃からよく不良に絡まれていて気になっていたのだが、転校生の自分が絡むと益々彼が立場を悪くするのでシカトする事に決めていた。

 父の再婚のため北海道から変な時期に転向することになり、それまで輝いていた家庭も学校も友達も全ての世界が燃えカスのようにゴミ以下にしか見え無くなっていた時期だった。
 そんな時、新しい土地で見つけた背が低くて女の子のような顔をした少年が、狼の群の中に子羊が1匹静かに飲み込まれていく様に見えてハラハラしていた。

 男も女も身を守るためにやがて狼に成り下がることを選択する時代だった中、その子羊はピンと背筋を伸ばして羊であることを誇りにしているように見え、そんな少年を道標として狼にだけには染まりたく無い。と、私は誰とも口を聞かなかった。

 少年はやがて高校生になり、体が成長していくと共にその誇りが失われて行き、そんな彼を見るのがどうしようもなく悔しくて更に3年前の彼は以前私に道を示してくれた少年の面影など全く無く、燃えカスの方に見えて絶望したのだった。

 しかし最近のカズはどうだ? 
 私が失ったものを、諦めたものを目覚めさせてくれるようなエネルギーを放っていて、以前同様目が離せないのだ。

 元々芯の強い彼の、臆さず心のままに振る舞うそのさまが、正しく私の向かうべき理想の姿なんじゃ無いのか?  
 そしてなんと言っても、彼の外見が見違えるほど変貌したことにショックを受けている。

 誰もが認めるルックスを手に入れた最初の数日は、外見を持て余していたようで鼻についたが、今はそれを忘れたかのように自然で気楽な振る舞いが心地良く、無言の時間さえも苦にならない。

 友達ってこんな感じなのかな?


 しばらく2人がスマホの画面に夢中になっているとオレのスマホが鳴って、今日も神からの指令が届く

<練習用の彼女を作り、交際してみる>

 彼女??

いつかは欲しい気もするな、、
 エリならいつでも会えるし、お願いもしやすいから練習するにはぴったりだ。
 お隣で何やら物思いにふけっているエリに早速頼んでみる。

「エリ、一つお願いがあるんですが。練習に付き合ってくれませんか?この先オレに彼女がもしかしたら出来るかもしれないことを想定しての バーチャルなんですが。その彼女役を」

「どういう意味かな?」
「恋人ごっこ、って意味かな?」

少し考えて答えてから、返事をしてくれた
「別に構わないけど、何すればいいの?」
「エリもか?困ったことにオレも全く素人でわからないんだよ。だからやっぱり練習が必要なんだよ。オレよりむしろエリの方が練習必要なんじゃね?笑うとかさ。甘えるとか、すねるとか」
「そうかもね、そんな気がして来た。」

「2人とも分からないからプランをさ、出し合って検討してみよう。オレも考えるから、エリも考えて明日意見交換な!それと寝る前にヘイデイ集合な!」



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