三日月
(16)ハサミカップ
仕事が終わると急いで出発し、エリとは20:00の約束をしてハサミの美容室の前で別れた。
closeの看板の出た店内を覗くとハサミが居たので、窓を軽くノックしてから中に入れてもらうと、店内には肉まんの美味しそうな匂いが充満していた。
「お腹空いてない?一緒にいかが?巣鴨のおいしい肉まんよ」
と、お皿にデンっと6個ほど載せてテーブルに持って来てくれる。
それはあまりにも美味しそうだったので「お茶を入れて来る」と、ハサミが背を向けた途端に、誘惑に負け頬張り、あっと言う間に一個平げてしまった。
いきなりスポンジのような食べ物に口の中の水分を吸われて喉が詰まってしまって、急遽お茶が必要になる。
手伝いに行く事にして店の奥に向かうと彼女はスマホを覗き込み夢中に何かしている。
背後に気配を感じたハサミは
「カズくんお茶入ったわよ!」
と、少し慌てた様子で振り返った。
スマホからは聴き慣れた音楽が聞こえる
「農場経営ゲーム、ヘイデイだ!ハサミさんレベルいくつですか?」
本日2度目の同士を見つけ嬉しくなり、思わず聞いてしまった。
「これね!お客さんに勧められて始めたんだけど。レベルってこれかしら?29よ。」
すかさずオレはスマホをお尻のポケットから取り出して レベル176の画面を、ドヤ顔でハサミの顔の前に突きつける。
「あらすごいじゃない!フレンズ登録して欲しいわ。」
と、頼まれたので
「その前にお茶を一口良いですか?」
お茶をもらい、一口すすってから二人は登録し合い、それからゲームをしながら質問をたくさんされて、お仕事を開始する頃には店に来てから1時間も経っていて、ハサミのレベルも一つ上がりレベル30になっていた。
肉饅も既に食べ終えていた二人は 早速仕事に取り掛かるのだが、さっきゲームに夢中になりつつ肉まんを食べるハサミを思い返すと正しくオスだった。
普段は声さえ出さなければ見た目は綺麗なお姉さんだけに大口を開けオレよりも早く肉まんを瞬殺する素のハサミは迫力があって、衝撃的ではあったが、そっちの方が親近感を持てると思った。
仕事の方はまずはプログラムを作成する必要があったので、それを説明して自宅で用意して来るので入力開始は後日。と言う約束だけして今日は帰る事にした。
なぜなら、今帰れたらお散歩の前に ご飯が食べられるからだ。
店を出かかってレジの前を通る時、昼間見かけた蓋つきのカップが並んでいる事に気がついた
「このカップはおいくらですか?」と尋ねると
「お好きなカラーをおひとつどうぞ」と、進めてくれた。
白地にシルバー、ゴールド、ブラックの3色展開で柄は大きくオリジナルでハサミの絵があった。
「ハサミさん素敵なデザインですね。シルバーをいただきます。」
その色にした理由は、これから自分の色を見つけていく身として未来を輝かせてくれているように感じたからだ。
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