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三日月

ghame

(14)みたらしだんご

  
   5月25日月曜日

 翌朝オフクロの用意した弁当と団子を持ってエリと出勤した。
 大荷物を持っているオレを気遣ってくれたエリは、お弁当を持ってくれて
 「お昼屋上まで持ってってあげる」
と、とてもありがたい手助けをしてくれたのでエリって意外と良いヤツだ。と言う事に今更ながら気が付いた。
「お昼に屋上行くよ、エリありがとう」

 毎朝行われる朝礼の後のラジオ体操が終わると、まずはオレより少し年上かな?
 と、いった感じのヒョロっとした神経質そうな経理課の女性を呼び止め、お団子を出して
「これからお世話になります。みたらし団子なんですが、経理課の皆さんでお茶のお供にどうぞ!」
 と言って手渡すと、とっても喜んで受け取ってくれて、皆さんオレより年上だと思われる経理課の女性に囲まれて、お礼の言葉を言われた。
 皆んな感じの良い人ばかりで、エリに意地悪をする感じもしない。

 それから受付の三木谷さんには秘書課の分を手渡し、営業事務は休憩室のおやつ置き場に置いて早速仕事に取りかかる事にした。

 週末にエリが手伝ってくれて先週までの担当している仕事の処理は終わらせていたので、後はそれにハンコをもらうだけだ。
 課長の席に向かうと、山下主任が書類の山に埋れる中でクレームらしき電話の応対に追われている様子だった。

 その電話の内容は、明日のトラックの台数が予定と違って大幅に足りていないと言う感じの揉め事のようだ。
 そこで、週末に処理した伝票で自分が担当している現場に予定より早く土の運搬が終わり、空いてるトラックがある事を思い出した。

 急いでメモに
「トラック何台ですか?明日使えるのが数台あります」
 と書いて電話中の主任が見えるところへ出すと、メモを読んだ彼の視線は、メモからオレの顔へパンっと弾かれたように移動され睨むような目で
「本当か?」
 受話器を手で押さえるのも忘れて訪ねて来た。
 相当切羽詰まっていたようだ。

 電話の相手にはすぐ折り返す事を約束し、一旦電話を切ってから、二人でトラックのサイズ、時間、場所など打ち合わせすると何故か不思議な事にぴったり合った。

 これには主任も感激して
「今度酒でもおごるよ」
 と言う言葉を残し、お詫びを兼ねて現場まで様子を見に行く。
 と、言い残しホワイトボードに直帰と書いて何故か椅子に掛かっている作業場ブルゾンを持って慌てて出ていった。
 
 もしかして、労働でお詫びする気なのかな?あのデカイ身体は確かに役に立ちそうだけど、マイ作業服を持ってるって、珍しい内勤さんだな??

 課長からは、確認印の入った書類が戻って来ていてひとまず気持ちも一段落したところに女子社員がお団子とお茶を入れて持って来てくれた。

「桜井さんお団子美味しいですね。奥様の手作りですか?」  
 と訪ねて来たので、独身だと伝えるとフワッと近くの席の人たちの視線がオレに集中した。
 おいおい皆んな聞いてたんかい?と心の中で呟きながら
「母の手作りで、私の好物なんです。美味しいと言っていただけて母も喜びます。」
 と、爽やかに対応する。

 その言葉を聞いた課長が
「お母様の手作りだったんですね。とてもおいしいです。よろしくお伝えください。」
 と言うその言葉を皮切りに、他の皆んなからのお礼の言葉も聞こえて来た。

 新人のオレに対しては、まだ様子を伺っている空気があり、これがオレの第一の壁だと言う事をよく理解していた。
 新卒でなく、こんなおっさんが後輩になってしまったら対応に戸惑うのも無理は無い。

 しかしオレは、三木谷社長の好意と偶然掴んだ再就職の幸運、そしてエリのサポートを無駄にする事無くしがみつく覚悟だ!!
 ニートにはもう戻りたくなんて無い、団子で繋げるならいくらでも持って来てやる!
 と、頭の中で熱くなりつつも団子とお茶をすすりながら、山下って主任はあの山住みの書類置いて直帰しちゃってミスが多そうなタイプだなと、心配になるのだった。



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