三日月
(13)野良猫
            
5月24日土曜日
今日は、朝からオヤジが恵比寿のオフィスに向かう支度をしていたので、ピアノを弾いていたオレは手を止めて一緒に家を出る支度を始めた。
カタログやサンプル品と荷物が多いから今日は会社の車だと聞いて、乗せてもらって楽したかったのと、何と言っても交通費が浮くからだ。
途中、新宿のメンズマルイとサガゼンにカタログを置いて、恵比寿の商店街に着く頃には11時頃になっていた。
闇雲に商店街を歩き回ってもと思い、しばらくオヤジの営業に同行する事にした。
最初に入ったショップは、カジュアルで洒落た革製品も扱うオレ好みの品揃えだった。
話を聞くとマツゴローと呼ばれた店主はオレと同じ40歳だった為、好みのツボが似ているのだろう
何故かアロハシャツ的な物もあるのでアメリカの夏と、いった感じか?
  そのショップで黒とネイビーそして茶のパンツを3本。ベルトと皮のサンダルTシャツ3枚。シャツ1枚。購入して合計約40000円のところオヤジの顔で1割まけてくれた。
   もちろん、金の無いオレは「給料もらったら返す」と、オヤジに借りた。
その間オヤジはオフィスに行ってたんだが昼時になったのでマツゴローに誘われてラーメン屋でラーメン炒飯セットを食べると、彼は良くしゃべり、デートにオススメの店や、今時の流行など、いろいろ話してくれて退屈しなかった。
別れ際には
「彼女を連れて来たら安くしてやる。今度合コンしような~」と、明るく見送ってくれたが彼は妻子持ちだ。
後、欲しかったのは、スニーカーとスポーツウェアーだ。
彼に進められた店で買い物を済ましオヤジに電話を入れると地図を送って来てくれたのでスタバで買ったアメリカン片手にその場所を目指す。
時刻は16:30
日中の暑さも和らぎセミの鳴き声は止まぬ中、道端の雑草や路地から飛び出す野良猫に目をやりながら、ちょっと汗をかき、そんな何気ない充実感に浸り、ひたすら歩く。
オフィスに着くと何故か伝票やリストの入力を手伝う事になり、それから2時間ひたすらキーをたたき続ける事となった。
お礼を言うオヤジに「借りは返せよ!」と言っては見たが、オヤジの役に立てた事は正直嬉しくて、お礼なんて本当はどうでも良かった。
それから家に帰り着くと既に19:00過ぎていて、急いで晩ご飯の親子丼をかき込み、それから今日買ったグレーのスウェットパンツとTシャツに着替えエリにメールを入れてみる事にした。
<いつでも出動可能です。今日も歩くなら連絡ください>
返信は、すぐに来た
<10分後に外で>
<りょうかい>
5分前になり、1階に降りて靴下と靴を履いたら、外に出て、エリを待っている間に少し体を伸ばしておこうと準備運動を始めた。
すると、伸ばすたびに痛気持ちよく、軽く柔軟体操にトリップしてしまいエリが家から出て来たときは、約束していたことも忘れて「どっかいくの?」と聞きかけて慌てた。
昨日と同じルートを、今日も無言でスタートして歩きながらいろんな事に思いを巡らせてみた。
エリの会社での様子も気になっていたんだけど、どう切り出したらいいかも思い浮かばず、ひたすら無言で歩き続けることしか出来ずにいた。
昼間、恵比寿で歩いたときもそうだったが、ただ歩くだけでも家に引きこもっているよりずっと気分が良い。
目に映る景色も、肌に感じる風も街の音もオレの神経を鎮め心地よい場所へ運んでくれる。
会話を得意としないオレの横には、会話を必要としない人間がそっと並んで歩いている。
人生を歩く夫婦ってこんな感じなのかな?と、想像して見たりもした。
今日も特に会話の無いまま歩き続ける
途中、神からのメールが届き
片手でそれを開いて見る
<明日会社にみたらし団子を持って行って配るべし>
メッセージを読むと、この意味不明な内容に驚き、思わず声を出してしまう
「なんだよそれ?」
団子何個持っていけば良いんだよ?
ちょうど良い、エリに聞こう。
「エリ明日会社に差し入れ持っていく事になった。何人分持って行けば足りるか?」
「えっと、経理と、事務、秘書の内勤なら25個あれば足りるわよ。」
「わかった。ありがとう」
そう言うと、自宅に電話を入れる。
「あ!もしもし母さん?急で悪いんだけど、明日みたらし団子を25本会社に差し入れたいんだ。用意できるかな?ありがと。弁当もよろしく!じゃ」
オフクロが喜ぶと思った!
仕事を始めてから舞い上がってる感じで、弁当作りだけでも張り切ってるもんなぁ〜
頼める用事が出来て良かった。
「エリ何時ごろ持って行けば良いかな?」
「10時の休憩時間か3時に食べると思うから朝はどうかな?」
「ありがとう、朝持ってくよ。」
「エリにはいつも助けてもらってばかりで、的確なアドバイスをいつもありがとう。」
今のは褒めてるよな?なかなかムズいな。
ノルマ1個クリアもういっちょ褒めなくてわ、、、。
家の前に着くと
「明日のお昼、弁当持って行くからよろしくな!エリの教え方わかりやすくて助かる。じゃ、明日も9:00に!おやすみ」
と言って2つ目の褒める もクリアしてから別れた。
5月24日土曜日
今日は、朝からオヤジが恵比寿のオフィスに向かう支度をしていたので、ピアノを弾いていたオレは手を止めて一緒に家を出る支度を始めた。
カタログやサンプル品と荷物が多いから今日は会社の車だと聞いて、乗せてもらって楽したかったのと、何と言っても交通費が浮くからだ。
途中、新宿のメンズマルイとサガゼンにカタログを置いて、恵比寿の商店街に着く頃には11時頃になっていた。
闇雲に商店街を歩き回ってもと思い、しばらくオヤジの営業に同行する事にした。
最初に入ったショップは、カジュアルで洒落た革製品も扱うオレ好みの品揃えだった。
話を聞くとマツゴローと呼ばれた店主はオレと同じ40歳だった為、好みのツボが似ているのだろう
何故かアロハシャツ的な物もあるのでアメリカの夏と、いった感じか?
  そのショップで黒とネイビーそして茶のパンツを3本。ベルトと皮のサンダルTシャツ3枚。シャツ1枚。購入して合計約40000円のところオヤジの顔で1割まけてくれた。
   もちろん、金の無いオレは「給料もらったら返す」と、オヤジに借りた。
その間オヤジはオフィスに行ってたんだが昼時になったのでマツゴローに誘われてラーメン屋でラーメン炒飯セットを食べると、彼は良くしゃべり、デートにオススメの店や、今時の流行など、いろいろ話してくれて退屈しなかった。
別れ際には
「彼女を連れて来たら安くしてやる。今度合コンしような~」と、明るく見送ってくれたが彼は妻子持ちだ。
後、欲しかったのは、スニーカーとスポーツウェアーだ。
彼に進められた店で買い物を済ましオヤジに電話を入れると地図を送って来てくれたのでスタバで買ったアメリカン片手にその場所を目指す。
時刻は16:30
日中の暑さも和らぎセミの鳴き声は止まぬ中、道端の雑草や路地から飛び出す野良猫に目をやりながら、ちょっと汗をかき、そんな何気ない充実感に浸り、ひたすら歩く。
オフィスに着くと何故か伝票やリストの入力を手伝う事になり、それから2時間ひたすらキーをたたき続ける事となった。
お礼を言うオヤジに「借りは返せよ!」と言っては見たが、オヤジの役に立てた事は正直嬉しくて、お礼なんて本当はどうでも良かった。
それから家に帰り着くと既に19:00過ぎていて、急いで晩ご飯の親子丼をかき込み、それから今日買ったグレーのスウェットパンツとTシャツに着替えエリにメールを入れてみる事にした。
<いつでも出動可能です。今日も歩くなら連絡ください>
返信は、すぐに来た
<10分後に外で>
<りょうかい>
5分前になり、1階に降りて靴下と靴を履いたら、外に出て、エリを待っている間に少し体を伸ばしておこうと準備運動を始めた。
すると、伸ばすたびに痛気持ちよく、軽く柔軟体操にトリップしてしまいエリが家から出て来たときは、約束していたことも忘れて「どっかいくの?」と聞きかけて慌てた。
昨日と同じルートを、今日も無言でスタートして歩きながらいろんな事に思いを巡らせてみた。
エリの会社での様子も気になっていたんだけど、どう切り出したらいいかも思い浮かばず、ひたすら無言で歩き続けることしか出来ずにいた。
昼間、恵比寿で歩いたときもそうだったが、ただ歩くだけでも家に引きこもっているよりずっと気分が良い。
目に映る景色も、肌に感じる風も街の音もオレの神経を鎮め心地よい場所へ運んでくれる。
会話を得意としないオレの横には、会話を必要としない人間がそっと並んで歩いている。
人生を歩く夫婦ってこんな感じなのかな?と、想像して見たりもした。
今日も特に会話の無いまま歩き続ける
途中、神からのメールが届き
片手でそれを開いて見る
<明日会社にみたらし団子を持って行って配るべし>
メッセージを読むと、この意味不明な内容に驚き、思わず声を出してしまう
「なんだよそれ?」
団子何個持っていけば良いんだよ?
ちょうど良い、エリに聞こう。
「エリ明日会社に差し入れ持っていく事になった。何人分持って行けば足りるか?」
「えっと、経理と、事務、秘書の内勤なら25個あれば足りるわよ。」
「わかった。ありがとう」
そう言うと、自宅に電話を入れる。
「あ!もしもし母さん?急で悪いんだけど、明日みたらし団子を25本会社に差し入れたいんだ。用意できるかな?ありがと。弁当もよろしく!じゃ」
オフクロが喜ぶと思った!
仕事を始めてから舞い上がってる感じで、弁当作りだけでも張り切ってるもんなぁ〜
頼める用事が出来て良かった。
「エリ何時ごろ持って行けば良いかな?」
「10時の休憩時間か3時に食べると思うから朝はどうかな?」
「ありがとう、朝持ってくよ。」
「エリにはいつも助けてもらってばかりで、的確なアドバイスをいつもありがとう。」
今のは褒めてるよな?なかなかムズいな。
ノルマ1個クリアもういっちょ褒めなくてわ、、、。
家の前に着くと
「明日のお昼、弁当持って行くからよろしくな!エリの教え方わかりやすくて助かる。じゃ、明日も9:00に!おやすみ」
と言って2つ目の褒める もクリアしてから別れた。
コメント