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三日月

ghame

⑸ コロッケ

 
 ここ足立区は、あまり治安が良いとは言えない土地で、夜になると暴走族も出るし学生時代は、不良ならモテた。
 それでますますガラの悪い奴らが増え、あの時代は悪いことを武勇伝にすることがブームになっていて、オレの周りでもそれを競っているような状況だった。

 オレは不良は嫌いだったし、チャラチャラしたファッションの女の子も薄っぺらくて、痛々しく見えて苦手だった。

 そんな連中とツルムのが嫌で、1人でオタクと呼ばれても勉強ばかりに打ち込んできた。

 こんなだから、きっとダメなんだろうな、、
エリは、そんな点では同類だと思ってた。

 近所を1周して自転車を返すと家に帰り、部屋にこもる。
 それから、ここ数日溜まっていたアニメを見ていると、6時頃 夕飯だと母親に呼ばれたので1階に降りると、オヤジは会社で飲みがあるようで、居なかった

 今夜は肉屋のロッケか、子供の頃から定番のおふくろの手抜き料理だな。
 1個90円と昔から変わらない値段なのが、店主の自慢みたいだけど 年々サイズが小さくなっていってるよね? と、家族でよく話をしたな。
 オレなんて、3個は食べれるから結局270円になる。120円のサイズにしてくれたら、240円で済むトコをメクラマシ作戦だよな?

 商売人は、うまいことやる!と関心して話がまとまる、桜井家では定番で食卓に上がる話題だ。
 どこの家庭にも転がっているこんな歴史も、今思うとほのぼのとしたものだ。

 空想を巡らせていると、いつの間にか7時になっていた。

  やばい!ジョギングの準備しなくては、、

 急いで身支度して、履歴書を忘れないように斜めがけリュックにスマホと一緒にしのばせて。

 急に動かすと、ウプッとなるコロッケ入りのお腹をどうにかしたくて、先ずはお散歩しようと7:30頃家を出るとオフクロは珍しく運動する。と、言うオレを嬉しそうに見送った。

 歩き出すと意識して「チカン注意」の看板と普段は気にしない人通りが少ない場所もチェックしてみた。

 男のオレは、気にも止めなかったが、夜道の女性一人歩きは男性とすれ違うのも、きっと怖いんだろうな。

 エリの青くなった顔を思い出し、女性になった気分で想像してみたりした。

 しばらく歩いていると頭が活性化されて、いろんな事が頭に浮かんで来る。

 昼間うどんを作りながら考えていたことが、より明確になって来て何かのシッポが見えた気もした。
 この先、今まで生きて来た時間と、ちょうど同じだけの人生が続いて行くのだが、自分が、何をしたいのか、何が出来るのか、当面の課題にすることにした。

 更に今、頭をいっぱいにしている神の存在、これは謎でしかない。

 神がオフクロである事が、一番つじつまが合うんだけど、2回目のメールが届いた時、オフクロは掃除機を掛けていた。白だ。

 しかし、単独犯で無くオヤジが協力してたらどうだ? スマホは、岡山にあるのか?
 オヤジの性格から、神なんて計画するだろうか?これもありえない。

 じゃあ、忍さんとグルか?
これなら、ありえる。今のトコ、2人の絡みが大きい。
 でも、美容師のハサミはどうだ?
カットモデルは、偶然だろうな、、


 そう考えている内に20時になったので 走り出す事にした。
 
 エリの会社に向かう道を過ぎ暫く走ると、軽トラの横に立ち困り果てているように見える、知らない男が目に止まった。
 その人は、声をかけて来た。

「こんばんわ、すいません突然なんですが手を貸していたけませんか? 部品を納品したいんですが、1人では持てなくて。。降ろすだけで良いんですが。」

 どうやら、車から台車に部品の入った荷物を載せたいようだ。
 暗い道沿いに、明かりがついてシャッターの上がった倉庫が見えるので、きっとそこへ運びたいのだろう

 話を聞くと普段は、問題無く持てるのだが今夜は腰の調子が悪く、重い荷物が持てなくて途方に暮れていたのだと言う。

 了解すると、喜んでくれてオレも気分が良かった。

 早速手伝いをはじめ今、知り合ったばかりの男を観察してみる。

 作業員を着てはいるが、きちんとした感じの男性で、銀座でパリッとスーツを着て、美しいホステスとウイスキーなど飲んでいるようなタイプに見えて、顔もハンサムだ。
 今は会社のブルゾンを着ていて、三木谷建設と書いてある。

  あれっ?エリの勤めている会社だ。

「あの、三木谷建設の会社の方ですか?」
 男は、手を止めてオレの顔を見てニッコリしてくれる。
「そうですよ。会社の名前をご存知とは、嬉しいな。ソコにある会社ですよ。」

 エリを知ってるかな?
「佐藤海里ってご存知ですか?同級生なんですが、三木谷建設に勤めていると聞きました。」
 話も途中なことだし最後まで運ぶのを手伝うことにして作業を続けた。

 おじさんは、少し考えて
「経理の海里ちゃんか。15年以上働いてくれてるな。仕事熱心で、営業の事務までやってくれる、良い子だよ。」

 やつぱり、エリは真面目だな。。
「彼女は、学生時代からしっかり者で、教師からの信頼も厚い優等生でした。」
 これは、お世辞でなくて本当にそう思っている。

おじさんは、作業を続けながら答える。
「そうか、良い子が来てくれて良かったよ。」

 作業が終わると、2人とも汗をかいていた。
男は、お礼をしてくれた後
「ビールでも呑みに行くか?おじさんの話がいやでなかったら、話し相手になってくれるかな? お礼にごわ馳走するよ。」
 食事に誘ってくれた。

 これがきっと、本日のミッションのスタートだな。
「喜んで、ご一緒させて下さい。」

 まず、2人は荷物が乗っていた軽トラを会社に置き、歩いて商店街に向かった。

 おじさんとの話は、思った以上に弾んで楽しい食事だった。




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