捕まった子犬、バーテンダーに愛される?【完結】
カクテル1/浮気とは何事ですか?
同棲している彼氏がいる。
私よりも6歳年上で、違う部署に努める先輩で、大人で女性の扱いも上手くて優しくて、誠実な人だと思っていたのに。
まだ木曜日、明日になったら絶対行きつけのbar【Red Moon】で三浦さんに愚痴を聞いてもらいながらお酒を飲むって決めて、同棲しているマンションまで戻ってきたのに。
「ただいまー」
玄関を開ければ知らない女性のパンプスが転がってるし、私の声には反応なしなのに奥の寝室からは楽しそうな声が聞こえてくるし。
なんでこんな時に限って冷静なんだろーなんて考えながら寝室の扉を開ければ、茶髪のゆる巻きがセクシーな美女の腕を掴んで後ろから野獣のように楽しむ彼氏がいて。
時間が止まったのは一瞬。
「…え、真穂、今日帰り遅いんじゃ…」
「早く帰れたんだけど、帰りが遅いからってこんなことしていいわけないよね……!?」
「まじでタイミング悪いんだけど……」
はあーとため息をつく琢磨さんが次に何を言うのか待っていたら、クズ確定な言葉を発した。
「萎えるからどっか行って?今いいとこだから、明日話聞くから早く消えてくんない」
この言葉を聞いた瞬間、色々感情がぶわっと出てきて、寝室の扉を乱暴に締めて急いでマンションから飛び出した。
「最悪だ最悪だ最悪だ…!!」
走りながら出てくる涙を止めることなんてできないから、涙で滲む視界で一生懸命前を向いて、RedMoon目指して走った。
私が新入社員で入社したとき、同じ部署だった琢磨さんがフォローしてくれて、自然とご飯に行くようになって、琢磨さんから告白してくれた。
琢磨さんは私の全部の初めてだった。
初めての彼氏で、初めてのキスの相手で、初めての人で、初めて浮気をした彼氏だった。
こんな気持ちで扉を開けたくなかったのに…!
勢いよく扉を開けたbarの雰囲気をぶち壊し、私は絶対浮いていたと思う。
誰が来たのか確認の視線を送った三浦さんは、私の顔を見た瞬間、整った顔を崩してぎょっとした顔をした。
私はそのままずんずんと歩みを進めて、ちょうど空いていた三浦さんの前のカウンター席に座って「強いお酒ください」とお願いした。
私の様子に圧倒されてた三浦さんも自分のペースを取り戻して、「最初の1杯だから、軽めの飲みやすいものにするね」と私のための特製カクテルを用意してくれた。
その間も頭の上をぐるぐる回るのはさっきの光景に、琢磨さんのクズ発言だ。
せっかく三浦さんが作ってくれてる姿も、涙で見えないし泣いてるせいで顔も上げられない。
目の前に置かれたオレンジと黄色の鮮やかなカクテルに見とれた。
三浦さんの作るカクテルはいつもきれいだ。
口に含むとお酒なのに甘くてさっぱりした味が美味しくて、味わいながら飲み干すと、「落ち着いた?」と声をかけられた。
「何があったの?泣いて来店するからびびったんだけど」
「………」
今は三浦さんを独占できるみたい。
身長が高い三浦さんはカウンターの向こうでも私より目線が高くて、私の様子を確認するために目線を合わせる三浦さんから、ふわっと甘い香りがした。
「同棲してる彼氏が、……帰宅したら、同じ会社の女性と、その……遭遇しちゃって……」
「……は?」
「言い訳とかするかなって思ったんだけど、萎えるから早く消えてって言われて、逃げてきちゃった……」
「……お前バカだろ。だから言っただろーが!その男はやめとけって!絶対何かあると思ったのにホイホイ付き合って…!」
「な!な!いつも優しい三浦さんが優しくない…!!」
「俺は忠告したのに、そいつに夢中だったから聞きもしないで付き合って同棲して泣かされて…、腹立つんだよ」
「うう……どうせ自業自得ですよ!!でも、三浦さんに優しくしてほしかったのに!もういい!!チェンジーー!!」
いつもみたいに優しくしてくれると思ったのに、今日はキツイ口調で説教してくる三浦さんに余計に傷をえぐられて、担当をオーナーに変ってもらい、お酒を飲みながら愚痴愚痴こぼした。
「和希だって真穂ちゃんのこと心配して。今日みたいなことがあったから、その男にいらっとしちゃったんだよ」
「だとしても、だとしても!優しくしてくれたっていいじゃんよー!」
「真穂ちゃん酔いが早いから、今日はもう飲むのをやめた方が……」
「だって、だって、萎えるから早く消えろって。初めての彼氏にそんなこと言われるなんて、っ、思ってなかったし…浮気現場見ちゃっただけでも辛いのに…っ」
目を閉じたらすぐに浮かんできちゃう浮気現場。
皆こんな思いを乗り越えて次の恋に行くの?
私には辛すぎるよ、お酒を飲む以外に逃げる方法が分からないよ……
「オーナー、今日は飲みたいの!おかわり!」
私の様子に断りきれないと感じとったオーナーが弱めのカクテルで作ってくれるけど、こんなんじゃ全然足りないの。
早く、早く忘れたい。だって辛すぎるから。
ねえ、なんで浮気したの?
私よりも6歳年上で、違う部署に努める先輩で、大人で女性の扱いも上手くて優しくて、誠実な人だと思っていたのに。
まだ木曜日、明日になったら絶対行きつけのbar【Red Moon】で三浦さんに愚痴を聞いてもらいながらお酒を飲むって決めて、同棲しているマンションまで戻ってきたのに。
「ただいまー」
玄関を開ければ知らない女性のパンプスが転がってるし、私の声には反応なしなのに奥の寝室からは楽しそうな声が聞こえてくるし。
なんでこんな時に限って冷静なんだろーなんて考えながら寝室の扉を開ければ、茶髪のゆる巻きがセクシーな美女の腕を掴んで後ろから野獣のように楽しむ彼氏がいて。
時間が止まったのは一瞬。
「…え、真穂、今日帰り遅いんじゃ…」
「早く帰れたんだけど、帰りが遅いからってこんなことしていいわけないよね……!?」
「まじでタイミング悪いんだけど……」
はあーとため息をつく琢磨さんが次に何を言うのか待っていたら、クズ確定な言葉を発した。
「萎えるからどっか行って?今いいとこだから、明日話聞くから早く消えてくんない」
この言葉を聞いた瞬間、色々感情がぶわっと出てきて、寝室の扉を乱暴に締めて急いでマンションから飛び出した。
「最悪だ最悪だ最悪だ…!!」
走りながら出てくる涙を止めることなんてできないから、涙で滲む視界で一生懸命前を向いて、RedMoon目指して走った。
私が新入社員で入社したとき、同じ部署だった琢磨さんがフォローしてくれて、自然とご飯に行くようになって、琢磨さんから告白してくれた。
琢磨さんは私の全部の初めてだった。
初めての彼氏で、初めてのキスの相手で、初めての人で、初めて浮気をした彼氏だった。
こんな気持ちで扉を開けたくなかったのに…!
勢いよく扉を開けたbarの雰囲気をぶち壊し、私は絶対浮いていたと思う。
誰が来たのか確認の視線を送った三浦さんは、私の顔を見た瞬間、整った顔を崩してぎょっとした顔をした。
私はそのままずんずんと歩みを進めて、ちょうど空いていた三浦さんの前のカウンター席に座って「強いお酒ください」とお願いした。
私の様子に圧倒されてた三浦さんも自分のペースを取り戻して、「最初の1杯だから、軽めの飲みやすいものにするね」と私のための特製カクテルを用意してくれた。
その間も頭の上をぐるぐる回るのはさっきの光景に、琢磨さんのクズ発言だ。
せっかく三浦さんが作ってくれてる姿も、涙で見えないし泣いてるせいで顔も上げられない。
目の前に置かれたオレンジと黄色の鮮やかなカクテルに見とれた。
三浦さんの作るカクテルはいつもきれいだ。
口に含むとお酒なのに甘くてさっぱりした味が美味しくて、味わいながら飲み干すと、「落ち着いた?」と声をかけられた。
「何があったの?泣いて来店するからびびったんだけど」
「………」
今は三浦さんを独占できるみたい。
身長が高い三浦さんはカウンターの向こうでも私より目線が高くて、私の様子を確認するために目線を合わせる三浦さんから、ふわっと甘い香りがした。
「同棲してる彼氏が、……帰宅したら、同じ会社の女性と、その……遭遇しちゃって……」
「……は?」
「言い訳とかするかなって思ったんだけど、萎えるから早く消えてって言われて、逃げてきちゃった……」
「……お前バカだろ。だから言っただろーが!その男はやめとけって!絶対何かあると思ったのにホイホイ付き合って…!」
「な!な!いつも優しい三浦さんが優しくない…!!」
「俺は忠告したのに、そいつに夢中だったから聞きもしないで付き合って同棲して泣かされて…、腹立つんだよ」
「うう……どうせ自業自得ですよ!!でも、三浦さんに優しくしてほしかったのに!もういい!!チェンジーー!!」
いつもみたいに優しくしてくれると思ったのに、今日はキツイ口調で説教してくる三浦さんに余計に傷をえぐられて、担当をオーナーに変ってもらい、お酒を飲みながら愚痴愚痴こぼした。
「和希だって真穂ちゃんのこと心配して。今日みたいなことがあったから、その男にいらっとしちゃったんだよ」
「だとしても、だとしても!優しくしてくれたっていいじゃんよー!」
「真穂ちゃん酔いが早いから、今日はもう飲むのをやめた方が……」
「だって、だって、萎えるから早く消えろって。初めての彼氏にそんなこと言われるなんて、っ、思ってなかったし…浮気現場見ちゃっただけでも辛いのに…っ」
目を閉じたらすぐに浮かんできちゃう浮気現場。
皆こんな思いを乗り越えて次の恋に行くの?
私には辛すぎるよ、お酒を飲む以外に逃げる方法が分からないよ……
「オーナー、今日は飲みたいの!おかわり!」
私の様子に断りきれないと感じとったオーナーが弱めのカクテルで作ってくれるけど、こんなんじゃ全然足りないの。
早く、早く忘れたい。だって辛すぎるから。
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