強くてニューゲームができるらしいから ガキに戻って好き勝手にやり直すことにした 

カイガ

第4話 ③



 夏の陸上競技活動が終わり、9月には俺は二十歳になった。これで合法で酒が飲めるし、風俗店にも行き放題だ。
 だがそれ以上に嬉しいのは、マイナンバーが発行されたことだ。これには俺にとって大きな収穫だ。なぜならこれで…

『承認されました。ナナシ様。現在の持ち株数は、ゼロです』

 パソコン画面に映っている文字を見て、俺はニヤニヤと笑う。
 準備は整った。これをずっと待っていた。今度は失敗しない。
 俺は株トレードで超大金持ちになってやる!!

 本来の人生で株を始めたのは大学卒業後…就活全部失敗して無職になった頃だ。働かずに金を稼ぎたい…なら株をやろう!と思った次第でトレードを始めた。
 が…成果はまぁダメダメ。株トレードだけで楽しく生きていける、そんなクソ甘い幻想が叶うことはなかった。
 株を始めてわすが1年半で挫折して終了した。その後はしたくもない仕事に行って、やがて嫌になって無職と化した…というわけだ。
 金稼ぎのセンスも無かったあの時の俺は
まさに敗北者、負け犬だった。けど今回はそうはならない。この時代も中身の俺にとっては所詮は過去。過去のことは何でも分かる。
 つまりこれから、もしくは数年後には超儲かる銘柄が何なのかが常に丸分かりなんだよ!今の俺にはなァ!
 しかも今の俺の全財産は数千万もあるから最初からバンバン株を買うことが出来る。
 というわけで株式口座を開設して早速株買いを始める。今回買う銘柄は……任天堂!この時代のこれの株価はまだ1万数千程度だった。しかし2020年代にはその株価は約4倍も跳ね上がっている。今任天堂を100株買うだけでも3年くらい経てば数百万円になって返ってくるのは目に見えている。
 金持ちの俺は任天堂を後にまた買う株のことを考えて…500株購入(=500数万円投資)してやった。これで3年経った頃には、500万円が1000万円以上になって返ってくるだろう。
 ふっふっふ……はっはっはー!!このルートでの俺は、株で一生遊んで暮らせる「億り人」になってやる!毎年億単位でかせいで働かないで生きる毎日…陸上競技のレースに出たりゲーム三昧したりエッチな店に入り浸ったりばかりの人生を、俺は送ってやる!!
 今日を機に、勝ち確定の株トレードも始めることになった。大学を卒業する頃にはものすごい金になってそうだな!グヘヘヘ…。

 
 「NNSとまた一緒にユニバ行けて嬉しいわー!どこから回る?」
 「せやなぁ、新しいとこから行こうや。夜まではまだ長いし、雑談しながらゆっくり回ったりもして今日は楽しもうや」
 
 10月のある日、高校の同級生だった女、T本里砂ちゃんとユニバデート(少なくとも俺はデートのつもり)をした。本来の俺はこの年のユニバもほぼ1人で回っていた。ごく稀に家族と行ったこともあったが、友人とかと一緒に行ったことは大学時代でもなかった。
 けど今俺は、誰かと…しかも好みの異性と一緒にユニバを回っている!この俺が今、リア充している!!
 終始浮かれ気分のままユニバデートを満喫して、今年のホラーナイトも2人で回りまくった。
 そしてパークを出た後、俺たちは今……ピンク色のホテルの部屋にいた…!

 「去年も関西の試合で何度か顔を合わせたことあったけど、お互い色々忙しくてこうして遊ぶことは出来なかったよな。ほんまはT本とこうして遊びたかったんやで。T本とこうして一緒にいるんは、めっちゃ楽しいからな」
 「り、里砂も……NNSとこうして遊べたの、めっちゃ嬉しい。去年からNNSが凄い人になって、里砂にとって遠い人になった気になってたから…。それが、NNSからこんな誘いが来て、ほんま嬉しい…!」

 高3の時に蒔いた種が咲いたような気分だ。賭ける気持ちで2年ぶりに里砂ちゃんをこのユニバデートに誘ってみて、さらに踏み込んでこのホテルへも誘うという大胆な賭けにも出た。結果は全て上手くいった。
 世界陸上に出でテレビにも映った俺は、それなりの有名人に成り上がっている。世間では名はまだまだ小さいが、陸上競技界では俺はかなりの有名人となっている。
 ましてや里砂ちゃんとは3年間同級生だったこともあるし、お互い楽しく会話したら仲でもあるし、ユニバデートした仲でもある。
 様々な要因やフラグがあったお陰で、俺はついに里砂ちゃんともイチャエッチをすることが出来た!

 (うおおおおお!やっぱり締まりが凄くイイ!予想通りだ!ずっとこういうシチュエーションを妄想してシコってたが、ついに現実となってくれた!最高過ぎる!!)

 「ひゃん、あん!気持ちいい…気持ちいい、よぉ!♡も、イキそう……!」
 「ああっ、最高だ!俺もイク。T本の体に思い切りぶっかけるぞ……うっ!(ドピュビュルルル!!)」
 「んああああああん♪あったかい……。これ、好きかも♡」

 里砂ちゃんとの初セックス…最高過ぎた。ずっと好ましく思っていた女と和姦するのは楽しくて気持ちいいものだ。そこいらの風俗嬢とヤるよりも絶対的にこっちが良い。
 というわけで里砂ちゃんとは特に深い絆を結ぶこととなった。恋人デートをする仲、セフレ、どっちの仲としても俺たちは親密な関係となれた。
 お互い陸上部ガチ勢という共通点がある分、心がかなり通じ合えるらしい。今後も彼女とは仲良くイチャラブしたいものだ!

 さて、二十歳になった俺には、酒も金の管理もその他何もかもが自己責任として一任されるようになった。賭け事にも自由に行き来できるようになったから競馬や競艇、カジノに入り浸るようにもなれた。
 よって、それら全てのところで俺はチートで大勝ちしまくった。冬になる頃にはさらに1000万円稼いでいた。
 そして年末に毎回やってくるチャンス…年末ジャンボ宝くじで、俺はついに一等を当てにいった!
 12月24日。世間がクリスマスで浮ついている中、俺は独り奈良県のとある駅にある最寄りのくじ売り場で張り込みをしていた。
 そして指定した時間が来た瞬間、鬼気迫る表情で売り場へ直行。列のタイミングもしっかり測って特定の人物の後ろにさっと並んで、必要な分だけのくじを連番とバラで買った。
 さらにそこからネカフェで泊まって、翌日に別の県へ移動して、その県の特定の場所で特定の時間通りにくじをまた購入した。
 まだ俺の旅は終わらない。そこから三日間、現実的に間に合う範囲で特定の場所へ足を運んで指定した時間とタイミングでくじを全国各地で買いまくった。
 この行動は全て無駄ではない。全て当たると確信しての行動だ。いつ・どこで・どのタイミングで・いくら買えば良いのかが全て俺には分かる、全てお見通しだ。
 全国各地を飛び回って宝くじに約50万円も注ぎ込んだ旅という、かなり狂った行動で無謀な挑戦だと、何も知らない奴らはそう思うだろうが、結果はそれはそれは……かつてない程の大収穫となった。
 年末ジャンボ宝くじ当選結果…1等(6億円)当選が1つ、2等(1000万円)当選が2回、3等(100万円)が5回全部、その他当選が百数回といい、50万円投資など可愛く思えるレベルの見返りが届いた。
しめて総額6億2000万936万円の賞金をゲットした。

 はいーーーこの時点で俺はもう一生遊んで暮らせるぅ!勝った。俺はこの人生で勝ち組になれた!

 ありがとう神的な何か!あんたのお陰で俺のやり直し人生は、最高なものになりそうだ。お礼にこれからもっとこの人生を面白く見せてやるからな…!




 年が明けて春休みを経て、3回生となった。2010年代も折り返し。この年の夏にはオリンピックがある。本来の俺だったら部屋でテレビつけて競技を観るだけだったが、今回は違う。俺はオリンピックに選手として出場する!
 
 春季はインカレ試合がある時期。京都内のインカレから始まり、関西インカレ、西日本インカレと進めていく。どの試合もしっかり優勝して駒を進めていく。選手紹介で俺の名前が出た時あちこちから拍手がくるようになり、とても気分が上がる要因となった。
 世界陸上が終わってから、俺は独自の特殊なトレーニングに励んだ。俺向けの、俺だからこそ伸びる、俺専門のトレーニングというのを、チート使って調べてまとめて、メニューを作って、実践した。
 ハンマー投のメダリスト選手、諸星宗治も独自のトレーニングを取り入れて自分を高めていた。そして何度も日本一になった。
 俺も彼と同じやり方で今後の更なる成長を目論むことにした。というか、これをガキの頃からやっておけば、俺はとっくに日本一になっていたのだ。まぁ大学に入るまではまだ目立つつもりはなかったから敢えて独自のトレーニングをしなかっただけで。
 二十歳になった日を境に、俺は去年の秋から部活の監督や部長から許可を貰って、長い間文字通りの「特訓」を積んできた。
 特訓の内容は、ベタだが山でのトレーニングをよくやっていた。
 急勾配の場所を走ったり逆に降ったり、足場悪い場所で接地を意識しながら走ったり、手頃な岩を持ち上げてウエイトリフティングしたり引きずって走ったりなどをやった。お陰でバランス力が増し、体幹も凄く強化された。
 他にも再び格闘技のトレーニングも取り入れたりもした。ジムへ行ってスパーリングしまくって、パンチや蹴りの初速を極めて瞬発力を強化させた。これをしばらくやりまくった結果、スタートの初速が増した。
 山トレーニングに格闘技。これらを使ったトレーニングが、俺を更なる進化へ導いてくれた。
 4月のシーズン開幕レースで、100mが10秒05、200mが20秒09、400mが45秒30と、短距離種目全て日本ランキングトップとなった。
 俺のこの大記録の連発を見た陸上マニアたちは、俺を100mの現日本記録保持者である西東誠《さいとうせいじ》司以来の万能スプリンターだと囃し立てた。陸上競技界だけでなく、全スポーツ界や陸上競技に通な芸能人たちからも注目されるようになった。同時に実名で登録しているSNSのアカウントのフォロワーも激増した。

 そんな成り上がりイベントを挟みつつ、6月末になり、雨の中の日本選手権大会の日がきた。
 この年から男子短距離のレベルがさらに上がる。100mが特にヤバかった。10台を出している選手が俺を除いても3人もいるレベル、20台の選手も数人いるという史上最もハイレベルな試合だ。
 そんな激戦レースを制したのは、ドームに所属していてこの年で飛躍的進化を遂げたゲンビレッジ選手だ。かつてこのレースはテレビで見たものだったが、今回は現地で近くで観ることが出来た。
 いやー感動した。ゲンビレッジに谷懸、柳生の3トップ。でも実際は他の選手たちも3位の柳生に離されずの良い走りをしていた。陸上競技はやるのも良いが、観るだけでも楽しいな!
 因みにこの日の夕方に俺は200mの予選に出ている。去年共に初めての世界陸上に出たサニブライアンは怪我で欠場。大池もいなかった。レベルは去年よりかは下回っている。加えて俺は去年よりもかなり速くなっている。悪いけど最後は手を抜いてゴールさせてもらった。
 
 そして翌日の夕方、決勝に臨んだ。
 飯井塚に藤平、深瀬、さらに2014年度の本来の優勝者だった源秀太《げんしゅうた》など。有力選手が揃う中、俺は競技場内にいる人間全員の度肝を抜かすような走りを見せてやった。
 号砲と同時に飛び出す。200mのスタート飛び出しは、100mと違って全力では行かない。ほんの少し力を抑えて飛び出す。そこから前傾姿勢のまま加速していって、カーブの終わり手前でほぼトップスピードにもっていく。走りの技術というかペースはそんなもの。それが普通だ。
 しかし、今回の俺はそういった走りをしなかった。ブロックを全力で蹴って、低姿勢のまま9.5割以上のスピードを出して加速をつくって進む。コーナーが終わる頃には外レーンを走っている選手は飯井塚1人だけだった。が、その1秒後には彼をも抜き去っていき、直線は完全に俺がトップとなった。
 カーブでつくった加速をフルに稼働させて今までにないスピードを出していく。1秒毎に後ろの選手たちとの距離を広げていく。ゴールを切り、左右に誰もいないことを確認した俺は拳を上へ突き上げながらトラックを駆けた。

 「5レーンを走りましたNNS選手の只今の記録は………20秒01!
 この記録は日本新記録及び大会新記録となります!おめでとうございます!」

 夢見ていたこの光景が、現実となった。
 陸上競技短距離において、俺の時代が来た瞬間だった。


 「最っ高のやり直し人生だよ!!」

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