強くてニューゲームができるらしいから ガキに戻って好き勝手にやり直すことにした 

カイガ

第4話 ②



 8月中旬に、韓国の仁川でアジア大会があり、そこに俺は200mで出場した。
 初めてとなる海外規模での大きなレース。さすがの俺も緊張した。
 とはいえ本番ではしっかり実力を発揮できた。そして初出場ながらも銀メダルを獲ってやった。
 記録は20秒49。やっと20秒前半台が出てくれた。まだ俺は速くなれる。因みに金メダルを獲ったのは、今大会の100mでも金メダルを獲り、後に19秒台を出して来年の世界陸上のファイナリストにもなる男…カタールのオクノテ選手だ。20秒14だった。

 他にも、9月には全国インカレで1年生での優勝を決めたり(20秒40)、国体に100mで出場して入賞したりもした(10秒30)。この年は秋でもかなり活躍できた。大会を通して色んなトップスプリンターたちと知り合うことも出来た。谷懸に飯井塚、高原に深瀬。さらには400mのディフェンディングチャンピオンである銅丸信三など…日本の有名アスリートたちと知り合えて楽しい年だった。
 
 大学キャンパスライフも中々楽しめた。
 単位はノー勉強でも余裕で取れるので、部活と遊んでばかり。講義は基本独りでいるが、部活でそれなりの仲間をつくることができた。
 同志社の陸上部には突出した選手はいなかったものの、高校の時みたいに楽しい奴らがけっこういた。同期では特にK森と仲が良かった。そいつは確か、後に400mで47秒前半を出す奴だったな。かつて観客席で奴の400mを見たことあったなー。
 女子もそれなりに(タイムも…顔も体も!)良いのがいたな。またオカズにさせていただきました。まぁ大学の部活では特にエッチな異性交遊はしなかったな。
 その代わりに部活外の女子大生…夏休み明けから現れた俺のファンたちとよく遊んだ。アジア大会での活躍により、大学キャンパス内ではかなり有名となってしまったのが原因だろう。秋には講義終わりに毎回俺に声をかけてくる学生がけっこういたなー。しかも運の良いことに女子が多かった。
 だからその中から好みな女を選んで、セフレにしてやった!

「ああぁん♪イイ!もっとぉ♡NNSさんの逞しいモノもっとちょうだい!」
「はっはー!なんて具合の良い体だ!これからも応援よろし、イクウウウウ!(ビュルビュル!)」
「はああああぁん!はいっ、これからもずっと応援してます!貴方のカッコいい走りをこれからも見せて下さい、イクウウウウ!!」

 テンション上がって沢山出してしまった。それ程に良い女だった。イキ過ぎた。

 「久しぶり!私のこと覚えててくれて安心したー!」
 「同じマンションなんだから当たり前やろ。じゃあ…楽しく遊ぼっか」
「うん……シたい♡」

 「アジア大会テレビで観てたよ。凄いわホンマ。サイン頂戴!あと…久しぶりにまた遊びたい♡」
 「もちろん。俺の方こそ、また会いに来てくれて嬉しいよ。近況報告がてら、楽しもうかーー」

 さらには中学時代の親しい女子とも交遊した。今年はK村まや・M田まゆきと楽しんだ。あの時の種蒔きが功を奏したな。お陰で女にも非常に恵まれた。

 ゲームにおいても、インターネット環境がさらに進化してより楽しく遊べるようになった。
 ポケモンシリーズで第3世代のリメイク作、相変わらず面白かった。俺にとっての原点となる作品のリメイク、凄く面白かった。レックウザのストーリーとか良かったなー。
 それにここからレーティング対戦もさらに面白くなったなー。ポケモンでも対戦ランキングはページ1(10位以内)に常に入っていて、俺のHNがポケモンガチ勢の界隈で有名になった。こっちでも世界大会に出られる程のプレイング力は一応あるのだか、あえて出ないことにした。せいぜいインターネット上での王者として君臨する程度に留めておいた。ポケモンは一度はインターネットでトップに立ってみたかっただけだから、これくらいで良い。まぁいずれは陸上競技で有名になったらゲーマーだってこともバラそうと思ってるから、その時にアピールすれば良いや。
 そういえばこの年からラノベ 集めに凄くハマってたな。
 「デート」に「アリア」、「俺ガイル」に「ストブラ」等…。ラノベ に凄くハマりまくった時代だったなー。このルートでももちろん全部全巻揃える。俺はトップスプリンターでもあり、ゲーマーでもあり、2次元オタクでもある幅広い趣味を持つ人間となった。

 あと金もたんまり稼いだ。宝くじでチートしまくって、年間1000万稼いだぜ。
 
 あの時とは違う。金に困ることはもうない。女もいっぱい抱ける。夢だったトップスプリンターにもなれた。この頃はしたくもなかったアルバイトに時間を割いていたが、その必要も無い。俺はバイトなんかしなくても遊べる金がたんまりあるから!
 やりたい放題の楽しい大学1年目だった。




 大学生ライフ2年目。
 当時のこの頃は、地元の陸上競技クラブチームに入ってアマチュアレベルで活動してたなー。ま、今回はガチ…いや、プロとして活動させてもらうけど。

 というわけで今年のインカレ試合もしっかり優勝していく。
 5月…関西インカレで優勝。200m 20秒40。高校時代の柳生のベストタイムをようやく超えることが出来た。
 この年からは、関西学院大学からもの凄い選手が現れる…大田祥平《おおたしょうへい》だ。
 出身は俺と同じ東大阪市だ。かつて中学の市内記録会で彼を何回か見たことあったな。あの時はまさか彼がメダリストになるなんて思いもしなかったが。
 彼は今から2年後に10秒0台を公式で出して、世界陸上にも個人とリレーで出場する傑物となる男だ。
 去年のインターハイでは100m5位入賞と、かつての柳生ほどの成績は出していない。さらに言うと中学時代はせいぜい府大会の準決勝止まりの成績だった。大田が化けたのは大学にはいってから。1年生にしてこの関西インカレのチャンピオンとなる。
 今日も彼の決勝レースを見たが、あのスタートダッシュは超一流だ。真似などチート使っても不可能だ。
 後にリレーで一緒に走れたら良いなと思う。同じ東大阪市出身の者同士として。

 6月…西日本インカレ。今年もしっかり優勝獲ってやった(20秒45)。
 続いて月末に3度目の日本選手権。ここで勝ち抜けば今年の世界陸上北京大会に出場できる。是が非でも勝ちに行く!
 今年の日本選手権はトップランカーの選手が決勝から外れるという事態が多い年だった。
 このルートでもそれは同じらしく、柳生は欠場、谷懸も途中で棄権など、熾烈なトップ争いとなるレースとなった。
 100mは特に凄かったな。あの二人が決勝にいないレース、誰が優勝になるかは当時は全く分からなかった。
 優勝したのは正規通り、深瀬だった。それは良いとして、俺が注目したのは2位を獲った高校生の男だ。
 サニブライアン・アルファ・ヘキーム。東京の高校2年生だ。
 彼はこの年でなんと、柳生が出した200m の高校記録を破っている(20秒34)。今年からは彼も日本のトップスプリンターへと成長を遂げる。
 200m にもサニブライアンはもちろん出場する。決勝で彼と走った。
 選手コール時間にサニブライアンの近くを通ったのだか…デカい。俺が見上げるくらいにデカい、高校生とは思えない身体だ。この年で190近いスプリンターなど他にいまい。この体格こそ、彼の武器とも言える。
 決勝は俺と彼の他に、藤平や深瀬、高原、大池、飯井塚も残っており、激しいレースとなった。スタートはサニブライアンはかなり遅い方だか、後半の加速が半端なかった。昔の俺だったら直線で完全に置いてかれてたに違いない。
 後ろからグングンくるサニブライアンを何とかかわしてゴールを切る。しかし優勝したのは、今回は藤平だった。そういえば彼はこの年あたりが凄く速かったよなー。30近い歳で20秒32とは恐れ入るよ。因みに俺は2位(20秒39)、3位がサニブライアン(20秒57)だ。
 本来なら深瀬が3位になって世界陸上に出るはずだったが、俺が割り込んだせいで俺が世界陸上に内定された。彼には悪いがこのルートでは俺が走らせてもらう。
 

 というわけで8月中旬。俺は初めて世界陸上の舞台に立った。8年前の大阪で観たこの試合、いつかは俺も選手として出ると誓った。それがやっと叶った。もうそれだけでお腹いっぱいな気持ちだが、もちろん出るだけで終わらせるわけにはいかない。
 初めての世界の舞台で、同じく初出場のサニブライアンとともに大暴れしてやるぜ!

 「お互い初めて同士、一緒に勝ち残ろう」
 「そうっすね。緊張しますけどしっかり自分の走りをここでもすることに専念します」

 サニブライアンとそんな会話を交わして俺はレースに臨んだ。世界のトップスプリンターたちとの初レースだ!



 結果を先に言うと、準決勝敗退という結果に終わった。
 予選は組3着で通過(20秒33)。同じ組にアジアチャンピオンのオクノテがいたなぁ(20秒25)。
 これでも組運が良かった方だった。どの組も3着以内の奴らはほとんどが30前半のタイムという超絶ヤバいレベル。最初から全力出し切らないと残れない熾烈で過酷なレースだった。
 日本勢はサニブライアンも藤平も着順で残ることができて全員準決勝へ進めた。この2人は本来も準決勝へ進めてたよな。今回も無事進めて良かった。
 で、準決勝だが…まだまだ実力不足だったみたいで、無残に敗退した。
 同じ組には藤平と、当時の絶対チャンピオンであり不動の世界記録保持者でもある男…ボルトがいた。
 一緒に走って改めて思い知らされた…これが世界一速い男の走りだってことを。まだ次元が違うと思わされるくらいに実力差があるということを。
 19秒で駆けるあの走りにはまだ到底及ばない。改めて彼の速さを思い知ったレースだった。
 ボルトも速かったが他の選手たちも半端なかった。組上位が10台というハイレベル過ぎる結果。俺はこの時20秒25という自己ベストを出したがそれでも6着という厳しい結果だった。

 これが世界一を決める大会、世界一レベルの高いレース。日本でトップクラスになってもここでは簡単にファイナリストにはなれない。世界のファイナリストになるにはもう段階の進化が必要とされるんだろうなぁ、今の俺じゃあまだダメだ。
 強くてニューゲームしてもまだダメとか、やっぱ俺は弱いなぁま、しゃーない。この舞台に立てただけでも俺は嬉しかったんだ。あんな世界トップレベルのスプリンターたちと競えて、十分楽しかった!
 でも次はもっと上に行ってやるからな!!
 心の中でそう決意していると、俺のところにボルトがやってきた。肩をポンと叩いて労ってくれた。

 「俺も君くらいの歳はそれくらいのレベルだった。NNSだったね?これからもどんどん自分を磨いて、またこの舞台でともに走ろう」
 「あ……ども。いつかは俺も決勝レースに出であなたとまた一度走りたいです」

 ボルトに話しかけられて少し浮つきつつもなんとか返事する。ボルトはにこりと笑って満足げに去って行った。
 今のでまたレースがしたくなったな…。ウズウズしてきた。またボルトと走りてぇ…!
 その為にはまた勝ちまくらないと…。来年のオリンピック。それまでにしっかり強化してまた挑もう!

 こうして俺の初の世界陸上チャレンジは終わったのだった。因みにリレーには俺は入らなかった。100mの選手たちの構成だった。
 
 
 

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