異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。

千絢

76.美しき花

メギドの様子は、他のドラコンたちよりもまだマシな方だった。マシな方だと言わざるを得なかった。気だるそうに首をもだけ、私の頬に顔を寄せるだけで息が上がっていたのだ。








「別件はマリベル様に任せて、私はこっちを解決すべきかしら」








早くもロベルト様から帰ってきなさいと召集が掛かり、私は泣く泣くメギドの側から離れた。可哀想な子たち。ドラコンたちでは解決できないこの問題は、私たち人間が解決しなければならない。








「ただいま戻りました」






「おかえり」






「なんか空気悪くないですか?」






「そうか?お前、この花を見たことはあるか?」








空気の淀みを感じる執務室には部屋の主であるシヴァ様とロベルト様、それから書庫に籠りっぱなしの筈のマリベル様も居た。








そして、シヴァ様が目で花瓶の花を指した。あぁ、なるほど。そりゃ空気も淀むわ。納得と理解の末ーー私は無意識に炎でその花を燃やしていた。煙も灰もなく、文字通り焼失した。








「はぁ!?なんで燃やすんだ!!」  






「え、なに、この世界じゃ燃やしちゃいけない花だったんですか?」






「この世界じゃ…?この花が何なのか知ってるのかい?」






「あの花は、シバルヴァ。空気を汚染し、花の香りや花粉で人を死に追いやる美しき毒花で、別名は魔物花」








なんで、あの花が此処に?マリベル様たちが知らないということは、あの世界地球にしかないものなんだろう。だとしても、何故?








「毒花?」






「花の蜜や汁は猛毒となり人を死に導き、花の香りと花粉は毒となり人を眠りに誘い死に導く。例え切り花でも効果は凄まじいもので、殺したい人の枕元に一晩置くだけでサヨウナラです。何処にこれが?」






「殺したい人の枕元に…」






「アルベルトの部屋に、ヴィヴィとリヴェーダが見舞いに持ってきたと、王妃が」






「ひぇっ 」








シヴァ様の言葉にとんでもない悲鳴が出てしまっ た。白帝を暗殺するために皇女と皇子を使うとは、なんて大胆な方法だ。皇女も皇子も知ったら、ひどく傷つくだろうな。













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