異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。

千絢

74.竜舎の者

「可笑しいよなあ」








疲れ顔のドラコンたちは、所々で溜め息を吐いていた。ドラコンの疲れ顔ってどんなんだよ、と思うけど本当に疲れ顔なんだよ。








「あれ、ウェルミスさん?こんにちは、どうかされたんですか?」








私をその名称で呼んだのは、ドラコンたちの面倒を見る騎士団の人だ。騎士団と魔術師団の2つで構成されている'竜舎の者'たちは、何故か私をウェルミスと呼ぶ。








「こんにちは、ドラコンたちの様子が変だって聞いたんで見に来たんです」






「おや、そうだったんですね!メギド君も少し調子が悪いのか、あまり訓練しようとしないんです。他の子達よりはマシなんですけど」






「それ、いつからです?」






「え…っと、確か白陛下が臥せったとお聞きしたぐらいですかね。団長や魔術師団長にも問い合わせしてるんですが、何も分からなくて」








何も変わらないままだと、彼は続けた。この竜舎の者たちは、かなりの変人…もとい曲者だらけだ。白帝を白陛下と呼び、黒帝を黒陛下と呼ぶのもそうだしーーなにより、可笑しな話だがドラコンたちからは同族のようなもの、と見られている。






「ティエラやアストラルは?」






「ティエラ妃は、もう衰弱寸前でしたね。アストラル王が里に連れて帰られましたけど」






「…そう。あ、兄の、シキのドラコンの彼女は?」






「リリーシャ嬢は、城下に帰られましたよ。元々、リリーシャ嬢は黒筆頭の恋人ですし、此処には籍を置くだけで住んでませんから」






「いや、それは分かってるんです。変わった様子とかなかったですか?」






「あー…、痣でしょうか?リリーシャ嬢だけならず、色の白いドラコンだったら分かりやすいんですが、見覚えのない痣が身体中に出来てるんです」






「痣?」








言わずもがな、黒筆頭はうちのお兄ちゃんのことである。お兄ちゃんと契約を交わしているドラコンリリーシャは、風の王の娘であり、お兄ちゃんの恋人でもある。私もそうだけど、お兄ちゃんも凄いよね。








「痣か、ちょっと気になるね」






「ウェルミスさん、ドラコンたちに何が起こってるか突き止めてくれませんか?まだ幼い子達が可哀想で」






「うーん、私も私で別件抱えてるんだけどな。自分の相棒も居るし、気には掛けとくけど期待しないでくださいね」






「よろしくお願いします!!メギド君に会われて行かれますか?」






「うん、会って行くよ」








竜舎の者たちは優しい。ドラコンに対して無償の愛を注ぐ。誰と契約を交わしていても、変わりなく愛する。だからだと思う。今の状況がとても歯がゆくて、苛々しているのは。








「メギド、大丈夫?」








優しい瞳の奥で揺らめく怒りの炎。ドラコンたちを傷付けたら彼等が許さない。同族よりも、同族以上に怒り、仕返しをする。それに手段は選ばない。だからこそ、竜舎の者と肩書きを与えられている。








ドラコンたちを誰よりも知り、人間にして、ドラコンたちから同族のようなものとして認められているーーそれが竜舎の者。









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