異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。
73.行き詰まり
お兄ちゃんが居たらと思うけど、お兄ちゃんもお兄ちゃんで、私が居たらと思うんだろうなあ。シスコンブラコンな私たちは、お互いの適材適所を利用すべき場所と時を理解している。
本来なら私が魔王を葬り去るべく行方を眩まし、お兄ちゃんが白帝の原因不明の究明に走り回るべきなのだ。ただ、お兄ちゃんがそれを選ばなかったのはーーただならぬ事情があるからだろう。
今さら、父さんの復讐を果たした所で何も変わらない。それは私もお兄ちゃんも分かっている。魔王を葬り去るのは復讐、とは体の良い表向きの目的だ。本当の目的は別にある。
それを何となくだけど分かっているから、私はそれとなく捜索を止めるように仕向けた。大人しく止めてくれるとは思わなかったけど。
「早く戻ってこないかなあ」
誰に拾われることなく、私の独り言はポツリと消えた。早く目的を果たして帰って来ないかなあ。白帝が衰弱死する前に、帰って来たら良いんだけど。
眠ったままの白帝。執務中、彼は居眠りをするように机の上で寝ていたそうだ。珍しいことだと思いながら、疲れているのだろうと判断したロベルト様は、そのまま寝かせることにして執務室を出たとか。 
夕食の時間になっても食堂に現れないことを不審に思ったシヴァ様が、そのまま寝こけた白帝を見つけ揺さぶっても殴っても起きなかったので、慌てて医者を呼んだのだとか。
そして、お伽噺に出てくる眠り姫のように眠り続けている。今は体力の消費を抑えるために、2人係りで魔術を掛け続けているらしいがーーそう長くは持たないだろうと医者は言った。マリベル様も同じ意見らしく、原因究明の為に書庫に籠りっぱなしだ。
「イオリ、これが片付いたらマリベルの所に行ってこい」
「はい?」
「お前の異世界の知識とマリベルの知識を合わせてこい。いつまでもアルベルトに寝続けられても困る」
「…シヴァ様、お言葉ですが」
「なんだ」
「それ3回目です。私はマリベル様の所に通ってますが、もう知識は出尽くしました。何か他の方を…」
「あ゛ぁ゛?」
「分かりました分かりました。片付いたら行ってきます!!」
心配なのは分かる。机仕事ばかりで、ストレスが溜まるのも分かる。分かるけど、その鬱憤を私に向けないで欲しい。威圧感のある魔力がずっと執務室に立ち込めているのは、久しぶりのような気がする。
「あぁ、そういえばティエラは何処です?白帝が臥せってから、見掛けてないように思いますが」
「アストラルが連れて竜の里に帰ったが」
「帰った?」
「ティエラ様にも不調が出たんです。心配に心配が重なったアストラル様が、一度里帰りすると帰られましたよ」
「関係があるのか分からないが、ドラコンたちもかなり体力が削られている」
ちょっと待て。白帝が臥せってから、ドラコンにも影響が出た?契約を交わしているから、だとそれには理由がつくが、他のドラコンたちも不調だと?
「ここ暫く私たちも缶詰でしたからね、メギドも周りのドラコン程ではないですが、体力の消費が見られると聞いていますが…、イオリ殿?」
「そんな話、今まで聞いてない」
「え?竜舎の者が伝えに来た筈ですよ?」
「え?何言ってるんですか、ここ暫くは私たち缶詰だったじゃないですか。必要最低限でしか、此処から出してくれなかったの誰です?」
マリベル様の所に派遣されていても、2、3時間という短さでとんぼ返りしていたぐらいだ。なのに、え?ぶっちゃけ言うなら、お兄ちゃんの捜索を打ち切ってから暫くシヴァ様、ロベルト様、マリベル様としか会っていない。
「どういうことだ?」
「どういうことでしょう?」
「ーーそもそも、私たち。外部からの情報に疎くなっていませんか?」
私の言葉に顔を見合わせて、3人でため息を吐いた。少し外に出ることになった。
シヴァ様はルシエラ様のもとに。
ロベルト様は白帝のところに。
私はドラコンたちが集う訓練場へ。
本来なら私が魔王を葬り去るべく行方を眩まし、お兄ちゃんが白帝の原因不明の究明に走り回るべきなのだ。ただ、お兄ちゃんがそれを選ばなかったのはーーただならぬ事情があるからだろう。
今さら、父さんの復讐を果たした所で何も変わらない。それは私もお兄ちゃんも分かっている。魔王を葬り去るのは復讐、とは体の良い表向きの目的だ。本当の目的は別にある。
それを何となくだけど分かっているから、私はそれとなく捜索を止めるように仕向けた。大人しく止めてくれるとは思わなかったけど。
「早く戻ってこないかなあ」
誰に拾われることなく、私の独り言はポツリと消えた。早く目的を果たして帰って来ないかなあ。白帝が衰弱死する前に、帰って来たら良いんだけど。
眠ったままの白帝。執務中、彼は居眠りをするように机の上で寝ていたそうだ。珍しいことだと思いながら、疲れているのだろうと判断したロベルト様は、そのまま寝かせることにして執務室を出たとか。 
夕食の時間になっても食堂に現れないことを不審に思ったシヴァ様が、そのまま寝こけた白帝を見つけ揺さぶっても殴っても起きなかったので、慌てて医者を呼んだのだとか。
そして、お伽噺に出てくる眠り姫のように眠り続けている。今は体力の消費を抑えるために、2人係りで魔術を掛け続けているらしいがーーそう長くは持たないだろうと医者は言った。マリベル様も同じ意見らしく、原因究明の為に書庫に籠りっぱなしだ。
「イオリ、これが片付いたらマリベルの所に行ってこい」
「はい?」
「お前の異世界の知識とマリベルの知識を合わせてこい。いつまでもアルベルトに寝続けられても困る」
「…シヴァ様、お言葉ですが」
「なんだ」
「それ3回目です。私はマリベル様の所に通ってますが、もう知識は出尽くしました。何か他の方を…」
「あ゛ぁ゛?」
「分かりました分かりました。片付いたら行ってきます!!」
心配なのは分かる。机仕事ばかりで、ストレスが溜まるのも分かる。分かるけど、その鬱憤を私に向けないで欲しい。威圧感のある魔力がずっと執務室に立ち込めているのは、久しぶりのような気がする。
「あぁ、そういえばティエラは何処です?白帝が臥せってから、見掛けてないように思いますが」
「アストラルが連れて竜の里に帰ったが」
「帰った?」
「ティエラ様にも不調が出たんです。心配に心配が重なったアストラル様が、一度里帰りすると帰られましたよ」
「関係があるのか分からないが、ドラコンたちもかなり体力が削られている」
ちょっと待て。白帝が臥せってから、ドラコンにも影響が出た?契約を交わしているから、だとそれには理由がつくが、他のドラコンたちも不調だと?
「ここ暫く私たちも缶詰でしたからね、メギドも周りのドラコン程ではないですが、体力の消費が見られると聞いていますが…、イオリ殿?」
「そんな話、今まで聞いてない」
「え?竜舎の者が伝えに来た筈ですよ?」
「え?何言ってるんですか、ここ暫くは私たち缶詰だったじゃないですか。必要最低限でしか、此処から出してくれなかったの誰です?」
マリベル様の所に派遣されていても、2、3時間という短さでとんぼ返りしていたぐらいだ。なのに、え?ぶっちゃけ言うなら、お兄ちゃんの捜索を打ち切ってから暫くシヴァ様、ロベルト様、マリベル様としか会っていない。
「どういうことだ?」
「どういうことでしょう?」
「ーーそもそも、私たち。外部からの情報に疎くなっていませんか?」
私の言葉に顔を見合わせて、3人でため息を吐いた。少し外に出ることになった。
シヴァ様はルシエラ様のもとに。
ロベルト様は白帝のところに。
私はドラコンたちが集う訓練場へ。
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