異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。
54.神の如く速さをもった刃
まあ、あれだ。黒帝が戦神と呼ばれている意味が分かった、ような気がする。実際、黒帝と戦場に出たことが無かった。話しに聞くだけの実力は、今身を持って体感している。詠唱するスピードが半端ないんだよ。無詠唱じゃないのに、展開からの実行までのスピードが早い。
「----、----」
「え、火ぃ!?まじかよ!!」
詠唱の声が聞き取れないから、何が来るのか見当もつかない。これが一番厄介。無詠唱は無詠唱で厄介なんだけど、これはこれで厄介だと思う。剣を振るう脳しかなかったわけではないそうだ。こんな狭い部屋で火の魔術なんて使う馬鹿が何処に居る。慌てて消火活動も兼ねて水の魔術を展開する。
青白い炎はメラメラと燃えていく。知ってた?赤い炎より青い炎の方が温度って高いんだー。アルコール
ランプの火なんて約1700℃にまで達するんだ。ちなみに、ロウソクは黄色い火の外側に青い火を纏っているから約1400℃で、中心は約600℃ぐらいで温度差が大きい。とまあ、雑学なんだけど…。
「消えねーわ」
《消えないなあ》
「こればかりは黒帝の責任だろ。これ以上の損害は避けたいし、走って外に出るかね!」
タタンと足踏みして、私は足を前に踏み出した。一気に黒帝の横を通り過ぎる。私も黒帝も丸腰。戦う術は己と魔術だけ。それが吉と出るか凶と出るか。負ける気はしないけどさ。走り出した私めがけて風の刃が襲い掛かってくる。チリッと頬に焼けつくような痛みが走る。顔を狙うとは、男としてサイテーな行為だぞ。首を狙えよ、首を!!
「逃がすか!!」
「悪いけど、此処の損害増やして迷惑被るのアンタなんだよね!でも、まだアンタに対して良心は僅かばかりだけど残ってるんだわ!!」
風の刃、火の刃、それぞれが私を狙ってくる。ほんと、良い性格してるわ。絶対に狙いが外れない。足を切り、背中を切り、髪を切り、腕を切り裂いて行く沢山の刃。血が落ちる、髪が宙を舞う、服の切れ布が飛んでいく。
それでも私の足は止まらない。目指すは鍛錬場。あそこなら多少大きな魔術をぶちかましても問題なかろう。私も黒帝も、ね。鍛錬場までに私の首が胴体と繋がって居れば、の話だけども。並走するアストラルは黒い艶やかな黒髪を風に遊ばせ、不思議そうに首を傾げた。
《イオ、反撃を何故しない?無詠唱のお前ならいくらでも…》
「そんな細々した制御が出来る気がしねぇんだよ!!制御無しでぶっ飛ばしたら、更地にしてしまうだろうが!」
《…女性が、そんな口を利くとは》
「そんな細々した制御が出来る気しませんわ!制御無しで展開したら、更地にしてしまいかねません!で良い?!」
《…すまぬ、やはりお前らしさがほしい。聞かなかったことにしてくれ》
「分かればよろしい!つか、いつまで着いてくる気かしら?!」
軽口叩きながら走ってるけど、右足のふくらはぎを思いっきり風の刃が切り裂いたのか痛い。めっちゃ痛い。どれも薄皮ばかりだけど、多分コレは肉までいってる。確実にヤッた。それでも尚、私の足が止まらないのは、周りの被害を少なくしようと思っているからで、私の良心はまだまだ残っているらしい。周りのギョッとした視線。また要らん噂が増えるなあ。
《決着が着くまで、だ》
「フン、どっちかが死ぬまでってか。自分の主が死なない様に大人しく見ていなさい」
《イオリよ、もうちょっと自分を労わらぬか?何も主だけの心配をして、着いて行っているわけではないのだよ》
「――私はね!戦場で生まれて、戦場で死んでいくの!誰かに心配されるのは嫌なのよ!!」
《シキや双子たちはお前の事を心配しているのにか?》
「家族愛でしょ?!私は志貴の妹で、双子たちの姉。それ以上それ以下もないの。それを抜きにして誰が私を心配するって!?誰が私を愛してくれるって?アストラル、ふざけたことを抜かさないで頂戴」
《それが、本心か》
痛い。足が痛い。背中が痛い。
こころも、いたい。
「----、----」
「え、火ぃ!?まじかよ!!」
詠唱の声が聞き取れないから、何が来るのか見当もつかない。これが一番厄介。無詠唱は無詠唱で厄介なんだけど、これはこれで厄介だと思う。剣を振るう脳しかなかったわけではないそうだ。こんな狭い部屋で火の魔術なんて使う馬鹿が何処に居る。慌てて消火活動も兼ねて水の魔術を展開する。
青白い炎はメラメラと燃えていく。知ってた?赤い炎より青い炎の方が温度って高いんだー。アルコール
ランプの火なんて約1700℃にまで達するんだ。ちなみに、ロウソクは黄色い火の外側に青い火を纏っているから約1400℃で、中心は約600℃ぐらいで温度差が大きい。とまあ、雑学なんだけど…。
「消えねーわ」
《消えないなあ》
「こればかりは黒帝の責任だろ。これ以上の損害は避けたいし、走って外に出るかね!」
タタンと足踏みして、私は足を前に踏み出した。一気に黒帝の横を通り過ぎる。私も黒帝も丸腰。戦う術は己と魔術だけ。それが吉と出るか凶と出るか。負ける気はしないけどさ。走り出した私めがけて風の刃が襲い掛かってくる。チリッと頬に焼けつくような痛みが走る。顔を狙うとは、男としてサイテーな行為だぞ。首を狙えよ、首を!!
「逃がすか!!」
「悪いけど、此処の損害増やして迷惑被るのアンタなんだよね!でも、まだアンタに対して良心は僅かばかりだけど残ってるんだわ!!」
風の刃、火の刃、それぞれが私を狙ってくる。ほんと、良い性格してるわ。絶対に狙いが外れない。足を切り、背中を切り、髪を切り、腕を切り裂いて行く沢山の刃。血が落ちる、髪が宙を舞う、服の切れ布が飛んでいく。
それでも私の足は止まらない。目指すは鍛錬場。あそこなら多少大きな魔術をぶちかましても問題なかろう。私も黒帝も、ね。鍛錬場までに私の首が胴体と繋がって居れば、の話だけども。並走するアストラルは黒い艶やかな黒髪を風に遊ばせ、不思議そうに首を傾げた。
《イオ、反撃を何故しない?無詠唱のお前ならいくらでも…》
「そんな細々した制御が出来る気がしねぇんだよ!!制御無しでぶっ飛ばしたら、更地にしてしまうだろうが!」
《…女性が、そんな口を利くとは》
「そんな細々した制御が出来る気しませんわ!制御無しで展開したら、更地にしてしまいかねません!で良い?!」
《…すまぬ、やはりお前らしさがほしい。聞かなかったことにしてくれ》
「分かればよろしい!つか、いつまで着いてくる気かしら?!」
軽口叩きながら走ってるけど、右足のふくらはぎを思いっきり風の刃が切り裂いたのか痛い。めっちゃ痛い。どれも薄皮ばかりだけど、多分コレは肉までいってる。確実にヤッた。それでも尚、私の足が止まらないのは、周りの被害を少なくしようと思っているからで、私の良心はまだまだ残っているらしい。周りのギョッとした視線。また要らん噂が増えるなあ。
《決着が着くまで、だ》
「フン、どっちかが死ぬまでってか。自分の主が死なない様に大人しく見ていなさい」
《イオリよ、もうちょっと自分を労わらぬか?何も主だけの心配をして、着いて行っているわけではないのだよ》
「――私はね!戦場で生まれて、戦場で死んでいくの!誰かに心配されるのは嫌なのよ!!」
《シキや双子たちはお前の事を心配しているのにか?》
「家族愛でしょ?!私は志貴の妹で、双子たちの姉。それ以上それ以下もないの。それを抜きにして誰が私を心配するって!?誰が私を愛してくれるって?アストラル、ふざけたことを抜かさないで頂戴」
《それが、本心か》
痛い。足が痛い。背中が痛い。
こころも、いたい。
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