異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。

千絢

52.カウントダウンへの1歩

「とにかく、私は白帝と結婚するつもりもないし私は無罪を叫ぶ」






「…それが出来たら、お前は此処に居ないよな」






「それ言っちゃ駄目なやつですね。でも、結婚マジで嫌。好きでもない人と結婚とかマジで無理。恋愛婚をオススメします」






「世の貴族に言うと殺されるやつな。でも、残りの人生安泰になるんだぞ?そんなに嫌か?」






「嫌。人生の安泰は確かに確定したものが良いけど、白帝と結婚してまで欲しくないね。というか、今の人生が滅茶苦茶とか思ってませんし、私に皇族生活とか無理。そもそも無理」








世の中の女の子なら、喜んで結婚を受け入れるんだろうけど私は無理だな。皇位にこだわりもないし、皇族仕事もするつもりもない。私は戦場で駆けたい。刀を振るいたい。精霊たちと唄を奏でたい。








「完全否定するか…。身の潔白が証明されるまで、此処に居ることになるんだぞ?」






「結構。壊して出て行きましょう」






「…地下牢行きになるかもしれないんだぞ」






「どうとでも。ドラゴンたちや精霊たちの助力を乞いましょう」






「……結界の牢に入れられるかもしれないんだぞ」






「結界など脱走ついでに解いてみせましょう」






「強情だな」








閉じ込められるのなら、私は抉じ開けて出て行くまでだ。埒の明かない現状に、どうしようもなくやるせなく感じる。それはジェラール団長も同じ思いだったのだろう、同時にため息を吐いた。








《依織、随分と面倒事に巻き込まれたな》






「あら、アストラル」






すっと影から出てきた美丈夫は、本当に面倒臭そうな顔をして机に腰掛けた。何をしに来たんだろう、この方は。ただ、いきなりの登場にジェラール団長は驚きに固まった。固まるまでもないだろうに。登場する前兆はあったんだけどなあ。








《シヴァルツがお前を処刑にすると言ってきかないんだ…。すまん、逃げてくれ》






「あ、やっぱりぃ?何か、黒い魔力が動いてるなあとは思ったんだよね」






「やっぱりってか!?ふざけんなよ、お前!どうするんだよ!!」






「冤罪で死ぬつもりないから、勿論ドンパチしますけど」






「お前と黒帝がドンパチだと!?クソ、避難命令出してくるから逃げるなよ!!」






「へーへ」






避難命令だなんて大げさな…。出て行ったジェラール団長を見送って、私はまたため息をついた。現状は何かで一変するんだねえ。今回は黒帝か。前回はマリアナで、その前はジエロ時雨なんだよね。










《俺達としてはマリアナが死んで清々してるんだがなあ。ルルベルはお前が弔ってくれないか?》








「ルルベルまで亡くなったのね。弔いはさせてもらうけど、アストラルがそんなこと言っていいの?」








《かまわん。あいつマリアナの魂は汚れていたからな。随分と前から魔物か何かに唆されていたんだろう。ルルベルには惨い事をしたものだ》








「それでも、ルルベルは彼女に着いて行くと言ったのよ。それも本望なんじゃないのかしら」








例え、ドラゴンの死に方にそぐわなくても。ルルベルはマリアナだけを主として、ドラゴンの愛を注ぎ続けた。ドラゴンの愛情の深いことよ。








《…そうかもなあ。ただ、俺としては納得がいかないが》






「結局はその時にならなきゃ分からないのよ。さて、黒帝シュヴァルツが到着したみたいよアストラル」








《…殺さないでくれよ》






「こういうのは殺す気でやるものよ。5割4分ぐらいで止めあげる」








《死ぬなよ、主…》








「さあ、うっ憤晴らしにやりますかねー!!」









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