異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。
44.裏切り者の鬼女
「…どうなってんだ?」
「アーロミスの娘は紛い物の主人だそうよ」
「へ?」
「まさかの裏切り者で、私が邪魔で邪魔で仕方がないそうよ」
ゲラゲラ笑えば、お兄ちゃんは何とも言えない目で私を見て大きくため息を吐いた。ヒステリー女、お兄ちゃんの登場にすら気づかない。やっぱり女傑とかウソだろ。よくこれで戦場に出て無事だったな。
「お前が邪魔ねぇ?それで時雨の魂を喚ばせたとは、女の考えることはやっぱり違うな」
「喚ばせた?」
「アイアが白状してな、家族や友人たちを人質にされてたんだとよ」
「ふぅん。それで、アイアとか教皇はどうしたの?」
「部下を呼んで保護と捕獲させてあるし、もう城に転移させておいた」
「さすが近衛筆頭。やることが違うわね」
呼んでってことは、物理的に呼んだんだろう。有能な部下を標的に移動魔術を展開して、強制的に連れてきた。風に愛されたお兄ちゃんだから出来ることだ、と私は思う。城に居るお兄ちゃんの部下が此処へ駆けつけてくるのも時間の問題かな。
「逃げられたら困るからな。で、コレはどうするべきだと思うよ?」
「私には分からないんだな、これが」
「…面倒くせぇことになったぞー」
「多分ね、この案件は私たちにはどうにも出来ないんだよ……」
誰が黒帝の婚約者が登場すると思った?誰も思っていなかった。私が言うのもアレだけど、もっと身分を弁えているって言うか公私を着けていると思っていた。黒帝、実は見る目がなかったのかねぇ。落ち込むか荒れるか、あぁどっちにしろ面倒臭い。
「――もう良いわ!アンタがやらないなら、私が殺るわ!どうせ調子に乗ってる小娘よ。簡単に殺れるわ」
《結論が出たようだぞ、依織よ》
《とんでもねぇ女だな。依織のこと、ナメてやがる》
《甘く見られているものだな》
《これで黒帝の婚約者とは。黒帝の目を疑う》
《…情けない。女の二面性に気付けないとはな》
酷い言い様だな、この山犬共。ヒステリー女には聞こえてないから良いものの、聞こえていたらきっとあの大きな鎌で、頭と体はサヨウナラさせられている筈だ。女傑っていうから剣を想像してたんだけど、死神が使いそうな大鎌を使うのか。
「死ねぇぇぇぇえええええ」
「はははっ、淑女らしからぬ叫びだぞ?可憐な顔も、目も当てられないな。鬼女みたいだ」
「お兄ちゃん、笑ってないでよ…」
凄みのある顔で私めがけて大鎌を振り上げるヒステリー女。うーん、隙が多すぎる。さてどうするか。下手に怪我をさせて、私やお兄ちゃんが不利になることは避けたい。シヴァ様にこの女は裏切り者だって言ったって、信じちゃくれない上に不利になるからな。
シヴァ様のようなタイプの恋する男っつうのは、本当に…。
「一発で仕留める!」
懐に潜り込んで、白の柄で鳩尾を殴った。カハッと空気が抜ける音が聞こえたかと思うと、気を失ったヒステリー女の体が、私に落ちかかって来るのを蹴飛ばして事なきを得たのだが、立ち尽くす紛い物も居るし、倒れたままのヒステリー女も居る。
「「どうするかなあ」」
未だ、解決策は無い。
「アーロミスの娘は紛い物の主人だそうよ」
「へ?」
「まさかの裏切り者で、私が邪魔で邪魔で仕方がないそうよ」
ゲラゲラ笑えば、お兄ちゃんは何とも言えない目で私を見て大きくため息を吐いた。ヒステリー女、お兄ちゃんの登場にすら気づかない。やっぱり女傑とかウソだろ。よくこれで戦場に出て無事だったな。
「お前が邪魔ねぇ?それで時雨の魂を喚ばせたとは、女の考えることはやっぱり違うな」
「喚ばせた?」
「アイアが白状してな、家族や友人たちを人質にされてたんだとよ」
「ふぅん。それで、アイアとか教皇はどうしたの?」
「部下を呼んで保護と捕獲させてあるし、もう城に転移させておいた」
「さすが近衛筆頭。やることが違うわね」
呼んでってことは、物理的に呼んだんだろう。有能な部下を標的に移動魔術を展開して、強制的に連れてきた。風に愛されたお兄ちゃんだから出来ることだ、と私は思う。城に居るお兄ちゃんの部下が此処へ駆けつけてくるのも時間の問題かな。
「逃げられたら困るからな。で、コレはどうするべきだと思うよ?」
「私には分からないんだな、これが」
「…面倒くせぇことになったぞー」
「多分ね、この案件は私たちにはどうにも出来ないんだよ……」
誰が黒帝の婚約者が登場すると思った?誰も思っていなかった。私が言うのもアレだけど、もっと身分を弁えているって言うか公私を着けていると思っていた。黒帝、実は見る目がなかったのかねぇ。落ち込むか荒れるか、あぁどっちにしろ面倒臭い。
「――もう良いわ!アンタがやらないなら、私が殺るわ!どうせ調子に乗ってる小娘よ。簡単に殺れるわ」
《結論が出たようだぞ、依織よ》
《とんでもねぇ女だな。依織のこと、ナメてやがる》
《甘く見られているものだな》
《これで黒帝の婚約者とは。黒帝の目を疑う》
《…情けない。女の二面性に気付けないとはな》
酷い言い様だな、この山犬共。ヒステリー女には聞こえてないから良いものの、聞こえていたらきっとあの大きな鎌で、頭と体はサヨウナラさせられている筈だ。女傑っていうから剣を想像してたんだけど、死神が使いそうな大鎌を使うのか。
「死ねぇぇぇぇえええええ」
「はははっ、淑女らしからぬ叫びだぞ?可憐な顔も、目も当てられないな。鬼女みたいだ」
「お兄ちゃん、笑ってないでよ…」
凄みのある顔で私めがけて大鎌を振り上げるヒステリー女。うーん、隙が多すぎる。さてどうするか。下手に怪我をさせて、私やお兄ちゃんが不利になることは避けたい。シヴァ様にこの女は裏切り者だって言ったって、信じちゃくれない上に不利になるからな。
シヴァ様のようなタイプの恋する男っつうのは、本当に…。
「一発で仕留める!」
懐に潜り込んで、白の柄で鳩尾を殴った。カハッと空気が抜ける音が聞こえたかと思うと、気を失ったヒステリー女の体が、私に落ちかかって来るのを蹴飛ばして事なきを得たのだが、立ち尽くす紛い物も居るし、倒れたままのヒステリー女も居る。
「「どうするかなあ」」
未だ、解決策は無い。
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