異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。
36.ルシエラSide
顔を上げた彼女の金色の瞳は、爛々と輝いていました。全てに腹を括ったと言えば良いのでしょうか。曇りのない金色の瞳。お兄様たちが持つその瞳は皇族の証。誰もを奮い立たせるその金の瞳は、とても魔性のモノの様に思えました。女性が持っている所を、初めて見たからかもしれませんが。
「明日、片す」
「「はっ!?」」
「早いなあ。明日つったら、もう数時間しかねぇぞ?ゆっくり休んだって、バチは当たらねぇし現状も変わらないだろうよ」
「お兄ちゃん、有余にかましてる暇ないよ。泉から穢れを取った時、まるで見ていたかのように奴等は侵入してきたんだ。その穢れに人員を割いていると勘違いしていたみたいだけどね?運よくお兄ちゃんと始音と終歌が居たから呆気なく終わったんだけど」
「そうは言ったってなあ。ノルエルハも子が生まれたから、呼ぶに呼べねえぞ?」
「あ、生まれたんだ。じゃあ、これが終わったらお祝いの品を送らないと。別にノルエルハは呼ばなくたって良いよ。始音と終歌、それからメギドが居れば問題ない」
「そこに俺も含んだとしても頭数は5だぞ?教皇派、あほみてぇに人員は多いぞ」
「――桜咲兄妹に敵う敵なし、だよ。余計なものは要らない。ただあの時の様に狩れば良い」
淡々と交わされるシキ様との会話。目覚めた翌日に戦場へ赴くとは、どういった精神を持てばそうなるのでしょうか。イオリ様の目は輝きを失っておらず、寧ろ喜色の色を灯しています。シヴァお兄様の傍仕えとして、功績を上げているウェルミスの一片を見たような気がします。
《気の強さ、というより戦を好むとは相変わらずだ》
《イオリを突き動かしているのは怒りではあるが、前を向くことを決めたんだろう。意志の強い所はグレイアス似か》
《怒りという面では俺等も同じ。主人を好き勝手にされちゃあ、俺等も黙ってられねぇよな》
「お前等も全力で暴れな。眠っていたとはいえ、覚えているんだろう?戦場の獲物の狩り方」
魔物タイプの犬だと、イオリ様に教えてもらいましたが彼等は何処からどう見ても神獣です。魔物だなんて以ての外。清らかな気配を持つ2頭の神獣は、イオリ様の恋人だった方の相棒だと言っていました。神獣を相棒にするなんて、とても人の成せることとは思えません。勿論良い意味で、です。イオリ様もそうですが、どんな精神力をしていたんでしょうか。
「そうは言ってもなあ」
「じゃあ、お兄ちゃんは留守番ね」
「いや行くけどよ!?なんで、そう死に急ぐようなことばかりするんだ?可愛いシエルとセリカが居るんだぜ?もっと、こう大人しくな」
「無理。大人しくとか無理だね。見ての通りだけど、今の私は腸が煮えくり返ってるの。教皇は許せない。絶許。死んでも楽になったと思わせてやらない」
「――シキ様、焚き付けてしまった私が言うのもなんですけれど、別に良いんじゃないでしょうか?」
「ルシエラ様?!何言ってるんですか、アンタ!!」
ふふ、と笑みが零れてしまいました。シキ様は、イオリ様と再会してからコロコロと表情が変わるようになりました。とても良いことだと思います。シキ様だけではありません。アルお兄様もシヴァお兄様も、とっても柔らかくなりました。騎士団や魔術師団も活気に溢れていると聞きました。私とマリベル様の件にしてもそうですが、何もかもイオリ様のおかげです。
強くて脆いイオリ様。私がイオリ様の何を知っているわけでもありませんが、一つ言えることがあります。
「イオリ様は強いですわ。この世界に認められた異世界の魔術師様ですもの。この世の定理を覆せるのは、イオリ様だけなのですから」
「…世界に、認められたの、私って」
「えぇ。イオリ様はもうこの世界の異物なんかじゃありません。あの泉を救ってくれたイオリ様だからこそ、神々の意志は貴女に向いたのです」
穢れに侵された私は眠っている間、神々がイオリ様に感謝し尽しても足りないぐらいだと騒いでいたのを知っています。伊達に女神の片翼を受け継いだ聖女やってませんから。創造神の泉は、神々にとって母と同じ。失うわけにもいかず、けれど穢れたままにしておくのもいかず。
神々の自由は、そこまで自由ではありませんからね。
「シキ様、私の願いをどうか叶えていただけませんか?死ぬ一歩手前なら、私でも引き上げられます。死なせはしません。そもそも、シキ様とイオリ様なら余裕で帰って来てくださりますよね」
「ルシエラ様、貴女って最高ね」
イオリ様の笑みがとても美しく、惚れてしまいそうになったのは此処だけの秘密です。異世界で奮っていたそのお力を、この世界にも見せつけてやってください。
「明日、片す」
「「はっ!?」」
「早いなあ。明日つったら、もう数時間しかねぇぞ?ゆっくり休んだって、バチは当たらねぇし現状も変わらないだろうよ」
「お兄ちゃん、有余にかましてる暇ないよ。泉から穢れを取った時、まるで見ていたかのように奴等は侵入してきたんだ。その穢れに人員を割いていると勘違いしていたみたいだけどね?運よくお兄ちゃんと始音と終歌が居たから呆気なく終わったんだけど」
「そうは言ったってなあ。ノルエルハも子が生まれたから、呼ぶに呼べねえぞ?」
「あ、生まれたんだ。じゃあ、これが終わったらお祝いの品を送らないと。別にノルエルハは呼ばなくたって良いよ。始音と終歌、それからメギドが居れば問題ない」
「そこに俺も含んだとしても頭数は5だぞ?教皇派、あほみてぇに人員は多いぞ」
「――桜咲兄妹に敵う敵なし、だよ。余計なものは要らない。ただあの時の様に狩れば良い」
淡々と交わされるシキ様との会話。目覚めた翌日に戦場へ赴くとは、どういった精神を持てばそうなるのでしょうか。イオリ様の目は輝きを失っておらず、寧ろ喜色の色を灯しています。シヴァお兄様の傍仕えとして、功績を上げているウェルミスの一片を見たような気がします。
《気の強さ、というより戦を好むとは相変わらずだ》
《イオリを突き動かしているのは怒りではあるが、前を向くことを決めたんだろう。意志の強い所はグレイアス似か》
《怒りという面では俺等も同じ。主人を好き勝手にされちゃあ、俺等も黙ってられねぇよな》
「お前等も全力で暴れな。眠っていたとはいえ、覚えているんだろう?戦場の獲物の狩り方」
魔物タイプの犬だと、イオリ様に教えてもらいましたが彼等は何処からどう見ても神獣です。魔物だなんて以ての外。清らかな気配を持つ2頭の神獣は、イオリ様の恋人だった方の相棒だと言っていました。神獣を相棒にするなんて、とても人の成せることとは思えません。勿論良い意味で、です。イオリ様もそうですが、どんな精神力をしていたんでしょうか。
「そうは言ってもなあ」
「じゃあ、お兄ちゃんは留守番ね」
「いや行くけどよ!?なんで、そう死に急ぐようなことばかりするんだ?可愛いシエルとセリカが居るんだぜ?もっと、こう大人しくな」
「無理。大人しくとか無理だね。見ての通りだけど、今の私は腸が煮えくり返ってるの。教皇は許せない。絶許。死んでも楽になったと思わせてやらない」
「――シキ様、焚き付けてしまった私が言うのもなんですけれど、別に良いんじゃないでしょうか?」
「ルシエラ様?!何言ってるんですか、アンタ!!」
ふふ、と笑みが零れてしまいました。シキ様は、イオリ様と再会してからコロコロと表情が変わるようになりました。とても良いことだと思います。シキ様だけではありません。アルお兄様もシヴァお兄様も、とっても柔らかくなりました。騎士団や魔術師団も活気に溢れていると聞きました。私とマリベル様の件にしてもそうですが、何もかもイオリ様のおかげです。
強くて脆いイオリ様。私がイオリ様の何を知っているわけでもありませんが、一つ言えることがあります。
「イオリ様は強いですわ。この世界に認められた異世界の魔術師様ですもの。この世の定理を覆せるのは、イオリ様だけなのですから」
「…世界に、認められたの、私って」
「えぇ。イオリ様はもうこの世界の異物なんかじゃありません。あの泉を救ってくれたイオリ様だからこそ、神々の意志は貴女に向いたのです」
穢れに侵された私は眠っている間、神々がイオリ様に感謝し尽しても足りないぐらいだと騒いでいたのを知っています。伊達に女神の片翼を受け継いだ聖女やってませんから。創造神の泉は、神々にとって母と同じ。失うわけにもいかず、けれど穢れたままにしておくのもいかず。
神々の自由は、そこまで自由ではありませんからね。
「シキ様、私の願いをどうか叶えていただけませんか?死ぬ一歩手前なら、私でも引き上げられます。死なせはしません。そもそも、シキ様とイオリ様なら余裕で帰って来てくださりますよね」
「ルシエラ様、貴女って最高ね」
イオリ様の笑みがとても美しく、惚れてしまいそうになったのは此処だけの秘密です。異世界で奮っていたそのお力を、この世界にも見せつけてやってください。
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