異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。

千絢

33.2日後の朝

まあ、倒れるだろうなとは思った。格好良くキメたから部屋で倒れてやろうと思ってたんだけど、ちょっと甘かったらしい。まさか、部屋を出てすぐに倒れるとは。格好悪いなあもう。倒れて翌々日の朝、私は清々しい気分で目を覚ましていた。およそ1日と半分寝ていた。それだけで、この体の穢れは全て浄化し尽した。








《甘かったの、主や》






《泉の穢れだけじゃなく、聖女と魔術師団長の穢れを引き受けたんだ。当然だろう》






《良かったですわ。イオも無事で、何よりです》






《穢れの臭いも取れたな、イオリ》






《…何で、こんなに大所帯なの?!》






そう、ベッドの周りには始音と終歌、アストラルとティエラ、そしてメギドが居る。メギドの言う通り大所帯だ。ただ、アストラルとティエラ、メギドは人型を取っているが頭数が多いことに違いは無い。しかし、流石竜王と竜妃だ。いつ見ても別嬪さんである。御美しい。ドラゴンの人型は皆美しいけど、群を抜いて美しいと思う。








「メギド、そうカッカするな。良いじゃないか、私を心配して来てくれたんだ」






《けどぉ!!》






「二匹は私の古くからの友人だし、アストラルとティエラは知ってるだろう?お前が警戒する必要なんてないんだよ」








《そうじゃなくて…》






笑ってメギドの頭を撫でた。ぷぅと頬を膨らませたメギドが愛おしい。父の形見だとお兄ちゃんが言った時、私は否定したけどそれを取り消そう。父の顔だけど、この子は私の相棒。愛しい。






《メギドは人間で言う童だからな。寂しいのさ、なあティエラ》




《ふふ、随分と心配していたのよ?イオが目を覚まさないせいね》




「知ってる。何も言わずに双子を任せて出て来たからな。心配かけてごめんね、メギド」






一変して今にも落涙しそうなメギドを抱き寄せる。小さな嗚咽が私の腕の中に消えていく。それを見たアストラルやティエラは微笑んでいるし、始音や終歌も微笑ましそうにメギドを見ている。年長組、さすが幼いものには優しいか。








「始音、終歌。弟分だ、可愛がってくれよ?」






《おいおい。そやつは竜の子だぞ、主よ。可愛がる暇なく成長するぞ》






「ふふ、私からすればこの子の成長はまだまだよ。それとも、私よりも双子と居たい?」






《そうだなー。どちらかと言えば、双子だな》






「あら。つれないこと言うのね、終歌」






《だってよ、お前は十分強いんだぜ?竜の子もいるしよ、何かあればそこの竜王や竜妃が黙ってないと俺は見ているんだ。どちらかと言えば、守り手のない双子の傍に居た方が俺等も有効活用されると思うんだが》






居場所がないって愚図ってたのは、一体どこの誰かしらねえ?ちゃっかりしてるわ。シエルとセリカの傍に、居場所を見出してるじゃない。まあ、始音と終歌の意見を尊重すると約束もしているし、許すも何もないけど。






「ま、あの子たちをずっと見て来たんだしそう思うよね。あとで連れて行ってあげるわ」






《許してくれるのか、主の傍を離れることを》






「許すも何も、私はお前たちの意見を尊重しているつもりなのね。いくらお前たちが時雨の相棒だったとしても、お前たちを私に縛りつけたくはない。それに、双子の傍に居てくれた方が私も嬉しいし」






《……ありがとう、主》






「良いのよ。そもそも、私たち契約を交わしているわけじゃないし?その主呼びも変えなさいな、知ってるでしょう私の名前を」








《依織》






「それでよろしい。さ、次の問題は……アストラルとティエラの主か」






はぁぁぁ、と全身の力が抜けた。やる気でねぇ。泣きながら眠ったメギドを布団に入れて、私はアストラルとティエラに目をやった。苦笑して遣る瀬無く首を振るな。止めてくれ。なんで面倒事ばかり起きるかねぇ。








引き金が私って言うのも気に食わないけど。当たり前の事をしただけなのにさ、まあポロっと要らないことも言っちゃったけども。あー、白帝とシヴァ様、その他諸々の気配が近づいてくる。何を喋れって言うんだ。特に喋ることもねーぞ。













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