異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。
15.抱きたくない情
だから、この世界でも愛されている。シエルとセリカほどでもないし、私たちが愛されているのは精霊だ。聖獣や神々たちにも愛されているわけではない。
目を閉じたお兄ちゃんは、深く呼吸してゆっくりと意識を沈ませていく。侵蝕されていく世界。お兄ちゃんの眼は何処まで見ているのだろう。侵蝕の感触に未だ慣れない。なんか、ドロっとしているわけじゃないんだけどなあ。
侵蝕の感触が分かったのか、みんなが揃って顔をしかめた。ゾワッとした、と後に白帝は言う。確かに初めての人はそう言うものだ。鳥肌が立つというか、身の毛がよだつというか。カラダにまで這入り込まれるような感覚だと、昔言っていた人がいる。
「……これが、シキのチカラ」
「暫く、お兄ちゃんはこのまま放置で」
「良いのかい?このままにしておいても」
「問題ないです。お兄ちゃんの事なんでグレイアスの遺体ついでに、教皇派の巣も探してきますよ」
気長に、というか今日中はかかると思うんでのんびり行きましょうよ。そう言って、私はお兄ちゃんの握っていた手を離して、背伸びをする。バキバキと気持ち良いぐらい骨が鳴った。
「――下衆な輩は、二度と悪さが出来ない様に潰してしまいましょう?」
私はにっこりと嗤う。甦ってくる戦場で過ごした感覚。身体中を巡る血液は沸騰し始める。あぁ、憎たらしい存在は消してしまうまで。家よりも戦場で過ごす方が長かった私たち兄妹。だから、温厚そうに見えるお兄ちゃんでも血の気は多い。それも勿論、父グレイアス譲りなのである。
渇いた唇を舐めた。
「イオ、お前って本当に俺側の人間だよな」
「あらやだシヴァ様ったら。私はわたしですよ。戦神と謳われる黒帝と同じようなタイプだなんて恐れ多い」
「いや、そっくりですよ。その嗤い方も、性格もね」
「ロベルトが言うんだから、相当だよねぇー」
「えぇ、魔術の使い方や剣術の太刀筋なんかも似てますよね」
「イオリなんか一緒に巡回日行くと、騎士と混ざって訓練だからなー。そこも似てる」
オイオイ、似てるだなんて言わないでくれよ。私は余計な情は持ちたくないのだよ。感情ってのは、後々面倒臭いモノだ。恋慕なんかは特に。だから、私は上司と部下の関係のままで居たいと望む。似てるだなんて言われたら、ヘンな情が湧いてきそうになる。
司書様の心配事が現実味を帯びそうで、なんか怖いなあ。これでも、あっちの魔術師と恋愛はしたことある身だ。あの時の感情はもう二度と要らない。もう欲しくない。
「やだなあ、まったく。シヴァ様の言う俺側ってのは雰囲気の話ですよねー。私とシヴァ様の魔術の使い方や剣術の太刀筋は全然違いますよ?」
「そうかぁ?」
ジェラール様は不服そうに言うが、そうである。魔術の使い方や剣術の太刀筋はまったくもって似てないものだ。シヴァ様の属性は炎。副属性として風だ。それに対して私は無属性で、存在する属性は全て使える。光と闇は不可能だけど。ありゃ、無理。この世界で使えるのは光の女神と魔王ぐらいだ。
「それはさておき、今日の各自の予定はどうなさるんですか?私はこのままドラゴンの所へ向かいますが」
「あ、そうだね。僕はロベルトと被害の確認と被害額の算出するけど、他のみんなは?」
「…えっと、ルシエラ様と泉の確認を行います」
「俺ン所は、被害の大きい所に騎士を派遣する予定だ。俺自身も城下には降りる予定で居る」
「すべての砦を確認する。抜け穴がないか確認させるつもりだ」
ということで、各自の予定を報告したところで緊急会議は終了。お兄ちゃんをそのまま放置するわけにもいかず、青の離宮へ行くマリベル様が一緒に連れて行くこととなった。ちなみに、新事実が発覚した。
青の離宮の地下に、神聖な泉があるのだという。嗚呼、なるほど。だからあんな上等な結界を張っていたのか。愛し子の住む場所でもあるけれど、それ以上に大事な神聖な泉がある。それに青の離宮はルシエラ様の、聖女の為の離宮だそうだ。
聖女。水に愛されて、否、創造神である女神の為だけに生まれた女児。その運命も如何なものかと私は思うなあ。
此処は、神に支配された世界だ。
目を閉じたお兄ちゃんは、深く呼吸してゆっくりと意識を沈ませていく。侵蝕されていく世界。お兄ちゃんの眼は何処まで見ているのだろう。侵蝕の感触に未だ慣れない。なんか、ドロっとしているわけじゃないんだけどなあ。
侵蝕の感触が分かったのか、みんなが揃って顔をしかめた。ゾワッとした、と後に白帝は言う。確かに初めての人はそう言うものだ。鳥肌が立つというか、身の毛がよだつというか。カラダにまで這入り込まれるような感覚だと、昔言っていた人がいる。
「……これが、シキのチカラ」
「暫く、お兄ちゃんはこのまま放置で」
「良いのかい?このままにしておいても」
「問題ないです。お兄ちゃんの事なんでグレイアスの遺体ついでに、教皇派の巣も探してきますよ」
気長に、というか今日中はかかると思うんでのんびり行きましょうよ。そう言って、私はお兄ちゃんの握っていた手を離して、背伸びをする。バキバキと気持ち良いぐらい骨が鳴った。
「――下衆な輩は、二度と悪さが出来ない様に潰してしまいましょう?」
私はにっこりと嗤う。甦ってくる戦場で過ごした感覚。身体中を巡る血液は沸騰し始める。あぁ、憎たらしい存在は消してしまうまで。家よりも戦場で過ごす方が長かった私たち兄妹。だから、温厚そうに見えるお兄ちゃんでも血の気は多い。それも勿論、父グレイアス譲りなのである。
渇いた唇を舐めた。
「イオ、お前って本当に俺側の人間だよな」
「あらやだシヴァ様ったら。私はわたしですよ。戦神と謳われる黒帝と同じようなタイプだなんて恐れ多い」
「いや、そっくりですよ。その嗤い方も、性格もね」
「ロベルトが言うんだから、相当だよねぇー」
「えぇ、魔術の使い方や剣術の太刀筋なんかも似てますよね」
「イオリなんか一緒に巡回日行くと、騎士と混ざって訓練だからなー。そこも似てる」
オイオイ、似てるだなんて言わないでくれよ。私は余計な情は持ちたくないのだよ。感情ってのは、後々面倒臭いモノだ。恋慕なんかは特に。だから、私は上司と部下の関係のままで居たいと望む。似てるだなんて言われたら、ヘンな情が湧いてきそうになる。
司書様の心配事が現実味を帯びそうで、なんか怖いなあ。これでも、あっちの魔術師と恋愛はしたことある身だ。あの時の感情はもう二度と要らない。もう欲しくない。
「やだなあ、まったく。シヴァ様の言う俺側ってのは雰囲気の話ですよねー。私とシヴァ様の魔術の使い方や剣術の太刀筋は全然違いますよ?」
「そうかぁ?」
ジェラール様は不服そうに言うが、そうである。魔術の使い方や剣術の太刀筋はまったくもって似てないものだ。シヴァ様の属性は炎。副属性として風だ。それに対して私は無属性で、存在する属性は全て使える。光と闇は不可能だけど。ありゃ、無理。この世界で使えるのは光の女神と魔王ぐらいだ。
「それはさておき、今日の各自の予定はどうなさるんですか?私はこのままドラゴンの所へ向かいますが」
「あ、そうだね。僕はロベルトと被害の確認と被害額の算出するけど、他のみんなは?」
「…えっと、ルシエラ様と泉の確認を行います」
「俺ン所は、被害の大きい所に騎士を派遣する予定だ。俺自身も城下には降りる予定で居る」
「すべての砦を確認する。抜け穴がないか確認させるつもりだ」
ということで、各自の予定を報告したところで緊急会議は終了。お兄ちゃんをそのまま放置するわけにもいかず、青の離宮へ行くマリベル様が一緒に連れて行くこととなった。ちなみに、新事実が発覚した。
青の離宮の地下に、神聖な泉があるのだという。嗚呼、なるほど。だからあんな上等な結界を張っていたのか。愛し子の住む場所でもあるけれど、それ以上に大事な神聖な泉がある。それに青の離宮はルシエラ様の、聖女の為の離宮だそうだ。
聖女。水に愛されて、否、創造神である女神の為だけに生まれた女児。その運命も如何なものかと私は思うなあ。
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