異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。
11.ドラゴン無傷捕獲作戦その2
蔦が、水が、風が、影があらゆるものがドラゴンを拘束しようと蠢く。
「うーん…」
「――イオリ殿、どうですかー?」
「どうだろう。現状最悪不利かなあ」
「えぇー」
下からオルエが呻く。どうするべきかねぇ、とドラゴンの眼の前で腕を組む。ドラゴンの正面に居る私はもちろん浮いている。浮くなんてどういった原理かは理解しがたいが、それよりも弱ったことにこのドラゴンはまだ子供だったということだ。
「強制的に成長させられた、つまりアレか。実験対象だったのねぇ可哀相に」
「どうするんですかぁぁぁぁあああ」
「大きめの魔封石の原石を用意しといて。一時的に眠らせて、とりあえずそれから考える」
ドラゴンと眼を合わせる。揺れている瞳は悲痛。痛みに堪えているような、現状に諦めているような。この世から消えたら良いとでさえ、思っているのだろうか。地面が揺れて、太い蔦がドラゴンの足に絡みつく。
絡んで、燃えて、絡んで、燃えて。触れれば燃える。水は蒸発し、風は火を煽る。どれだけの熱量を持っているのだろう。眼前に居る私でさえ汗をかいている。下に居るオルエが日焼けしていたらどうしようか。
「魔封石ぃ!?そんな代物、マリベル様の許可が無かったら持ち出せませんよぅ!?」
「何のための白帝よ!!上司をうまく使いなさい!!」
「うぇぇぇぇええ、無茶言わないで下さいよぅぅぅううう」
オルエ、逝ってくれ。魔力が動くのを感じる。オルエの魔力が動いて、消えた。オルエも諦めてくれたのだろう。ありがたいねぇ。こんな部下ってサイコー。
『ウェルミス、それ今回の報酬ね』
「まじかよ。この件の報酬は後にしてください。これ以上、被害を広げたくなかったら魔封石を早く送ってください」
頭に届く白帝の声。焦っているような声だ。焦り過ぎだ。ノルエルハから情報が流れたのだろうか。父の遺体の行方の話を。グレイアスの力はあってはならない。受け継いだ私が言うのもなんだけど、あれはだめだ。
『ウェルミス』
「白帝、早く決断を」
『はーっ。マリベルに怒られるの僕なんだから知ってる!?』
そう怒鳴るような諦めたような声と共に私の手元に、幼児の拳ほどの透明の原石が届いた。魔封石の原石だ。しかも上等。ラッキィー。それを握りしめて、私の魔力を流し込む。透明な原石の中で循環する私の魔力。
「――ありがとうございます、白帝」
竜心はドラゴンの心臓の上にあるウロコのことだ。それが、強く脈打ったのが空気の振動で分かった。時間がない。ドラゴンの、時間がない。天命ではない。天命ではない、戦死でもない、そんなドラゴンの死は認められない。輪廻から外れて、魔へと堕ちて行くのだ。
「静かに揺蕩う水面の――」
浮かぶ原石はドラゴンの額へ。
此処で、分つのだ。
――ドラゴンと異物を。
異物を原石へ。私の魔力が解放されて、ドラゴンに取り巻く。目を閉じて、全神経をドラゴンへ向ける。異物とドラゴン。ドラゴンと異物。異物。異物。異物。異物。
異物を原石へ。
「――我、全てを封ずる者」
赤黒い異物が原石へ流れていく。透明だった原石が赤黒く染まっていくのを眺めながら、私はドラゴンの動きを見つめていた。竜心の乱れが無くなり、叫びが消えていく。何故か。私の魔力が異物を引きずりだしているからだ。
「痛い思いをさせて申し訳ない」
大きなドラゴンは少しずつ小さくなって、人へ近いカタチへ移ろっていく。んんん?竜人!?シエルぐらいの大きさになった少年?少女?その性別不明の子供は、ぐったりと崩れ落ちた。
「えぇぇぇっぇえええええええええええ」
絶叫のもとはオルエである。子供を見て叫んでいる。荒れた地面に足をつけ、私もオルエの下へ近づいた。落ち着いた心音に、命の別状はなさそうだと安堵する。さて、これでドラゴン無傷捕獲作戦成功じゃね?
「至急、医者を王城へ!それから、騎士と魔術師たちに現状把握を頼むわ。黒帝やマリベル様、ジェラール様が戻るまでに終わらせておいて。書類は私が対処するから、こっちに回してくれて良いから。怪我人は軽傷以外の者として、それ以外の人は頼んだわ」
――桜咲依織、別名ウィルミス。
ここで一つ伝説を築きました。
「うーん…」
「――イオリ殿、どうですかー?」
「どうだろう。現状最悪不利かなあ」
「えぇー」
下からオルエが呻く。どうするべきかねぇ、とドラゴンの眼の前で腕を組む。ドラゴンの正面に居る私はもちろん浮いている。浮くなんてどういった原理かは理解しがたいが、それよりも弱ったことにこのドラゴンはまだ子供だったということだ。
「強制的に成長させられた、つまりアレか。実験対象だったのねぇ可哀相に」
「どうするんですかぁぁぁぁあああ」
「大きめの魔封石の原石を用意しといて。一時的に眠らせて、とりあえずそれから考える」
ドラゴンと眼を合わせる。揺れている瞳は悲痛。痛みに堪えているような、現状に諦めているような。この世から消えたら良いとでさえ、思っているのだろうか。地面が揺れて、太い蔦がドラゴンの足に絡みつく。
絡んで、燃えて、絡んで、燃えて。触れれば燃える。水は蒸発し、風は火を煽る。どれだけの熱量を持っているのだろう。眼前に居る私でさえ汗をかいている。下に居るオルエが日焼けしていたらどうしようか。
「魔封石ぃ!?そんな代物、マリベル様の許可が無かったら持ち出せませんよぅ!?」
「何のための白帝よ!!上司をうまく使いなさい!!」
「うぇぇぇぇええ、無茶言わないで下さいよぅぅぅううう」
オルエ、逝ってくれ。魔力が動くのを感じる。オルエの魔力が動いて、消えた。オルエも諦めてくれたのだろう。ありがたいねぇ。こんな部下ってサイコー。
『ウェルミス、それ今回の報酬ね』
「まじかよ。この件の報酬は後にしてください。これ以上、被害を広げたくなかったら魔封石を早く送ってください」
頭に届く白帝の声。焦っているような声だ。焦り過ぎだ。ノルエルハから情報が流れたのだろうか。父の遺体の行方の話を。グレイアスの力はあってはならない。受け継いだ私が言うのもなんだけど、あれはだめだ。
『ウェルミス』
「白帝、早く決断を」
『はーっ。マリベルに怒られるの僕なんだから知ってる!?』
そう怒鳴るような諦めたような声と共に私の手元に、幼児の拳ほどの透明の原石が届いた。魔封石の原石だ。しかも上等。ラッキィー。それを握りしめて、私の魔力を流し込む。透明な原石の中で循環する私の魔力。
「――ありがとうございます、白帝」
竜心はドラゴンの心臓の上にあるウロコのことだ。それが、強く脈打ったのが空気の振動で分かった。時間がない。ドラゴンの、時間がない。天命ではない。天命ではない、戦死でもない、そんなドラゴンの死は認められない。輪廻から外れて、魔へと堕ちて行くのだ。
「静かに揺蕩う水面の――」
浮かぶ原石はドラゴンの額へ。
此処で、分つのだ。
――ドラゴンと異物を。
異物を原石へ。私の魔力が解放されて、ドラゴンに取り巻く。目を閉じて、全神経をドラゴンへ向ける。異物とドラゴン。ドラゴンと異物。異物。異物。異物。異物。
異物を原石へ。
「――我、全てを封ずる者」
赤黒い異物が原石へ流れていく。透明だった原石が赤黒く染まっていくのを眺めながら、私はドラゴンの動きを見つめていた。竜心の乱れが無くなり、叫びが消えていく。何故か。私の魔力が異物を引きずりだしているからだ。
「痛い思いをさせて申し訳ない」
大きなドラゴンは少しずつ小さくなって、人へ近いカタチへ移ろっていく。んんん?竜人!?シエルぐらいの大きさになった少年?少女?その性別不明の子供は、ぐったりと崩れ落ちた。
「えぇぇぇっぇえええええええええええ」
絶叫のもとはオルエである。子供を見て叫んでいる。荒れた地面に足をつけ、私もオルエの下へ近づいた。落ち着いた心音に、命の別状はなさそうだと安堵する。さて、これでドラゴン無傷捕獲作戦成功じゃね?
「至急、医者を王城へ!それから、騎士と魔術師たちに現状把握を頼むわ。黒帝やマリベル様、ジェラール様が戻るまでに終わらせておいて。書類は私が対処するから、こっちに回してくれて良いから。怪我人は軽傷以外の者として、それ以外の人は頼んだわ」
――桜咲依織、別名ウィルミス。
ここで一つ伝説を築きました。
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