ルーチェ
53.「僕たちの可愛いルーチェの為ならば」
「ともかく、イゼベル姉上はアマルティア様を安全な所に」
「えぇ、勿論よ」
イゼベル姉上は麗しく笑いながらアマルティア様の手を握る。良いなぁ、私もアマルティア様の手を握りたい。アマルティア様の手って、ハリも良くて触り心地も良いんだよね。変態みたいなこと言ってるけど。
「ルゥ」
「メル兄様たちは帰られるんでしょう?」
「あぁ」
「――じゃ、さようなら」
空気が凍りついた。え、冗談だって。何で、メル兄様の額に青筋が立ってるの。ついに冗談も通じなくなったの?きょとんとして、メル兄様を見つめる私にレイ兄様は苦笑してメル兄様の肩を叩く。
「メル、冗談だってこと気付いてないの?」
「冗談を抜きにしてもイラっとしたんだ」
「残っても何もなさらないんなら、と思って言っただけですよ」
「ルゥ。それ、フォローにもなってないよ」
「えぇ?」
冗談にもなってなかったし、フォローにもならなかったらしい。お口にチャックしなければならないか。これ以上、メル兄様を怒らせても楽しくない。
「…まぁ良いだろう。次に会った時に持ち越してやる」
「根に持つんですね!」
「こら、ルゥ!!」
私の咄嗟のツッコミに、レイ兄様からの咄嗟の叱咤。うん、お口チャックしよう。かなーり面白くない。一発、メル兄様に殴られることとなったが自分でまいた種。黙っておく。
「それじゃあ、陛下。この小娘のこと頼んだぞ?」
「頼むも何もないだろう?コイツは、全てを受け入れて妥協して自己解決する。時折、こちらから言葉を投げかけ傍に居ればコイツは成り立つ」
「あらやだ、陛下ったら流石!」
「「…はぁ」」
それでも俺たちはルーチェを心配するよ、とレイ兄様は呟いた。言葉と音を操る私には聞こえたけれど、きっと陛下には届いてないだろう。
「…メルキゼデク様、レイヴァール様、陛下。それ以上、無駄に時間を過ごさせるなら先に出ますからね」
「先も何も、元から俺たちは単独行動だろうが」
「それもそうでした。では、お先に失礼します」
ニッコリと最高司書官の顔をしたグレイアイス兄上は、オリアスク兄上と一緒に私たちに背を向けた。次に会う時は、アマルティア様が成人なされた時だ。それか、アマルティア様が召集を掛けた時。
それ以外で会うとなれば、私たちは敵か味方か。二つの選択の一つになるのだろう。エノクの民という同胞と言えど、敵となれば躊躇いなく殺し合うのだろう。
「僕たちも行きますか、メル」
「…あぁ、帰るか」
「良いですか、ルゥ。陛下たちに迷惑を掛けない様に、殺る時は徹底的に、僕たちが教えてきたことを忘れない様にね」
「レイ兄様、心配し過ぎですよ。何かあったら、助けてくださいね」
「勿論、僕たちの可愛いルーチェの為ならば」
「メル兄様、レイ兄様、体に気を付けて」
「ルゥも」
私の頭を荒っぽく撫でて、メル兄様とレイ兄様は惚れ惚れとする様な笑みを浮かべてふっと消えた。駄目じゃないか、こんな場所で空間を触るなんて。
「で、陛下」
「なんだ」
「カッコ良く『俺の眼を掻い潜ったか』って言ってたけど、実のところ何なわけ?侵入者でもないでしょ、ほら吐きなよ」
侵入者の類ではない筈だ。というのも、匂った魔力に敵意を感じることが出来なかったのだ。魔力には敏感な方だけど、メル兄様やレイ兄様が気付かない筈がない。
「見事な演出でしたねー、とは言えないけど何?」
「…妃候補に、居るんだよ」
「え?聞こえない」
「――――妃候補に危険人物が居るんだよ!!」
悲痛な叫びが木霊となって響いた。
「えぇ、勿論よ」
イゼベル姉上は麗しく笑いながらアマルティア様の手を握る。良いなぁ、私もアマルティア様の手を握りたい。アマルティア様の手って、ハリも良くて触り心地も良いんだよね。変態みたいなこと言ってるけど。
「ルゥ」
「メル兄様たちは帰られるんでしょう?」
「あぁ」
「――じゃ、さようなら」
空気が凍りついた。え、冗談だって。何で、メル兄様の額に青筋が立ってるの。ついに冗談も通じなくなったの?きょとんとして、メル兄様を見つめる私にレイ兄様は苦笑してメル兄様の肩を叩く。
「メル、冗談だってこと気付いてないの?」
「冗談を抜きにしてもイラっとしたんだ」
「残っても何もなさらないんなら、と思って言っただけですよ」
「ルゥ。それ、フォローにもなってないよ」
「えぇ?」
冗談にもなってなかったし、フォローにもならなかったらしい。お口にチャックしなければならないか。これ以上、メル兄様を怒らせても楽しくない。
「…まぁ良いだろう。次に会った時に持ち越してやる」
「根に持つんですね!」
「こら、ルゥ!!」
私の咄嗟のツッコミに、レイ兄様からの咄嗟の叱咤。うん、お口チャックしよう。かなーり面白くない。一発、メル兄様に殴られることとなったが自分でまいた種。黙っておく。
「それじゃあ、陛下。この小娘のこと頼んだぞ?」
「頼むも何もないだろう?コイツは、全てを受け入れて妥協して自己解決する。時折、こちらから言葉を投げかけ傍に居ればコイツは成り立つ」
「あらやだ、陛下ったら流石!」
「「…はぁ」」
それでも俺たちはルーチェを心配するよ、とレイ兄様は呟いた。言葉と音を操る私には聞こえたけれど、きっと陛下には届いてないだろう。
「…メルキゼデク様、レイヴァール様、陛下。それ以上、無駄に時間を過ごさせるなら先に出ますからね」
「先も何も、元から俺たちは単独行動だろうが」
「それもそうでした。では、お先に失礼します」
ニッコリと最高司書官の顔をしたグレイアイス兄上は、オリアスク兄上と一緒に私たちに背を向けた。次に会う時は、アマルティア様が成人なされた時だ。それか、アマルティア様が召集を掛けた時。
それ以外で会うとなれば、私たちは敵か味方か。二つの選択の一つになるのだろう。エノクの民という同胞と言えど、敵となれば躊躇いなく殺し合うのだろう。
「僕たちも行きますか、メル」
「…あぁ、帰るか」
「良いですか、ルゥ。陛下たちに迷惑を掛けない様に、殺る時は徹底的に、僕たちが教えてきたことを忘れない様にね」
「レイ兄様、心配し過ぎですよ。何かあったら、助けてくださいね」
「勿論、僕たちの可愛いルーチェの為ならば」
「メル兄様、レイ兄様、体に気を付けて」
「ルゥも」
私の頭を荒っぽく撫でて、メル兄様とレイ兄様は惚れ惚れとする様な笑みを浮かべてふっと消えた。駄目じゃないか、こんな場所で空間を触るなんて。
「で、陛下」
「なんだ」
「カッコ良く『俺の眼を掻い潜ったか』って言ってたけど、実のところ何なわけ?侵入者でもないでしょ、ほら吐きなよ」
侵入者の類ではない筈だ。というのも、匂った魔力に敵意を感じることが出来なかったのだ。魔力には敏感な方だけど、メル兄様やレイ兄様が気付かない筈がない。
「見事な演出でしたねー、とは言えないけど何?」
「…妃候補に、居るんだよ」
「え?聞こえない」
「――――妃候補に危険人物が居るんだよ!!」
悲痛な叫びが木霊となって響いた。
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