ルーチェ
12.「聞きたくなかったんだけどナー」
「だから、お前が良いんだけどな」
「彩帝国って、否定してるけど皇位争いしてる最中だよね?」
「…まぁな」
「他国からしたら、一大事にもなり兼ねない問題だからね?ただえさえ、この国は大きいのに。その真っ只中で、皇妃とかなんとか言ってる暇なくない?」
「暇などないな。俺自身、執務に縛られて1週間ほど缶詰を喰らっている」
「でしょう?それなのに皇妃とか言うのは馬鹿らしいことだよ。女にかまける皇帝陛下なんて、民たちは求めてないし」
「お前、結構ズバッと言うよな」
「此処、私と千景君しかいないからね」
合わせた額をそのままに、私たちは声を出さずに笑う。此処には私たちしか居ない。そのことが懐かしくて、嬉しくて、愛おしい。
様々な感情が心の中で交差する。
地面についていた手を、ゆっくりと絡ませ合う。
互いの体温が交わって、重なって行く。淡く温かい。転生して、ずっと、ずっと求め続けていたモノ。
「真夜」
「なぁに」
「此処から出ても、お前は俺の傍に居てくれるか?」
「貴方が望むのなら、今度こそ」
もう二度と失いたくない。
もう二度と、どんなカタチであろうとも彼の前から消えたくなかった。
「あぁ、良かった。もう、居なくならないでくれよ」
「うん、居なくならないよ」
そして、彼はほっとしたように微笑んで目を閉じた。ゆっくりと抜けていく千景君の力。大きな身体が私に凭れるように雪崩掛かってくる。
「…千景君?」
どうしたんだろう、そう思うけど彼は答えない。寝ているのか、気を失っているのか。恐らく、後者だろう。医学を齧っているわけじゃないから、詳しいことは分からないけど。
しかし、これではどうにもならない。そろそろ、夜鷹姫が出してくれると嬉しいんだけどな。千景君を寝台に寝かせてあげたいし。
〈呼んだかしら、真夜〉
「ねぇ、夜鷹姫」
〈主人様ったら気を失ったの?〉
「やっぱり、気を失ってるのね。眠ったのかと思ったんだけど」
 〈あ、主人様ね、呪いが掛かってるの〉
 「…は?」
聞こえてくる声は夜鷹姫のものだ。私の思いが通じたんだろうか、だとすれば良かった。此処から出してもらおう。
そう思って会話を続ければ、何ということか。予測していない返答が返ってきた。千景君を抱き抱えたまま私は、呆然とした声で呟く。
 今、この耳は何という言葉を聴いたのだ?
「彩帝国って、否定してるけど皇位争いしてる最中だよね?」
「…まぁな」
「他国からしたら、一大事にもなり兼ねない問題だからね?ただえさえ、この国は大きいのに。その真っ只中で、皇妃とかなんとか言ってる暇なくない?」
「暇などないな。俺自身、執務に縛られて1週間ほど缶詰を喰らっている」
「でしょう?それなのに皇妃とか言うのは馬鹿らしいことだよ。女にかまける皇帝陛下なんて、民たちは求めてないし」
「お前、結構ズバッと言うよな」
「此処、私と千景君しかいないからね」
合わせた額をそのままに、私たちは声を出さずに笑う。此処には私たちしか居ない。そのことが懐かしくて、嬉しくて、愛おしい。
様々な感情が心の中で交差する。
地面についていた手を、ゆっくりと絡ませ合う。
互いの体温が交わって、重なって行く。淡く温かい。転生して、ずっと、ずっと求め続けていたモノ。
「真夜」
「なぁに」
「此処から出ても、お前は俺の傍に居てくれるか?」
「貴方が望むのなら、今度こそ」
もう二度と失いたくない。
もう二度と、どんなカタチであろうとも彼の前から消えたくなかった。
「あぁ、良かった。もう、居なくならないでくれよ」
「うん、居なくならないよ」
そして、彼はほっとしたように微笑んで目を閉じた。ゆっくりと抜けていく千景君の力。大きな身体が私に凭れるように雪崩掛かってくる。
「…千景君?」
どうしたんだろう、そう思うけど彼は答えない。寝ているのか、気を失っているのか。恐らく、後者だろう。医学を齧っているわけじゃないから、詳しいことは分からないけど。
しかし、これではどうにもならない。そろそろ、夜鷹姫が出してくれると嬉しいんだけどな。千景君を寝台に寝かせてあげたいし。
〈呼んだかしら、真夜〉
「ねぇ、夜鷹姫」
〈主人様ったら気を失ったの?〉
「やっぱり、気を失ってるのね。眠ったのかと思ったんだけど」
 〈あ、主人様ね、呪いが掛かってるの〉
 「…は?」
聞こえてくる声は夜鷹姫のものだ。私の思いが通じたんだろうか、だとすれば良かった。此処から出してもらおう。
そう思って会話を続ければ、何ということか。予測していない返答が返ってきた。千景君を抱き抱えたまま私は、呆然とした声で呟く。
 今、この耳は何という言葉を聴いたのだ?
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
37
-
-
969
-
-
0
-
-
26950
-
-
140
-
-
841
-
-
516
-
-
755
-
-
63
コメント