ルーチェ
07.「モヤシ系の王子様に遭遇」
「大変だったな、ルーチェ」
「いえ、私は何も出来ていませんから」
「謙遜するな。お前は、1人でアマルティア様を此処まで連れて来たんだ」
「それが、王の命令だったのです。彼の下へ届けろと」
「ルーチェ、随分と疲れているな」
当たり前だ。不眠不休で此処まで来たに等しいんだからな。淡々と交わす会話に、カイル兄上に誘導されてアマルティア様を寝かすことが出来る部屋に着いた。
「アマルティア!!」
扉を開けると同時に出て来たのは、眩いほどの金髪、悲しみに満ちた碧眼だった。身長はざっと170センチ後半の細身。
私は失礼に当たらない程度で観察して頭を下げた。多分、この人がアマルティア様の婚約者である彩牙翔陽様だろう。
国外に出ることが少ない私は、他国の王家や貴族の顔と名前が一致しない。仕えているアマルティア様の婚約者と言えど、詳しくはないのだ。まず、興味がない。他国の人間に興味がないのも、エノクの民の特徴の一つだ。
「翔陽様、落ち着きなされ。今は、王女の母君の術で眠っておられるだけです」
「カイル!どういうことだ!!」
「まずはアマルティア様を寝台に。話はそれからですよ」
流石、カイル兄上。ガーゴイルというのは気性が荒い。カイル兄上も凄く気性が荒い。普段は優しいんだけど、スイッチが入ったら一溜まりもない。そのことを翔陽様もご存じなのだろう。何か言いたそうな顔をして、すぐに黙り込んだ。
「ルーチェ、奥に寝台があるから」
「はい。翔陽様、御前失礼します」
奥にある寝台にアマルティア様を寝かせる。放射状に散らばった黒髪。砂埃で汚れているから、あとで拭かなければ。それから、起きてもらわないと。それから、それから、それから――
「ルーチェ?」
「…ぁあ、」
カイル兄上の訝しむ声で立ち上がった。いつまでも、こんなことをしている場合じゃない。伝えなければならないことはたくさんあるんだ。
「カイル兄上、休んでいる暇などありませんわ」
「どうしたんだ、いきなり」
「私のすべきことを思い出しただけです」
「恐ろしい顔で笑うな」
そうだ。私には休んでいる暇などない。
休む暇があるなら、その時間をジューダス家を潰すことに費やしたい。そう微笑みながら、私は乱れた服を整える。
「案内しよう。翔陽様はいかがなされる?」
「僕も話を聞こう。離れている合間に、アマルティアは目を覚ますと思うかい」
「暫くは眠り続けましょう。明日か明後日には、目覚める筈です」
アマルティア様の頬を一撫でした第三皇子は、私とカイル兄上の顔を見て頷いた。行こうということだろう。
良かった、アマルティア様の婚約者が傍若無人でなくて。
「いえ、私は何も出来ていませんから」
「謙遜するな。お前は、1人でアマルティア様を此処まで連れて来たんだ」
「それが、王の命令だったのです。彼の下へ届けろと」
「ルーチェ、随分と疲れているな」
当たり前だ。不眠不休で此処まで来たに等しいんだからな。淡々と交わす会話に、カイル兄上に誘導されてアマルティア様を寝かすことが出来る部屋に着いた。
「アマルティア!!」
扉を開けると同時に出て来たのは、眩いほどの金髪、悲しみに満ちた碧眼だった。身長はざっと170センチ後半の細身。
私は失礼に当たらない程度で観察して頭を下げた。多分、この人がアマルティア様の婚約者である彩牙翔陽様だろう。
国外に出ることが少ない私は、他国の王家や貴族の顔と名前が一致しない。仕えているアマルティア様の婚約者と言えど、詳しくはないのだ。まず、興味がない。他国の人間に興味がないのも、エノクの民の特徴の一つだ。
「翔陽様、落ち着きなされ。今は、王女の母君の術で眠っておられるだけです」
「カイル!どういうことだ!!」
「まずはアマルティア様を寝台に。話はそれからですよ」
流石、カイル兄上。ガーゴイルというのは気性が荒い。カイル兄上も凄く気性が荒い。普段は優しいんだけど、スイッチが入ったら一溜まりもない。そのことを翔陽様もご存じなのだろう。何か言いたそうな顔をして、すぐに黙り込んだ。
「ルーチェ、奥に寝台があるから」
「はい。翔陽様、御前失礼します」
奥にある寝台にアマルティア様を寝かせる。放射状に散らばった黒髪。砂埃で汚れているから、あとで拭かなければ。それから、起きてもらわないと。それから、それから、それから――
「ルーチェ?」
「…ぁあ、」
カイル兄上の訝しむ声で立ち上がった。いつまでも、こんなことをしている場合じゃない。伝えなければならないことはたくさんあるんだ。
「カイル兄上、休んでいる暇などありませんわ」
「どうしたんだ、いきなり」
「私のすべきことを思い出しただけです」
「恐ろしい顔で笑うな」
そうだ。私には休んでいる暇などない。
休む暇があるなら、その時間をジューダス家を潰すことに費やしたい。そう微笑みながら、私は乱れた服を整える。
「案内しよう。翔陽様はいかがなされる?」
「僕も話を聞こう。離れている合間に、アマルティアは目を覚ますと思うかい」
「暫くは眠り続けましょう。明日か明後日には、目覚める筈です」
アマルティア様の頬を一撫でした第三皇子は、私とカイル兄上の顔を見て頷いた。行こうということだろう。
良かった、アマルティア様の婚約者が傍若無人でなくて。
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