犬神の花嫁
22
酒呑童子との戦いから2日間寝ちぎった私は、痛む体を押さえながら教室に来ていた。打撲による熱も下がったし、あとは時間が治してくれるのを待つだけだ。えーっと、関西では日にち薬って言うんだっけ?
「おはよー」
「あっ、タマちゃん!?起きてきて良いの!?」
「良いの良いの。打撲だけだしね」
「お、タマ。おはよーさん、体はええんか?」
「一宮に気遣われるの、なんか変な感じがするけど、ありがとう」
「変な感じってなあ…」
いつものように、今までのように一宮に抱えられている日和。そんな日和の大きな目から、ポロポロと涙が溢れ落ちた。宝石のようだと思いながら、手を伸ばしてくる日和を受け止め抱き締める。
「タマちゃんっ、タマちゃんっ」
「ただいま、ひよ。ちゃぁーんと帰ってきたよ」
「うんっ、おかえりっ」
「もう大丈夫だから、泣かないで。可愛い大きな目が溶けちゃうよ」
「タマちゃぁん」
「ふふ、ひよ、ありがとう」
ぎゅうぎゅうと抱き締めあっていたら、他の女の子たちも恐る恐ると抱きついてきた。これが、妖男子たちが守りたかったもの。これが、私たちが守ってきたもの。やべ、博愛精神?芽生えてきそう。みんな、愛しいってか。
「なにこの団子」
「花嫁の団子や。微笑ましかろ?」
「微笑まし…?俺には分からないけど、アイツ起きてきたんだ」
「そうみたいやな」
眠そうな犬っこが教室の入り口から、私たちを見ていた。そういやコイツ等、私が戦ってるときにのんきに昔話してたな。私、知ってるんだぞ。
「ーータマちゃん、あのね、ありがとう!!」
「え?」
「悪い奴から助けてくれて、皆を連れて帰って来てくれて、ありがとう!!」
「あ"ーもう、可愛いなあ。花嫁ほんっと可愛い。だから、止められないのよねー。あー可愛い」
「は?」
「愛して愛されている花嫁はね、ほんっとに可愛いの。だから、私たちは悪い奴等と戦うのを厭わない。その魂の眩さに焦がれて、守るために全力を尽くす。妖男子たちは見たと思うけど、協力者のみんな、嬉々として帰って行ったでしょ?」
「確かに、すんげー嬉しそうだったかも」
「テンション高かったよな」
「花嫁たちを守れたからだよ。花嫁の喜びは、私たちにとって最高の喜びなんだ。あー、花嫁まじ可愛い」
んふっと殺しきれなかった笑みが溢れた。ぎゅうぎゅうと寄ってくる女の子たちが愛しい。生きてて良かった。帰って来れて良かった。
「よし、区切りがついたところでお客さんだよー」
「うわっ、時雨先生、居ったんかいな」
「ずっと居たよ。入っておいでー」
ニコニコ笑う時雨先生の言葉と同時に、教室に入ってきたのは小学生ぐらいの男の子と女の子。真っ赤な髪をした精悍な顔立ちをした男の子も、真っ白の髪をした女の子も、私には見覚えがありすぎた。
「あらあら」
「タマちゃん知り合い?」
「まあね」
「自己紹介してね」
「斗鬼」
「祐希です」
それだけかい?と時雨先生が首をかしげたけど、彼等は時雨先生を見ることなく私に近付いてきた。女の子たちが私の背後に回り、妖男子たちは警戒心を剥き出しにする。
「約束」
「うん、覚えてるよ」
「ありがとうって、言ってなかったから」
 
「そうだったかな?でも、こんなに早いとは思ってもなかったよ」
「会いたかったんだ。だから、神様にダメもとで願ってみた。ら、なんか、この姿で会えることになった」
「ダメもとでって。でも、会いに来てくれてありがとね。これから初等部に通うの?」
真っ赤な髪と真っ白の髪を撫でた。柔らかなそれ等に、先程まで感じていたものとはまた違う愛しさを感じた。多分、幼かった犬っこと一緒に居たときの愛しさだ。
「いや、僕たちは父上、嵬鬼様の世話になるんだ。だから、嵬鬼様の元でたくさん学んで、強くなる」
「あの嵬鬼様、ね。奥方は穏やかな優しい人だったと思うし、嵬鬼様に負けないように頑張ってね」
「あぁ。そういえば、嵬鬼様がまた酒盛りをしようと。飲めるのか?」
「飲めないこともないけど、あの方と酒盛りをしたら必ず喧嘩になるからなあ」
「また文を寄越すと言っていた」
「分かった。届き次第燃やすから大丈夫」
「何がだ!?」
「あ、お迎えが来たみたいだよ。大事にされてるじゃん、斗鬼、祐希」
「大事にというか、監視では?」
「そんなこと言うと、嵬鬼様と奥方に怒られるわよ」
「そう、か?」
「また何かあったらいらっしゃいな。嵬鬼様、厳しいけど頑張ってね」
「あぁ、ありがとう」
斗鬼が祐希の手を握って、教室を出ていこうとして、思い出したように振り返ったかと思うと、ニヤリと笑って出ていった。
「ーー花嫁、悪かったな」
やっぱり全部覚えてるものなんだなあ。いや、彼がそう願ったのか。神様がそれを戒めとして残したのか。嵬鬼様も粋なことをするものだ。
「タマ、説明」
「御先さん、尻尾!!尻尾出てる!!」
「おはよー」
「あっ、タマちゃん!?起きてきて良いの!?」
「良いの良いの。打撲だけだしね」
「お、タマ。おはよーさん、体はええんか?」
「一宮に気遣われるの、なんか変な感じがするけど、ありがとう」
「変な感じってなあ…」
いつものように、今までのように一宮に抱えられている日和。そんな日和の大きな目から、ポロポロと涙が溢れ落ちた。宝石のようだと思いながら、手を伸ばしてくる日和を受け止め抱き締める。
「タマちゃんっ、タマちゃんっ」
「ただいま、ひよ。ちゃぁーんと帰ってきたよ」
「うんっ、おかえりっ」
「もう大丈夫だから、泣かないで。可愛い大きな目が溶けちゃうよ」
「タマちゃぁん」
「ふふ、ひよ、ありがとう」
ぎゅうぎゅうと抱き締めあっていたら、他の女の子たちも恐る恐ると抱きついてきた。これが、妖男子たちが守りたかったもの。これが、私たちが守ってきたもの。やべ、博愛精神?芽生えてきそう。みんな、愛しいってか。
「なにこの団子」
「花嫁の団子や。微笑ましかろ?」
「微笑まし…?俺には分からないけど、アイツ起きてきたんだ」
「そうみたいやな」
眠そうな犬っこが教室の入り口から、私たちを見ていた。そういやコイツ等、私が戦ってるときにのんきに昔話してたな。私、知ってるんだぞ。
「ーータマちゃん、あのね、ありがとう!!」
「え?」
「悪い奴から助けてくれて、皆を連れて帰って来てくれて、ありがとう!!」
「あ"ーもう、可愛いなあ。花嫁ほんっと可愛い。だから、止められないのよねー。あー可愛い」
「は?」
「愛して愛されている花嫁はね、ほんっとに可愛いの。だから、私たちは悪い奴等と戦うのを厭わない。その魂の眩さに焦がれて、守るために全力を尽くす。妖男子たちは見たと思うけど、協力者のみんな、嬉々として帰って行ったでしょ?」
「確かに、すんげー嬉しそうだったかも」
「テンション高かったよな」
「花嫁たちを守れたからだよ。花嫁の喜びは、私たちにとって最高の喜びなんだ。あー、花嫁まじ可愛い」
んふっと殺しきれなかった笑みが溢れた。ぎゅうぎゅうと寄ってくる女の子たちが愛しい。生きてて良かった。帰って来れて良かった。
「よし、区切りがついたところでお客さんだよー」
「うわっ、時雨先生、居ったんかいな」
「ずっと居たよ。入っておいでー」
ニコニコ笑う時雨先生の言葉と同時に、教室に入ってきたのは小学生ぐらいの男の子と女の子。真っ赤な髪をした精悍な顔立ちをした男の子も、真っ白の髪をした女の子も、私には見覚えがありすぎた。
「あらあら」
「タマちゃん知り合い?」
「まあね」
「自己紹介してね」
「斗鬼」
「祐希です」
それだけかい?と時雨先生が首をかしげたけど、彼等は時雨先生を見ることなく私に近付いてきた。女の子たちが私の背後に回り、妖男子たちは警戒心を剥き出しにする。
「約束」
「うん、覚えてるよ」
「ありがとうって、言ってなかったから」
 
「そうだったかな?でも、こんなに早いとは思ってもなかったよ」
「会いたかったんだ。だから、神様にダメもとで願ってみた。ら、なんか、この姿で会えることになった」
「ダメもとでって。でも、会いに来てくれてありがとね。これから初等部に通うの?」
真っ赤な髪と真っ白の髪を撫でた。柔らかなそれ等に、先程まで感じていたものとはまた違う愛しさを感じた。多分、幼かった犬っこと一緒に居たときの愛しさだ。
「いや、僕たちは父上、嵬鬼様の世話になるんだ。だから、嵬鬼様の元でたくさん学んで、強くなる」
「あの嵬鬼様、ね。奥方は穏やかな優しい人だったと思うし、嵬鬼様に負けないように頑張ってね」
「あぁ。そういえば、嵬鬼様がまた酒盛りをしようと。飲めるのか?」
「飲めないこともないけど、あの方と酒盛りをしたら必ず喧嘩になるからなあ」
「また文を寄越すと言っていた」
「分かった。届き次第燃やすから大丈夫」
「何がだ!?」
「あ、お迎えが来たみたいだよ。大事にされてるじゃん、斗鬼、祐希」
「大事にというか、監視では?」
「そんなこと言うと、嵬鬼様と奥方に怒られるわよ」
「そう、か?」
「また何かあったらいらっしゃいな。嵬鬼様、厳しいけど頑張ってね」
「あぁ、ありがとう」
斗鬼が祐希の手を握って、教室を出ていこうとして、思い出したように振り返ったかと思うと、ニヤリと笑って出ていった。
「ーー花嫁、悪かったな」
やっぱり全部覚えてるものなんだなあ。いや、彼がそう願ったのか。神様がそれを戒めとして残したのか。嵬鬼様も粋なことをするものだ。
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