犬神の花嫁

千絢

02

「はーい、おはよー。今日は新しい子を紹介するよー」








「新しい子?」








「昨日、入学式と進学式してんのに?」








「しかも女だなー。誰の嫁だよ」










呼んだら、入ってきてって言われて扉の前に居る。喋るのは男子…いや、妖たち。『誰の嫁だよ』って言われても、誰の嫁でもねぇよ。










「栫井さーん、入ってきてー」








「かこい?聞いたことねーぞ?」








「一般生徒から此処にって変やなあ」








「誰の嫁でもねぇのか?何で来たんだ?」










呼ばれたけど、入る前から文句言われたら入りたくないよね。私だって、来たくて来たわけじゃないし。終宵さんに無理矢理されたんだから、しゃーなしだよ、これ。諦めたら、私の心は平穏を取り戻す。そう、諦めたら。










「栫井環妃です。誰の花嫁でもありません。その辺に居た、元一般生徒です。諸事情により移動になりました。よろしくお願いします」










諦めたらこれだよ。私、無敵。視線が痛いけど、耐えれないほどでもないし。お姉様がた女先輩に比べたら屁でもないわ。教室内を、さりげなく見渡すと目があった。










「一般生徒とか嘘やん。お前、栫井って名字やったんやな」








よっ!とにこやかに手を上げたのは、赤い髪をした見慣れた男。その男の膝に乗る金髪のビグドールの様な幼いかんばせの少女。その少女は、私とついこの前まで同じクラスだった親友というべき存在だ。










「日和、一宮…」








「なんや、タマもついにこっち来たんか」








「ついにってなんだコラ。タマって呼んだら、てめぇの角をへし折るぞ」








「え?日和のお守りやろ?へし折られる前に、お前さんの首折ったるわ」








「死にさらせ、鬼っころが」








「おーお怖い怖い。犬っころみたいに、鬼っころ言うん止めてくれんか?俺、一応此処でNo.3なんやけど」








「ふん。3位止まりか、鬼っころ」










私から東雲日和しののめ ひよりをかっさらっていった、この関西弁の男が嫌いで嫌いで仕方がない。一宮嵬いちみや かい、鬼だ。しかも鬼一族の次期頭領。ちなみに、余談だが殴り合い済みである。










「あーのー、知り合いかな?」








「殴り合った仲っす」








「余計なこと言うなや」








「うん、知り合いがいるなら良いかな。これから仲良くしてあげてね、じゃあ朝のホームルームは終わり!」










そそくさと出て行った時雨先生。いや、私の席はどこだよ。って、私、教壇の上から一宮と言いあってたのか。恥ずかしい。もう帰りたい。








「タマちゃん、タマちゃん」








「あぁ、日和…。進学式に居なかったから、ついにとは思ってたの。でも会えて良かった」








「ひよもだよ。タマちゃんの席、ひよの隣ね」








「空いてるなら座らせてもらうわ」










無表情がデフォルトの日和に、手招きされて私は日和の隣にーーー正確には、一宮の隣に座った。日和の赤みの強い茶色い瞳が、嬉しそうな色を灯す。 あぁ、可愛い。日和、可愛い。










「…あれ誰?一宮さんに啖呵切ってた人と別人じゃん」








「てか、一宮さんに啖呵切るとかありえねーよ」








「あら、わたくしたちからすれば大歓迎なですわ。ねぇ?」








「うんうん。あんな子、滅多にいないからねー。誰の花嫁でもないみたいだけど、どうするのかな」








斎火いみびさんに指示を仰ぐしかありませんわ」








「そうですね、そう言えば斎火さんは御先おさきさんとお仕事ですか?」








「えぇ。午前中には戻るそうよ」










日和と話をしながら周りに耳を澄ませる。ふむ、一宮もNo.3なだけあるらしく、妖たちからは敬われてるっぽい。けど、それ以上に敬われてるのは斎火って奴か。いみび、って名字こそ聞いたことがない。










裏世界妖世界で聞いたことがないのは、隠されているからか、もしくは新生か。あまり新生は出てこないんだけどな。私の知らないうちに出てきたか?








「あの、栫井さん?私たちもお話に混ぜていただけますか?」








「どーぞ?」








さあ、向こうから来てくれたし情報収集と情報の更新をしないとな。

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