異世界に喚ばれたので、異世界に住んでいます。
29.竜王夫妻といっしょ③
騎士団に行ったら三番隊は任務で離れていたけど、他の隊が残っていた。アストラルに抱き上げられた私を見た時の雄叫びは、暫く忘れないだろう。とにかく強烈だった。お兄ちゃんが来なかったら収拾つかなかったかもしれない。
アストラルと一緒に居たのに、誰もがアストラルを空気として認識していたものだから、逆にアストラルも清々しかったことだろう。
「ご迷惑とご心配をおかけしました。こちらの復帰の目処は立ってませんが、明日から事務仕事には復帰するのでよろしくお願いします」
「堅苦しいですよ、ウェルミスさん!!心配はしましたけど、誰も迷惑とか思ってませんから!!」
「三番隊も同じ思いだと思います。ウェルミスさんが、復帰してくれるなら俺らは何も言うことありません!筆頭も戻ってきたし、安心して静養してください」
一番隊と二番隊の人たちは、優しく私のことを見てくれた。懐が広くて泣きそうになったけど、今泣いたらまた収拾がつかなくなりそうだから、頑張って耐えた。
『イオ、傷に障るから戻るぞ』
「はぁい。それじゃあ、不束な兄妹ですが、これからもよろしくお願いします」
「うっす!!ウェルミスさんも、お体を大事に!!」
「ーー私が戻ったら、鍛練に付き合ってくださいね」
「っす!!」
頭が高いとは分かっていたけど、アストラルの腕の中から頭を下げた。アルベルトも過保護だから、一切下ろしてくれなかった。立つぐらいどうってことないのにね。
やっぱりそういうところはシヴァ様の相棒だなあって思う。元々、アストラルは私に甘かったけど、最近は拍車が掛かったように思う。
アストラルとティエラに初めて会ったのは、父グレイアスの相棒であり、メギドの父だった火の王の想いを私に伝えに来た時だ。それは、私がメギドと契約を交わして間もない頃。
アストラルとティエラは、私を見たか否か言葉もなく私を抱き締めた。初見の、それも絶対的な王の竜王夫妻に抱き締められたのにも関わらず、私は堪らなく胸が熱くなって、声を殺して泣いたのを覚えている。
アストラルとティエラの腕の中には、全てに勝る安堵があった。この世界に来て、私は初めて安心というものを感じたのだ。
「アストラルとティエラが居なかったら、私、潰れてたかも」
『どうした、急に』
「アストラルとティエラが、初めて私を抱き締めた日、私はね、この世界に来て初めて安心出来る場所を見つけた気がしたの」
『ほう』
「シヴァ様と対峙した時も、アストラルは私の側に居て、最後は抱き締めてくれたでしょ。アストラルが居るから、何も怖くなかったんだよ。アストラルが、ティエラが、側に居てくれるから、私は潰されることなく立っていられる、んじゃないかって思ってる」
『ーー俺たちは、お前が愛しいからなあ』
「愛しい?何、シヴァ様の影響?」
『あんな深い沼みたいなものと一緒にするな』
「おい」
『シュヴァルツのアレは底無し沼みたいなもんだ、ヘドロが詰まりきったやつだぞ』
「おい」
『頼むからシュヴァルツには気を付けろよ。二人きりの夕食もだ。食事よりお前が食われたらシャレにならん』
「おい」
『依織、俺たち竜族はお前が心から愛しいんだ』
「…ん」
『だから、無茶なぞしてくれるなよ』
アストラルの頬に頬を合わせる。アストラルとティエラ、メギド、それから他のドラゴンたちも愛しい。アストラルのシヴァ様に対する発言が気になるけど、私を案じてのことだから目を瞑ろう。
「よし、次は蒼の離宮!」
『次?帰るんじゃなかったのか?』
「シエルやセリカにも会おうと思ってね」
『そうか。遣いは出してあるのか?』
「うん、ティエラにお願いして出してもらったから大丈夫だよ」
心配掛けたしね、顔を見せるぐらいしとかないと。私が会いに来ないことを不安に思った可愛い双子は、ルシエラ様に泣きながら聞いたらしい。ルシエラ様にも迷惑掛けちゃったなあ。お兄ちゃんがフォローしてくれていると思いたい。
「おーい、シエル、セリカー!」
可愛い双子の灰色の瞳が私を捉えた。見えていなくても、それを感じさせないのは精霊や始音、終歌のおかげだと思う。彼らの存在があってこそ、今のシエルとセリカがある。もう鴉羽の名も、神無の名もない。空の名を冠する名前だけ。
この世界の大空を自由に翔び回れ。
それが幼い弟と妹への願いだ。
アストラルと一緒に居たのに、誰もがアストラルを空気として認識していたものだから、逆にアストラルも清々しかったことだろう。
「ご迷惑とご心配をおかけしました。こちらの復帰の目処は立ってませんが、明日から事務仕事には復帰するのでよろしくお願いします」
「堅苦しいですよ、ウェルミスさん!!心配はしましたけど、誰も迷惑とか思ってませんから!!」
「三番隊も同じ思いだと思います。ウェルミスさんが、復帰してくれるなら俺らは何も言うことありません!筆頭も戻ってきたし、安心して静養してください」
一番隊と二番隊の人たちは、優しく私のことを見てくれた。懐が広くて泣きそうになったけど、今泣いたらまた収拾がつかなくなりそうだから、頑張って耐えた。
『イオ、傷に障るから戻るぞ』
「はぁい。それじゃあ、不束な兄妹ですが、これからもよろしくお願いします」
「うっす!!ウェルミスさんも、お体を大事に!!」
「ーー私が戻ったら、鍛練に付き合ってくださいね」
「っす!!」
頭が高いとは分かっていたけど、アストラルの腕の中から頭を下げた。アルベルトも過保護だから、一切下ろしてくれなかった。立つぐらいどうってことないのにね。
やっぱりそういうところはシヴァ様の相棒だなあって思う。元々、アストラルは私に甘かったけど、最近は拍車が掛かったように思う。
アストラルとティエラに初めて会ったのは、父グレイアスの相棒であり、メギドの父だった火の王の想いを私に伝えに来た時だ。それは、私がメギドと契約を交わして間もない頃。
アストラルとティエラは、私を見たか否か言葉もなく私を抱き締めた。初見の、それも絶対的な王の竜王夫妻に抱き締められたのにも関わらず、私は堪らなく胸が熱くなって、声を殺して泣いたのを覚えている。
アストラルとティエラの腕の中には、全てに勝る安堵があった。この世界に来て、私は初めて安心というものを感じたのだ。
「アストラルとティエラが居なかったら、私、潰れてたかも」
『どうした、急に』
「アストラルとティエラが、初めて私を抱き締めた日、私はね、この世界に来て初めて安心出来る場所を見つけた気がしたの」
『ほう』
「シヴァ様と対峙した時も、アストラルは私の側に居て、最後は抱き締めてくれたでしょ。アストラルが居るから、何も怖くなかったんだよ。アストラルが、ティエラが、側に居てくれるから、私は潰されることなく立っていられる、んじゃないかって思ってる」
『ーー俺たちは、お前が愛しいからなあ』
「愛しい?何、シヴァ様の影響?」
『あんな深い沼みたいなものと一緒にするな』
「おい」
『シュヴァルツのアレは底無し沼みたいなもんだ、ヘドロが詰まりきったやつだぞ』
「おい」
『頼むからシュヴァルツには気を付けろよ。二人きりの夕食もだ。食事よりお前が食われたらシャレにならん』
「おい」
『依織、俺たち竜族はお前が心から愛しいんだ』
「…ん」
『だから、無茶なぞしてくれるなよ』
アストラルの頬に頬を合わせる。アストラルとティエラ、メギド、それから他のドラゴンたちも愛しい。アストラルのシヴァ様に対する発言が気になるけど、私を案じてのことだから目を瞑ろう。
「よし、次は蒼の離宮!」
『次?帰るんじゃなかったのか?』
「シエルやセリカにも会おうと思ってね」
『そうか。遣いは出してあるのか?』
「うん、ティエラにお願いして出してもらったから大丈夫だよ」
心配掛けたしね、顔を見せるぐらいしとかないと。私が会いに来ないことを不安に思った可愛い双子は、ルシエラ様に泣きながら聞いたらしい。ルシエラ様にも迷惑掛けちゃったなあ。お兄ちゃんがフォローしてくれていると思いたい。
「おーい、シエル、セリカー!」
可愛い双子の灰色の瞳が私を捉えた。見えていなくても、それを感じさせないのは精霊や始音、終歌のおかげだと思う。彼らの存在があってこそ、今のシエルとセリカがある。もう鴉羽の名も、神無の名もない。空の名を冠する名前だけ。
この世界の大空を自由に翔び回れ。
それが幼い弟と妹への願いだ。
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