異世界に喚ばれたので、異世界に住んでいます。
05.協力要請①
あっぶねー!!白帝、余計なこと言うなよ!そうなんだけどさあ、じゃねぇよ。私の顔がモテるばかりに、ろくでもないことを言い出すんじゃないかとヒヤヒヤした。
慌てて白帝に退場してもらう。儚げ美少女のネージュダリア様は、今にもフェードアウトしていきそうで怖い。慎重に扱わねば。
「すみません、白帝お借りして」
「え!私に、そんな…」
「ネージュダリア様、どうか白帝をよろしくお願いいたします」
「…私ごときに、」
「その私ごときって言うの止めましょう。自分を卑下にするのは、聞いていても不愉快です」
「…すみません」
すっぱり言い過ぎたかな。しょんぼりしたネージュダリア様の顔に髪がかかり影が落ちる。でも、こういうのははっきり言っとかないとーーでしゃばりすぎないようにしよ。うん。触らぬ神に祟りなしだ。
「ネージュダリア様、貴女は胸を張っていてくださいね」
「…私は、」
「大丈夫です。貴女は、私たちが守りますから」
失礼だとは思うけど私は手を伸ばして、ネージュダリア様の顔にかかった髪を耳にかけた。顔色が悪い。疲れを癒すように言っていたのに、白帝が連れ出すからだ。
「ーー依織、と白帝の婚約者か?」
「お疲れ様です。ネージュダリア様、こちらは私の兄です」
「イオリさんのお兄様…?」
「黒翼近衛筆頭のシキと申します。以後お見知りおきを」
にこりと営業スマイルを浮かべた我が兄は、ちらりと私に目配せしてきた。何か用事でもあるのだろうか。厄介事は要らない。いつも通りの用事であってほしい。そう思っていても、上手くいかないのが現実なのだ。
「それでは、ネージュダリア様。ごゆるりと、疲れを癒してくださいね」
「は、はい!イオリさん、ありがとうございます」
「どういたしまして。では、失礼します」
背筋をピンと伸ばしてネージュダリア様は頭を下げた。あとでネージュダリア様に付いているマリエに行っておこう。王妃となり得る人が、そんな簡単に頭を下げてはいけないと。
ネージュダリア様の部屋から数メートル離れた場所で、私は首を回した。バキバキと嫌な音が鳴る。それを聞いたお兄ちゃんが、顔をしかめたけど気付かないフリをする。
「魔物の活発化の件を覚えてるか?」
「あー…あの勇者(笑)の事件の発端よね。お兄ちゃんが居なくなったアレ」
「そうだ。実は活発化に磨きがかかっていてな、お前にも手を借りなきゃいけなくなった」
「ついに?」
「そう。ついにだ」
右足を怪我してからこっち、全くロードワークをしていない。なんやかんや黒帝にデスクワークで固められて、合間を見て鍛練に行っているが、黒帝はあんまり良い顔しない。渋々といった感じで行かせて貰っているのが現実だ。でも、鍛練の中身を濃いものにしているから、だから、右足の違和感にもやっとこさ慣れてきたところだ。
「シヴァ様に反対されそー…」
「そうなんだよな。団長とも話し合ってるんだが、どうもこうもラスボスが黒帝だからなあ。白帝の結婚並みに期待しないで、話だけを持ってきた」
「あー過保護になっちゃったからねえ。私も鍛練でさえ、遠慮がちになってて。腕が鈍って鈍ってしゃーないよ」
お兄ちゃんは、遠い目をしてうんうんと頷いた。黒帝との衝突を経て、間も無く勇者(笑)による魔物花の事件があり、周りが分かるぐらいに過保護気味になった。右足の怪我に対しての罪悪感からかと思っていたけど、なんかそうでもないんだよなあ。戦うことから私を遠ざけようとしている。生きてくれと死ぬなと泣きあった日から。
「お前から言っといてくれね?」
「えー」
「ルーカスさんが出仕拒否だし、姫さんのこともあるから、人手不足が足りないんだ」
魔物のせいで人数削られたし、まじやべぇんだって。人手不足なのは知ってるし、やべぇのもまあ分かる。でもなあ。黒帝、案外頑固だからなあ。私は口下手だから、うまく説得出来ないかもしれないーーーと、思ったところではたっと気づいた。
今までの私なら、誰彼構わず噛み付いて、魔物の討伐や戦場に向かっていた。戦うことを己の存在意義として。それなのに、今では黒帝に許可を得ようとしている。黒帝を主としているからか。私も人間らしくなったよなあ。
「じゃあ言ってみる。そう言えば、結婚許してもらったの?」
「あ゛ー…」
「あら、地雷だった?」
「地雷でもないんだが、やっぱり許してもらえなかった」
「やっぱりって想定済だったんだ?」
「まあな。ご両親やご兄姉は良い方たちだったんだけど、竜と人間の異種婚姻は許せないんだとよ。人間の命は瞬きひとつだからってな」
「あー…そっか」
「パートナーで居てくれって逆に頼まれた」
そう言ったお兄ちゃんの顔は、落胆の色などなかったしていなかった。分かっていたことだからだろうか。それでも、傷付いただろうな。それでも、一理あることだから、受け入れたんだろうな。お兄ちゃんは、優しい人だから。
「そっか」
「それをウダウダ悔やんでも仕方ねぇだろ?リリーシャは納得いかないって、実家に戻ったままだしよ」
「ドラゴンは愛情深いからね。愛されてるじゃん」
「ははっ。それでも、それでも、今は傍に居て欲しかった」
思いっきり地雷じゃねーか。ふっと寂しそうな目をしてお兄ちゃんはため息をついた。リリーシャ嬢は、家族に認めてもらいたくて必死なんだよと肩を叩いて慰めるけど、あんまり意味はないように思う。
「依織、お前は普通に恋して結婚しろよ」
「それこそ無理じゃない?」
「それもそうか」
「納得しないでよ!」
はははと笑い合って、解散になった。部屋に送るだけなのに、なんでそんなに時間が掛かるんだって怒られるし。お兄ちゃん自身も忙しいらしいし。
慌てて白帝に退場してもらう。儚げ美少女のネージュダリア様は、今にもフェードアウトしていきそうで怖い。慎重に扱わねば。
「すみません、白帝お借りして」
「え!私に、そんな…」
「ネージュダリア様、どうか白帝をよろしくお願いいたします」
「…私ごときに、」
「その私ごときって言うの止めましょう。自分を卑下にするのは、聞いていても不愉快です」
「…すみません」
すっぱり言い過ぎたかな。しょんぼりしたネージュダリア様の顔に髪がかかり影が落ちる。でも、こういうのははっきり言っとかないとーーでしゃばりすぎないようにしよ。うん。触らぬ神に祟りなしだ。
「ネージュダリア様、貴女は胸を張っていてくださいね」
「…私は、」
「大丈夫です。貴女は、私たちが守りますから」
失礼だとは思うけど私は手を伸ばして、ネージュダリア様の顔にかかった髪を耳にかけた。顔色が悪い。疲れを癒すように言っていたのに、白帝が連れ出すからだ。
「ーー依織、と白帝の婚約者か?」
「お疲れ様です。ネージュダリア様、こちらは私の兄です」
「イオリさんのお兄様…?」
「黒翼近衛筆頭のシキと申します。以後お見知りおきを」
にこりと営業スマイルを浮かべた我が兄は、ちらりと私に目配せしてきた。何か用事でもあるのだろうか。厄介事は要らない。いつも通りの用事であってほしい。そう思っていても、上手くいかないのが現実なのだ。
「それでは、ネージュダリア様。ごゆるりと、疲れを癒してくださいね」
「は、はい!イオリさん、ありがとうございます」
「どういたしまして。では、失礼します」
背筋をピンと伸ばしてネージュダリア様は頭を下げた。あとでネージュダリア様に付いているマリエに行っておこう。王妃となり得る人が、そんな簡単に頭を下げてはいけないと。
ネージュダリア様の部屋から数メートル離れた場所で、私は首を回した。バキバキと嫌な音が鳴る。それを聞いたお兄ちゃんが、顔をしかめたけど気付かないフリをする。
「魔物の活発化の件を覚えてるか?」
「あー…あの勇者(笑)の事件の発端よね。お兄ちゃんが居なくなったアレ」
「そうだ。実は活発化に磨きがかかっていてな、お前にも手を借りなきゃいけなくなった」
「ついに?」
「そう。ついにだ」
右足を怪我してからこっち、全くロードワークをしていない。なんやかんや黒帝にデスクワークで固められて、合間を見て鍛練に行っているが、黒帝はあんまり良い顔しない。渋々といった感じで行かせて貰っているのが現実だ。でも、鍛練の中身を濃いものにしているから、だから、右足の違和感にもやっとこさ慣れてきたところだ。
「シヴァ様に反対されそー…」
「そうなんだよな。団長とも話し合ってるんだが、どうもこうもラスボスが黒帝だからなあ。白帝の結婚並みに期待しないで、話だけを持ってきた」
「あー過保護になっちゃったからねえ。私も鍛練でさえ、遠慮がちになってて。腕が鈍って鈍ってしゃーないよ」
お兄ちゃんは、遠い目をしてうんうんと頷いた。黒帝との衝突を経て、間も無く勇者(笑)による魔物花の事件があり、周りが分かるぐらいに過保護気味になった。右足の怪我に対しての罪悪感からかと思っていたけど、なんかそうでもないんだよなあ。戦うことから私を遠ざけようとしている。生きてくれと死ぬなと泣きあった日から。
「お前から言っといてくれね?」
「えー」
「ルーカスさんが出仕拒否だし、姫さんのこともあるから、人手不足が足りないんだ」
魔物のせいで人数削られたし、まじやべぇんだって。人手不足なのは知ってるし、やべぇのもまあ分かる。でもなあ。黒帝、案外頑固だからなあ。私は口下手だから、うまく説得出来ないかもしれないーーーと、思ったところではたっと気づいた。
今までの私なら、誰彼構わず噛み付いて、魔物の討伐や戦場に向かっていた。戦うことを己の存在意義として。それなのに、今では黒帝に許可を得ようとしている。黒帝を主としているからか。私も人間らしくなったよなあ。
「じゃあ言ってみる。そう言えば、結婚許してもらったの?」
「あ゛ー…」
「あら、地雷だった?」
「地雷でもないんだが、やっぱり許してもらえなかった」
「やっぱりって想定済だったんだ?」
「まあな。ご両親やご兄姉は良い方たちだったんだけど、竜と人間の異種婚姻は許せないんだとよ。人間の命は瞬きひとつだからってな」
「あー…そっか」
「パートナーで居てくれって逆に頼まれた」
そう言ったお兄ちゃんの顔は、落胆の色などなかったしていなかった。分かっていたことだからだろうか。それでも、傷付いただろうな。それでも、一理あることだから、受け入れたんだろうな。お兄ちゃんは、優しい人だから。
「そっか」
「それをウダウダ悔やんでも仕方ねぇだろ?リリーシャは納得いかないって、実家に戻ったままだしよ」
「ドラゴンは愛情深いからね。愛されてるじゃん」
「ははっ。それでも、それでも、今は傍に居て欲しかった」
思いっきり地雷じゃねーか。ふっと寂しそうな目をしてお兄ちゃんはため息をついた。リリーシャ嬢は、家族に認めてもらいたくて必死なんだよと肩を叩いて慰めるけど、あんまり意味はないように思う。
「依織、お前は普通に恋して結婚しろよ」
「それこそ無理じゃない?」
「それもそうか」
「納得しないでよ!」
はははと笑い合って、解散になった。部屋に送るだけなのに、なんでそんなに時間が掛かるんだって怒られるし。お兄ちゃん自身も忙しいらしいし。
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