異世界に喚ばれたので、異世界に住んでいます。
01.新しい不穏
お兄ちゃんと間違えられて、転移魔術を掛けられ異世界に喚ばれた私、桜咲依織は 異世界に住み始めた。だって、帰れないんだから仕方ない。それに、兄や弟妹もいる。家族と一緒に住めるから、何ら問題はない。まあ、住所が城の内って点は妥協済みだ。
「イオ」
「シヴァ様、おはようございます」
「おはよ。今日は早いな」
「そうですね、兄が居ないので双子を連れてくるために早めに動いたんです」
「志貴が居ない?」
「はい。婚約者様の所に泊まり込みです」
「…あぁ、そう」
前みたいに消息不明になったかと思った、とシヴァ様はため息を吐きながら言った。そうなったら、多分私は一緒死ぬまで根に持つ。やっと、長年の夢が叶ったのに早々と終わらされるとなると、恨み辛みも溜まると思うし、例え死んだと自分の目で確かめるまで、探し続けてやるつもりだ。
「今日はお休みらしいですよ」
「逃げなきゃ良いさ」
「逃げたら追い掛けますから。今日の予定は特にありませんが、明日から陽国の姫君が我が国を目指して出発します」
「分かった。アルの婚約者候補だからなあ、丁重にな」
「えぇ、重々承知しております。何がなんでも逃がしはしません」
「必死だな、お前も」
「必死なのはお互い様でしょう、シヴァ様」
あの件以来、二人きりで会うのを極力避けている。自意識過剰かもしれないけど、会ったら最後みたいな。 シバルヴァの毒で昏睡していた時のお礼は言われたけど、無理矢理婚約しようとしていた謝罪はなかった。
「さて、今日の仕事をするかな」
「はい」
特に大きな問題も起こることなく、時間は過ぎていく。ジエロは諜報の任についているし、あ、ジエロと言えば女嫌いを拗らせていたのに、いつの間にか城下の食堂の看板娘ソフィと良い感じになっているらしい。聞いた話だから、確証がないけど。いい傾向だと思っている。またからかいに行こう。
「マリベル様はいつ式を挙げられるんでしょう?」
「さあな。アルの婚約者選びの真っ只中だから、まだ先だろう」
「皇族の挙式までの道のりは長いとお聞きしてます。この間に準備していても、全然問題ないですね」
「そうだが、何を企んでる?」
「企みも何も、兄とリリーシャ嬢の件もありますからね?この度の泊まりも、リリーシャ嬢のご両親との顔合わせの為ですから」
「…風の王と、顔合わせ?」
「リリーシャ嬢は8人兄妹の末っ子。非常に仲睦まじいご兄妹と聞いていたので、一家総出で顔合わせをしたのではないかと。兄はよく頑張ったんじゃないでしょうか…」
帰ってきたら全力でお兄ちゃんを労うつもりではいる。ヒトと竜、あくまでも異種間での婚姻となる。前列がないわけではないが、可愛がってきた末っ子のリリーシャ嬢を思うご両親やご兄姉の心配も分からんでもない。
「志貴は凄いな」
「まあ、度胸はありますからね」
「アルにも聞かせたいな」
「聞かせても、爪の垢を煎じて飲ませても、他人は他人ですよ。どうか、 かの姫君と恋に落ちますように」
「辛辣だな。だが、言われてみればごもっとも。否定はせん」
「これを機に、色々と考えを改めてほしいものですね」
「そうだな。でも、期待はするなよ」
「わーってますって」
愛を囁くことも、贈り物をすることも煩わしいらしい白帝が、この候補者との出会いを経て、愛を囁いたり贈り物をするようになるのだろうか。是非ともそうなって欲しいところである。変わってくれ、白帝。期待はしてないけど。
「万が一、陽国の姫君と使者が何らかの出来事に遭遇した場合だが、お前が出るのか?」
「はい、そのようにジェラール団長から頼まれてます」
「わざわざお前が?」
「ドイル副団長曰く、姫君は特殊な環境に居られたそうです。なんでも、エドノワールと呼ばれていたとか」
「エドノワール?」
「陽国の古語で、原初の姫。ちなみに竜たちの古語では、星屑」
平穏ではないその異名にシヴァ様は眉をしかめた。まったくもって、穏やかじゃないんだよなあ。陽国は姫君を厄介払いをしたかったらしい。国交の条件としては悪くないのは、そういった理由があるからだろう。
 
「なんでまた受け入れるかなあ、父上は」
「さあ?ほだされたのではないですか?」
「まったく。そのこと、アルは知ってるのか?」
「ドイル副団長の独断と偏見で、私とジェラール団長、マリベル様にしか伝えてないそうですよ」
「賢明な判断だな」
「シヴァ様は目を瞑られるのですか?」 
「おいおい、お前まで厄介払いをする気か?」
「そういうつもりはないですが、普通ならば送り返すでしょう?」
「生憎と俺たちは普通じゃないからなあ、この国もな」
「…あぁ、そうでしたね。神の子と神の国ですもんね」
原初の姫となれば、受け入れないなんて選択肢ないよなあ。いや良いことなんだけどね。まだ見ぬ姫様にいちゃもんつける気もないし、どんな姫様であれ白帝の心を奪ってくれるなら、私は出来る限り誠意を見せたい。
「さ、仕事するぞ」 
「そうですね」
「イオ」
「シヴァ様、おはようございます」
「おはよ。今日は早いな」
「そうですね、兄が居ないので双子を連れてくるために早めに動いたんです」
「志貴が居ない?」
「はい。婚約者様の所に泊まり込みです」
「…あぁ、そう」
前みたいに消息不明になったかと思った、とシヴァ様はため息を吐きながら言った。そうなったら、多分私は一緒死ぬまで根に持つ。やっと、長年の夢が叶ったのに早々と終わらされるとなると、恨み辛みも溜まると思うし、例え死んだと自分の目で確かめるまで、探し続けてやるつもりだ。
「今日はお休みらしいですよ」
「逃げなきゃ良いさ」
「逃げたら追い掛けますから。今日の予定は特にありませんが、明日から陽国の姫君が我が国を目指して出発します」
「分かった。アルの婚約者候補だからなあ、丁重にな」
「えぇ、重々承知しております。何がなんでも逃がしはしません」
「必死だな、お前も」
「必死なのはお互い様でしょう、シヴァ様」
あの件以来、二人きりで会うのを極力避けている。自意識過剰かもしれないけど、会ったら最後みたいな。 シバルヴァの毒で昏睡していた時のお礼は言われたけど、無理矢理婚約しようとしていた謝罪はなかった。
「さて、今日の仕事をするかな」
「はい」
特に大きな問題も起こることなく、時間は過ぎていく。ジエロは諜報の任についているし、あ、ジエロと言えば女嫌いを拗らせていたのに、いつの間にか城下の食堂の看板娘ソフィと良い感じになっているらしい。聞いた話だから、確証がないけど。いい傾向だと思っている。またからかいに行こう。
「マリベル様はいつ式を挙げられるんでしょう?」
「さあな。アルの婚約者選びの真っ只中だから、まだ先だろう」
「皇族の挙式までの道のりは長いとお聞きしてます。この間に準備していても、全然問題ないですね」
「そうだが、何を企んでる?」
「企みも何も、兄とリリーシャ嬢の件もありますからね?この度の泊まりも、リリーシャ嬢のご両親との顔合わせの為ですから」
「…風の王と、顔合わせ?」
「リリーシャ嬢は8人兄妹の末っ子。非常に仲睦まじいご兄妹と聞いていたので、一家総出で顔合わせをしたのではないかと。兄はよく頑張ったんじゃないでしょうか…」
帰ってきたら全力でお兄ちゃんを労うつもりではいる。ヒトと竜、あくまでも異種間での婚姻となる。前列がないわけではないが、可愛がってきた末っ子のリリーシャ嬢を思うご両親やご兄姉の心配も分からんでもない。
「志貴は凄いな」
「まあ、度胸はありますからね」
「アルにも聞かせたいな」
「聞かせても、爪の垢を煎じて飲ませても、他人は他人ですよ。どうか、 かの姫君と恋に落ちますように」
「辛辣だな。だが、言われてみればごもっとも。否定はせん」
「これを機に、色々と考えを改めてほしいものですね」
「そうだな。でも、期待はするなよ」
「わーってますって」
愛を囁くことも、贈り物をすることも煩わしいらしい白帝が、この候補者との出会いを経て、愛を囁いたり贈り物をするようになるのだろうか。是非ともそうなって欲しいところである。変わってくれ、白帝。期待はしてないけど。
「万が一、陽国の姫君と使者が何らかの出来事に遭遇した場合だが、お前が出るのか?」
「はい、そのようにジェラール団長から頼まれてます」
「わざわざお前が?」
「ドイル副団長曰く、姫君は特殊な環境に居られたそうです。なんでも、エドノワールと呼ばれていたとか」
「エドノワール?」
「陽国の古語で、原初の姫。ちなみに竜たちの古語では、星屑」
平穏ではないその異名にシヴァ様は眉をしかめた。まったくもって、穏やかじゃないんだよなあ。陽国は姫君を厄介払いをしたかったらしい。国交の条件としては悪くないのは、そういった理由があるからだろう。
 
「なんでまた受け入れるかなあ、父上は」
「さあ?ほだされたのではないですか?」
「まったく。そのこと、アルは知ってるのか?」
「ドイル副団長の独断と偏見で、私とジェラール団長、マリベル様にしか伝えてないそうですよ」
「賢明な判断だな」
「シヴァ様は目を瞑られるのですか?」 
「おいおい、お前まで厄介払いをする気か?」
「そういうつもりはないですが、普通ならば送り返すでしょう?」
「生憎と俺たちは普通じゃないからなあ、この国もな」
「…あぁ、そうでしたね。神の子と神の国ですもんね」
原初の姫となれば、受け入れないなんて選択肢ないよなあ。いや良いことなんだけどね。まだ見ぬ姫様にいちゃもんつける気もないし、どんな姫様であれ白帝の心を奪ってくれるなら、私は出来る限り誠意を見せたい。
「さ、仕事するぞ」 
「そうですね」
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