Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
恋は焦らずに (5)
結局は恵介の押しの強さに負けて、仕事中も邪魔にならないシンプルなデザインの指輪を二人で選んだ。
恵介は「今すぐ着けたいから」と言って包装を断った。
ホントにせっかちだ。
そう思いながらも、好きな人とお揃いの指輪をするなんて初めての経験だから私も嬉しくて、指輪をした自分の手を眺めてニヤニヤしてしまう。
指輪は恵介からの誕生日プレゼントとして買ってもらった。
私が指輪はまだいいと断ったから、気を遣ってくれたのかも知れない。
私も半分払うと言ったけど、恵介曰く、『これは幸とずっと一緒にいたいっていう俺の気持ちだから』だそうだ。
ずっと一緒にいたいという気持ちは私も同じだし、これが恵介の私に対する気持ちなのなら、素直に受け取って大事にしよう。
それからベンチに座ってひと休みした。
恵介は嬉そうに指輪を眺めている。
「ペアリングしてると恋人らしくていいな」
「恵介、そんなに嬉しいの?」
「めちゃくちゃ嬉しいよ。幸は?」
「私もすごく嬉しいけど……ホントにいいの?」
私がこれまで洋服やアクセサリーにお金をかけて来なかったのを知っているからか、恵介はその言葉だけで察してくれたようだ。
「お金の心配はしないで下さい。今まであまり使うところがなくて、それなりに貯めてますから」
「でも、前にも髪飾りとか化粧品とか買ってもらったのに……」
「俺がしたくてしてることだし、ホントに大丈夫だから心配しないで」
さすがに貯畜額までは聞かないけれど、私のために恵介が浪費し過ぎているような気がして心苦しい。
それにしても、『これまで使うところがなくて』って……なんで?
いくら琴音の世話を焼いていたとは言っても、デートしてプレゼントをあげる彼女くらいはいただろうに。
「なんで使うところがなかったの?これまでも彼女くらいはいたでしょ?」
「いなくはないけど……あんまり長続きもしなかったし、プレゼントに何か買ってあげたいとか思わなかったから。払ったのはせいぜい食事代くらい」
そう言えば恵介は、これまでの彼女をあまり甘やかさなかったと言っていた。
それを考えると、私は恵介に目一杯甘やかされているんだと思う。
「私のこともそんなに甘やかさなくていいんだよ?」
「甘やかしてるって言うか……幸には買ってあげたいと俺が思っただけ」
それを『甘やかしてる』と言うのでは?
もしかして私、お金がないから安物の服を着て、質素な暮らしをしてるんだと思われてる?!
確かに自分にお金を掛けてはいないけど、地味な性格のおかげで私だってそれなりに貯金はある。
真面目に働いてきた分、役職に就いてそこそこの給料ももらってるし、決して貧乏ではないんだから!
彼氏に買ってもらって当たり前とか、彼女は彼氏に甘えてればいいとか、そういう関係が定着するのは良くない!!
私が勢いよくベンチから立ち上がると、恵介は少し驚いた顔をして私を見上げた。
「じゃあ私も恵介に何か買ってあげたい。今日の記念に何かお揃いのものを買いに行こう」
手を繋いで歩いていると、恵介がポケットから取り出したものを私の目の前に差し出した。
それはずいぶん年季が入ってボロボロになった、皮のキーケースだった。
「幸、俺キーケース欲しい。これ、友達が海外旅行のお土産に買ってきてくれたんだけど、さすがに10年も使うと限界みたい」
「わかった、キーケースね」
財布や名刺入れと一緒にキーケースが並んでいる売り場で、色違いのキーケースを選んだ。
恵介が黒で、私が赤。
お値段もそこそこの良い物だし、これなら長く使えそうだ。
恵介は「今すぐ着けたいから」と言って包装を断った。
ホントにせっかちだ。
そう思いながらも、好きな人とお揃いの指輪をするなんて初めての経験だから私も嬉しくて、指輪をした自分の手を眺めてニヤニヤしてしまう。
指輪は恵介からの誕生日プレゼントとして買ってもらった。
私が指輪はまだいいと断ったから、気を遣ってくれたのかも知れない。
私も半分払うと言ったけど、恵介曰く、『これは幸とずっと一緒にいたいっていう俺の気持ちだから』だそうだ。
ずっと一緒にいたいという気持ちは私も同じだし、これが恵介の私に対する気持ちなのなら、素直に受け取って大事にしよう。
それからベンチに座ってひと休みした。
恵介は嬉そうに指輪を眺めている。
「ペアリングしてると恋人らしくていいな」
「恵介、そんなに嬉しいの?」
「めちゃくちゃ嬉しいよ。幸は?」
「私もすごく嬉しいけど……ホントにいいの?」
私がこれまで洋服やアクセサリーにお金をかけて来なかったのを知っているからか、恵介はその言葉だけで察してくれたようだ。
「お金の心配はしないで下さい。今まであまり使うところがなくて、それなりに貯めてますから」
「でも、前にも髪飾りとか化粧品とか買ってもらったのに……」
「俺がしたくてしてることだし、ホントに大丈夫だから心配しないで」
さすがに貯畜額までは聞かないけれど、私のために恵介が浪費し過ぎているような気がして心苦しい。
それにしても、『これまで使うところがなくて』って……なんで?
いくら琴音の世話を焼いていたとは言っても、デートしてプレゼントをあげる彼女くらいはいただろうに。
「なんで使うところがなかったの?これまでも彼女くらいはいたでしょ?」
「いなくはないけど……あんまり長続きもしなかったし、プレゼントに何か買ってあげたいとか思わなかったから。払ったのはせいぜい食事代くらい」
そう言えば恵介は、これまでの彼女をあまり甘やかさなかったと言っていた。
それを考えると、私は恵介に目一杯甘やかされているんだと思う。
「私のこともそんなに甘やかさなくていいんだよ?」
「甘やかしてるって言うか……幸には買ってあげたいと俺が思っただけ」
それを『甘やかしてる』と言うのでは?
もしかして私、お金がないから安物の服を着て、質素な暮らしをしてるんだと思われてる?!
確かに自分にお金を掛けてはいないけど、地味な性格のおかげで私だってそれなりに貯金はある。
真面目に働いてきた分、役職に就いてそこそこの給料ももらってるし、決して貧乏ではないんだから!
彼氏に買ってもらって当たり前とか、彼女は彼氏に甘えてればいいとか、そういう関係が定着するのは良くない!!
私が勢いよくベンチから立ち上がると、恵介は少し驚いた顔をして私を見上げた。
「じゃあ私も恵介に何か買ってあげたい。今日の記念に何かお揃いのものを買いに行こう」
手を繋いで歩いていると、恵介がポケットから取り出したものを私の目の前に差し出した。
それはずいぶん年季が入ってボロボロになった、皮のキーケースだった。
「幸、俺キーケース欲しい。これ、友達が海外旅行のお土産に買ってきてくれたんだけど、さすがに10年も使うと限界みたい」
「わかった、キーケースね」
財布や名刺入れと一緒にキーケースが並んでいる売り場で、色違いのキーケースを選んだ。
恵介が黒で、私が赤。
お値段もそこそこの良い物だし、これなら長く使えそうだ。
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