Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
一人で大丈夫 (2)
ずっと純粋ですれてない……?
何それ、そんなこと初めて言われた。
でもそれ、三十路を目前に控えた大人の女にとっては誉め言葉じゃないよ。
子供っぽくて色気がないから結婚できないんだよって言われてる気もするし、むしろ地雷だと思う。
「色気がなくて悪かったわねぇ……」
「えっ?!俺そんなこと言ってねぇよ?!」
「言ったよ。それと同等の言葉を」
秋一は慌てふためいてオロオロしている。
ちょっと意地悪だったかな。
「まぁ……変わってないって言われると嬉しい気もするし、だからダメなのかって気もするし、ちょっと複雑」
「何がダメかよくわからないんだけど……俺の中では誉め言葉。なんかホッとするじゃん?」
「結婚できないのは自分だけじゃないって?」
「だーかーらー……。はぁ、もういいや。俺は、高校時代と変わらず幸は可愛いって言いたかっただけなんだけどな」
こいつめ、私をおだててこの話題を終わらせようとしているな?
相変わらず調子いいんだから。
「秋一くんの目は節穴ですか?高校時代と変わらないとか私が可愛いとか、有り得ないでしょ」
「いや、本気ですよ?幸は昔から可愛い。今だから言うけど……じつは俺……高校時代、幸に片想いしてた」
「えっ……え……えぇーっ?!」
何それ?新手のジョーク?
遅れてきたモテ期?
同級生ドッキリ?
そんなことしてもテレビには出られないよ?!
「あの頃、幸は夏樹が好きだったじゃん?フラれんのわかってたから、告白しなかった」
「えっ、私が夏樹のこと好きだったって、なんで知ってるの?誰かから聞いた?」
「聞かないよ。幸見てて気付いただけ。他のやつを見てる目と、夏樹を見てる目が明らかに違ったから」
うわぁ……今更ながら恥ずかしい。
私、そんなに分かりやすかったんだ。
「秋一が気付いたってことは……もしかして夏樹も?」
「あぁ、気付いてたな。だけど夏樹はあの時彼女がいたから、何も言わなかったんだろ」
「夏樹は昔からモテたもんね。常に可愛い彼女がいたし、私なんか眼中にないってわかってたから、告白しようとも思わなかった」
片想いでも、夏樹と一緒に笑っていられるだけで幸せだったな。
あの頃はまさか、大人になって夏樹とあんな関係になるなんて思いもしなかった。
その関係があんな形で終わるとも思ってなかったけど。
「あのさ……俺は幸と夏樹が付き合ってたことも知らなかったんだけど……夏樹が幸を捨てて他の女と結婚したって聞いてさ……」
秋一は少しためらいがちにそう言った。
巴から聞かされたのかな。
だけどちょっと違うのは、私と夏樹が付き合っていたことになっているところだ。
「ああ……うん、付き合ってたわけじゃないんだ。私は好きだったけど、夏樹は私を好きじゃなかったし、私の部屋が便利な定宿にされてただけ。でもそれがどうかした?」
「それがどうかした?って、他人事みたいに……。巴から少し聞いたけど、夏樹の結婚式の世話もしたって?文句のひとつも言ってやったのか?なんだったら俺が……」
友達想いの秋一らしい言葉だ。
高校時代に片瀬と高野がケンカして険悪になった時、秋一が間に入って仲直りさせたことを思い出した。
だけど私と夏樹は、学生のケンカとはわけが違う。
「そんなのいいってば。今更何言ってもしょうがないから。いつまでも終わったこと引きずりたくないし」
「そうか……。ごめん、余計なこと言って」
「ううん、心配してくれてありがとね」
秋一は険しい顔をしながらビールを飲んだ。
正義感の強い秋一にとって、私の言葉は腑に落ちないのかも知れない。
「一人で無理すんなよ。なんかあったらいつでも呼べよな、すぐ駆け付けるから」
「大袈裟だなぁ、秋一は……」
「あ、一人でって勝手に決めつけちゃったけど……余計なお世話だったか?俺が心配しなくても、そばにいてくれる彼氏がいるとか……」
「……ううん、一人だけどね……。私は一人でも大丈夫だから」
昨日恵介に言った自分の言葉を思い出した。
差し出してくれた優しい手をはね除けたのは、私自身だ。
何それ、そんなこと初めて言われた。
でもそれ、三十路を目前に控えた大人の女にとっては誉め言葉じゃないよ。
子供っぽくて色気がないから結婚できないんだよって言われてる気もするし、むしろ地雷だと思う。
「色気がなくて悪かったわねぇ……」
「えっ?!俺そんなこと言ってねぇよ?!」
「言ったよ。それと同等の言葉を」
秋一は慌てふためいてオロオロしている。
ちょっと意地悪だったかな。
「まぁ……変わってないって言われると嬉しい気もするし、だからダメなのかって気もするし、ちょっと複雑」
「何がダメかよくわからないんだけど……俺の中では誉め言葉。なんかホッとするじゃん?」
「結婚できないのは自分だけじゃないって?」
「だーかーらー……。はぁ、もういいや。俺は、高校時代と変わらず幸は可愛いって言いたかっただけなんだけどな」
こいつめ、私をおだててこの話題を終わらせようとしているな?
相変わらず調子いいんだから。
「秋一くんの目は節穴ですか?高校時代と変わらないとか私が可愛いとか、有り得ないでしょ」
「いや、本気ですよ?幸は昔から可愛い。今だから言うけど……じつは俺……高校時代、幸に片想いしてた」
「えっ……え……えぇーっ?!」
何それ?新手のジョーク?
遅れてきたモテ期?
同級生ドッキリ?
そんなことしてもテレビには出られないよ?!
「あの頃、幸は夏樹が好きだったじゃん?フラれんのわかってたから、告白しなかった」
「えっ、私が夏樹のこと好きだったって、なんで知ってるの?誰かから聞いた?」
「聞かないよ。幸見てて気付いただけ。他のやつを見てる目と、夏樹を見てる目が明らかに違ったから」
うわぁ……今更ながら恥ずかしい。
私、そんなに分かりやすかったんだ。
「秋一が気付いたってことは……もしかして夏樹も?」
「あぁ、気付いてたな。だけど夏樹はあの時彼女がいたから、何も言わなかったんだろ」
「夏樹は昔からモテたもんね。常に可愛い彼女がいたし、私なんか眼中にないってわかってたから、告白しようとも思わなかった」
片想いでも、夏樹と一緒に笑っていられるだけで幸せだったな。
あの頃はまさか、大人になって夏樹とあんな関係になるなんて思いもしなかった。
その関係があんな形で終わるとも思ってなかったけど。
「あのさ……俺は幸と夏樹が付き合ってたことも知らなかったんだけど……夏樹が幸を捨てて他の女と結婚したって聞いてさ……」
秋一は少しためらいがちにそう言った。
巴から聞かされたのかな。
だけどちょっと違うのは、私と夏樹が付き合っていたことになっているところだ。
「ああ……うん、付き合ってたわけじゃないんだ。私は好きだったけど、夏樹は私を好きじゃなかったし、私の部屋が便利な定宿にされてただけ。でもそれがどうかした?」
「それがどうかした?って、他人事みたいに……。巴から少し聞いたけど、夏樹の結婚式の世話もしたって?文句のひとつも言ってやったのか?なんだったら俺が……」
友達想いの秋一らしい言葉だ。
高校時代に片瀬と高野がケンカして険悪になった時、秋一が間に入って仲直りさせたことを思い出した。
だけど私と夏樹は、学生のケンカとはわけが違う。
「そんなのいいってば。今更何言ってもしょうがないから。いつまでも終わったこと引きずりたくないし」
「そうか……。ごめん、余計なこと言って」
「ううん、心配してくれてありがとね」
秋一は険しい顔をしながらビールを飲んだ。
正義感の強い秋一にとって、私の言葉は腑に落ちないのかも知れない。
「一人で無理すんなよ。なんかあったらいつでも呼べよな、すぐ駆け付けるから」
「大袈裟だなぁ、秋一は……」
「あ、一人でって勝手に決めつけちゃったけど……余計なお世話だったか?俺が心配しなくても、そばにいてくれる彼氏がいるとか……」
「……ううん、一人だけどね……。私は一人でも大丈夫だから」
昨日恵介に言った自分の言葉を思い出した。
差し出してくれた優しい手をはね除けたのは、私自身だ。
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