Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
私なんかじゃ釣り合わないから (2)
「今日はお店でお仕事じゃないんですね」
「そうなんです、朝から本社で店長会議だったんですよ。やっと解放されました。ちょっとひと休みさせてくださいね」
「それはお疲れ様です」
店長は私の隣に腰を下ろした。
ほのかにいい香りがする。
同じように役職に就く者として、店長の苦労はなんとなくわかる。
上と下の板挟み、つらいんだ。
「福多さんはお仕事お休みなんですか?もしかして今日も富永さんとデートかしら」
人に言われるとデートって言葉の響きがやけに照れくさい。
それに『今日も』って……。
店長が放った『富永さん』の名前に反応したOL3人組が、チラチラとこちらを気にしているのがわかった。
うう……いたたまれない……。
すみません、こんな地味な女が、あなた方の憧れの富永さんの隣で同じ空気を吸っているなんて。
「ええ……まぁ……デートと言うか……先日のお礼に食事の約束を」
「仲良しなんですね。富永さんが仕事関係以外の女性をお店に連れていらっしゃるのは珍しいんですよ」
琴音には買ってあげたりしなかったのかな?
なんだかんだ言ったって恵介は琴音には甘かったみたいだし、すごくおねだりされてそうなんだけど。
「意外……。彼女連れて行って買ってあげたりするのかと……」
「私が知る限りでは、お店に連れてきた女性のことを彼女だって紹介されたことはないですね。取引先の女性の担当者と、取引先の社長とか重役の奥様やお嬢さんが多いです。あとは妹さんですね」
「そうなんですか?」
恵介には妹がいるのか。
それは知らなかった。
世話焼きの恵介だから、きっと妹思いのいいお兄さんなんだろう。
恵介の面倒見の良さの原点はきっとそこにあるんだ。
「よく取引先の社長から娘とのお見合いを勧められるって言ってましたし、お嬢さん方は富永さんを狙ってたのかも知れないですね。当の本人はまったく興味なさそうでしたけど」
隣のベンチの彼女らが言っていたように、上司や取引先の偉い人から娘をもらってくれと言われるってことは、かなり人望が厚いんだろう。
話を聞いてると仕事もできそうな感じだし。
「へぇ……結構モテるのかな。優しいし面倒見がいいし、割と男前ですもんね」
「そうですか?確かに男前だしモテますけど……普段は割とクールで近寄りがたいですね」
「私も第一印象はクールで大人しい人でしたよ。だけど慣れれば誰にでもあんな感じなのかと……」
お酒の力もあったとは言え、実際私は恵介とすぐに打ち解けたから、優しくて面倒見が良くて、相手の懐に入るのが上手な人だと思ってたんだけど。
もしかして私は事情が特殊すぎたから、同情して特別優しくしてくれたのかな?
「福多さんとお店に来られた時の富永さんは、いつもよりずっと楽しそうでしたよ。彼女の前ではあんな風に楽しそうに笑う人なんですね」
彼女って……付き合ってるからそうなんだろうけど、それは外で人に言ってもいいのかな?
隣のベンチの彼女たちはちょっとしたプチパニックだ。
恵介が私をどう思ってるかなんて知らないし、勝手に受け答えして会社の人に勘違いされたら、恵介に迷惑がかかるんじゃ?
「そう見えましたか……?」
「あれ?違うんですか?」
「うーん……どうなんだろう?違うような、違わないような……いや、やっぱり違うかも……」
店長が不思議そうに首をかしげた。
「違わないよ?」
背後から聞き慣れた低い声がした。
「えっ?!」
ビックリして振り返ると、恵介が呆れた顔をしてため息をついた。
OL3人組は更にあたふたしている。
「恵介……いつからそこにいたの?!」
「ちょっと前。声掛けようと思ったけど、話し込んでたからタイミング逃した」
全然気付かなかった……!
って言うか、気配すら感じなかった!!
遠慮なく声掛けてくれたら良かったのに。
「今の言葉はちょっとヘコんだな、俺」
「えーっと……なんで?」
私、恵介がヘコむようなこと何か言ったっけ?
思い出せなくて、今度は私が首をかしげた。
「そうなんです、朝から本社で店長会議だったんですよ。やっと解放されました。ちょっとひと休みさせてくださいね」
「それはお疲れ様です」
店長は私の隣に腰を下ろした。
ほのかにいい香りがする。
同じように役職に就く者として、店長の苦労はなんとなくわかる。
上と下の板挟み、つらいんだ。
「福多さんはお仕事お休みなんですか?もしかして今日も富永さんとデートかしら」
人に言われるとデートって言葉の響きがやけに照れくさい。
それに『今日も』って……。
店長が放った『富永さん』の名前に反応したOL3人組が、チラチラとこちらを気にしているのがわかった。
うう……いたたまれない……。
すみません、こんな地味な女が、あなた方の憧れの富永さんの隣で同じ空気を吸っているなんて。
「ええ……まぁ……デートと言うか……先日のお礼に食事の約束を」
「仲良しなんですね。富永さんが仕事関係以外の女性をお店に連れていらっしゃるのは珍しいんですよ」
琴音には買ってあげたりしなかったのかな?
なんだかんだ言ったって恵介は琴音には甘かったみたいだし、すごくおねだりされてそうなんだけど。
「意外……。彼女連れて行って買ってあげたりするのかと……」
「私が知る限りでは、お店に連れてきた女性のことを彼女だって紹介されたことはないですね。取引先の女性の担当者と、取引先の社長とか重役の奥様やお嬢さんが多いです。あとは妹さんですね」
「そうなんですか?」
恵介には妹がいるのか。
それは知らなかった。
世話焼きの恵介だから、きっと妹思いのいいお兄さんなんだろう。
恵介の面倒見の良さの原点はきっとそこにあるんだ。
「よく取引先の社長から娘とのお見合いを勧められるって言ってましたし、お嬢さん方は富永さんを狙ってたのかも知れないですね。当の本人はまったく興味なさそうでしたけど」
隣のベンチの彼女らが言っていたように、上司や取引先の偉い人から娘をもらってくれと言われるってことは、かなり人望が厚いんだろう。
話を聞いてると仕事もできそうな感じだし。
「へぇ……結構モテるのかな。優しいし面倒見がいいし、割と男前ですもんね」
「そうですか?確かに男前だしモテますけど……普段は割とクールで近寄りがたいですね」
「私も第一印象はクールで大人しい人でしたよ。だけど慣れれば誰にでもあんな感じなのかと……」
お酒の力もあったとは言え、実際私は恵介とすぐに打ち解けたから、優しくて面倒見が良くて、相手の懐に入るのが上手な人だと思ってたんだけど。
もしかして私は事情が特殊すぎたから、同情して特別優しくしてくれたのかな?
「福多さんとお店に来られた時の富永さんは、いつもよりずっと楽しそうでしたよ。彼女の前ではあんな風に楽しそうに笑う人なんですね」
彼女って……付き合ってるからそうなんだろうけど、それは外で人に言ってもいいのかな?
隣のベンチの彼女たちはちょっとしたプチパニックだ。
恵介が私をどう思ってるかなんて知らないし、勝手に受け答えして会社の人に勘違いされたら、恵介に迷惑がかかるんじゃ?
「そう見えましたか……?」
「あれ?違うんですか?」
「うーん……どうなんだろう?違うような、違わないような……いや、やっぱり違うかも……」
店長が不思議そうに首をかしげた。
「違わないよ?」
背後から聞き慣れた低い声がした。
「えっ?!」
ビックリして振り返ると、恵介が呆れた顔をしてため息をついた。
OL3人組は更にあたふたしている。
「恵介……いつからそこにいたの?!」
「ちょっと前。声掛けようと思ったけど、話し込んでたからタイミング逃した」
全然気付かなかった……!
って言うか、気配すら感じなかった!!
遠慮なく声掛けてくれたら良かったのに。
「今の言葉はちょっとヘコんだな、俺」
「えーっと……なんで?」
私、恵介がヘコむようなこと何か言ったっけ?
思い出せなくて、今度は私が首をかしげた。
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