Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
一緒にいる理由 (3)
玄関先で恵介を見送った後も、胸の高鳴りはなかなか収まらなかった。
このまま心臓が暴走して息ができなくなってしまいそうな気がして、ベッドの上で仰向けに寝転がり、両手で胸の辺りを押さえて何度か深呼吸した。
「はぁ……まだドキドキしてるよ……」
思わず呟いた独り言は、私しかいない静かな部屋に思いのほか響き渡る。
恵介は帰り際に“月曜日、楽しみにしてる”と言った。
約束をしていなくても、恵介は仕事が終わると私の部屋にやって来るし、帰りが遅くなる日も、少しの時間しか会えなくても、気が付けば毎日欠かさず会っている。
恵介だって仕事で疲れているんだから、夕飯なら一人で済ませた方がラクなはずなのに、私が寂しくないようにわざわざ会いに来てくれてるのかな?
最近では私自身も、恵介と二人で夕飯を食べることが楽しみになっている。
妙ななりゆきで付き合い出して、きっと私が好きなわけでもないはずなのに、恵介はいつも私を目一杯甘やかして“かわいい”と言ったり、わざと意地悪をしたり、そうかと思えば“自信を持て”と励ましたりしてくれる。
一緒にいる時間が長くなるにつれ、いろんな表情や意外な一面が見られて楽しい。
恵介と一緒にいることがどんどん心地よくなって、抱きしめられることも、キスもイヤじゃなくて。
夏樹がいなくなって一人でいる寂しさをほんの少し埋めてもらうだけのつもりが、もっと一緒にいたいと思ったりドキドキしたりするなんて。
好きだと言われたわけでもないのに、恵介の存在はいつの間にか私の中でどんどん大きくなっていて、勘違いしてしまいそうで怖い。
恵介が私に付き合おうと言ったのは、夏樹と琴音にささやかな仕返しをするため。
目一杯優しくして、甘い言葉を囁いて、愛されていると錯覚させて自信を持たせて、地味で消極的な私を少しでも綺麗にしたいんだと思う。
もし本当に私がそうなれたら、琴音ほどの美人とまではいかなくても、夏樹は自分の知っている地味で冴えない私との違いに驚くだろうか。
だけど本音を言うと、私がどれだけ頑張って綺麗になったところで、今更どうにもならないと思う。
例え夏樹が琴音に嫌気がさしていたとしても、私と一緒にいたいから琴音とは離婚するなんて言わないだろう。
もし万が一琴音と別れたとしても、イケメンの夏樹ならすぐに次の人が見つかるはずだし、きっと私のことなんて眼中にない。
それに仕事として割り切れば、自分が担当したカップルが別れてしまうのはいたたまれない。
この短期間でそんな風に思えるようになったのは、恵介がいてくれるからだと思う。
だったら一緒にいる必要なんかないはずなのに“こんな無駄なことはもうやめよう”と私が言わないのは、恵介と一緒にいる理由が欲しいからなのかも知れない。
木曜日から日曜日までは仕事で帰りが遅くなり、いつも通り遅めの夕飯を一緒に食べるだけで終わった。
土日は恵介が私に気を遣って、家で作ったおかずを持ってきてくれたりもした。
 一緒に過ごせたのは1時間半ほどのほんの短い時間だったけど、 恵介に会えるとホッとした。
そして帰り際には、もう少しゆっくり一緒にいられたらいいなと思った。
いつの間にか恵介と一緒に過ごすことが当たり前になっている。
それを当たり前だと思えることは、なんだかちょっと幸せな気分だ。
このまま心臓が暴走して息ができなくなってしまいそうな気がして、ベッドの上で仰向けに寝転がり、両手で胸の辺りを押さえて何度か深呼吸した。
「はぁ……まだドキドキしてるよ……」
思わず呟いた独り言は、私しかいない静かな部屋に思いのほか響き渡る。
恵介は帰り際に“月曜日、楽しみにしてる”と言った。
約束をしていなくても、恵介は仕事が終わると私の部屋にやって来るし、帰りが遅くなる日も、少しの時間しか会えなくても、気が付けば毎日欠かさず会っている。
恵介だって仕事で疲れているんだから、夕飯なら一人で済ませた方がラクなはずなのに、私が寂しくないようにわざわざ会いに来てくれてるのかな?
最近では私自身も、恵介と二人で夕飯を食べることが楽しみになっている。
妙ななりゆきで付き合い出して、きっと私が好きなわけでもないはずなのに、恵介はいつも私を目一杯甘やかして“かわいい”と言ったり、わざと意地悪をしたり、そうかと思えば“自信を持て”と励ましたりしてくれる。
一緒にいる時間が長くなるにつれ、いろんな表情や意外な一面が見られて楽しい。
恵介と一緒にいることがどんどん心地よくなって、抱きしめられることも、キスもイヤじゃなくて。
夏樹がいなくなって一人でいる寂しさをほんの少し埋めてもらうだけのつもりが、もっと一緒にいたいと思ったりドキドキしたりするなんて。
好きだと言われたわけでもないのに、恵介の存在はいつの間にか私の中でどんどん大きくなっていて、勘違いしてしまいそうで怖い。
恵介が私に付き合おうと言ったのは、夏樹と琴音にささやかな仕返しをするため。
目一杯優しくして、甘い言葉を囁いて、愛されていると錯覚させて自信を持たせて、地味で消極的な私を少しでも綺麗にしたいんだと思う。
もし本当に私がそうなれたら、琴音ほどの美人とまではいかなくても、夏樹は自分の知っている地味で冴えない私との違いに驚くだろうか。
だけど本音を言うと、私がどれだけ頑張って綺麗になったところで、今更どうにもならないと思う。
例え夏樹が琴音に嫌気がさしていたとしても、私と一緒にいたいから琴音とは離婚するなんて言わないだろう。
もし万が一琴音と別れたとしても、イケメンの夏樹ならすぐに次の人が見つかるはずだし、きっと私のことなんて眼中にない。
それに仕事として割り切れば、自分が担当したカップルが別れてしまうのはいたたまれない。
この短期間でそんな風に思えるようになったのは、恵介がいてくれるからだと思う。
だったら一緒にいる必要なんかないはずなのに“こんな無駄なことはもうやめよう”と私が言わないのは、恵介と一緒にいる理由が欲しいからなのかも知れない。
木曜日から日曜日までは仕事で帰りが遅くなり、いつも通り遅めの夕飯を一緒に食べるだけで終わった。
土日は恵介が私に気を遣って、家で作ったおかずを持ってきてくれたりもした。
 一緒に過ごせたのは1時間半ほどのほんの短い時間だったけど、 恵介に会えるとホッとした。
そして帰り際には、もう少しゆっくり一緒にいられたらいいなと思った。
いつの間にか恵介と一緒に過ごすことが当たり前になっている。
それを当たり前だと思えることは、なんだかちょっと幸せな気分だ。
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