Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
地味女、モテ男とデートする (5)
さっきからゆるみっぱなしの顔の筋肉が更にゆるんで、心なしかまぶたが重い。
きっと私は今、とんでもなくだらしない顔をして笑ってるんだろうなと思うと、自分で自分がおかしくてカッコ悪くて、思わず笑ってしまった。
「まったくもう……。酔い潰れても知らないからな?」
「平気だよー、恵介が送ってくれるもん。だからおかわりぃ」
「俺が送るから平気って……。男として傷付くわ」
からになったグラスを突き付けると、恵介は呆れ顔でグラスを受け取った。
呆れてるって言うか困ってる?
もうちょっと困らせてやりたいなんて、完全に酔いの回った頭で柄にもないことを思ったりする。
「前も思ったけど、幸ってお酒飲むとちょっと人格変わる?……ってか、意外と酒癖悪い?」
「酒癖悪いなんて失礼な……。ちょっと陽気になるだけでしょー?」
「はいはい、そうだね。でもお酒はもうおしまい。意識なくなる前に帰るよ」
「恵介が飲ませたくせにぃ……」
居酒屋を出て、恵介に手を引かれながらふらつく足取りで歩いた。
「幸、フラフラだな」
「ちゃんと歩いてるでしょー?」
「はいはい、歩いてますよ。でもフラフラだから早いとこタクシー捕まえよう」
恵介は立ち止まって、足元のおぼつかない私を支えながら空車のタクシーを待つ。
私は重いまぶたがくっつかないように必死で堪えながら、流れていく車のライトをぼんやりと眺めた。
夏樹とはこんなことなかったな。
たまに私の部屋で一緒にお酒を飲んでもこんなに酔ったことはなかったし、酔い潰れて介抱してもらった記憶もない。
わがままを言ったこともなかったし、それどころか本音を語ったこともなかったような気がする。
長い間一緒にいたはずなのに、夏樹の前では自分の弱さとかダメな部分をさらけ出せなかった。
呆れられて嫌われるのが怖かったから、ものわかりのいい女のふりをしていた。
恵介と付き合いだして、私は本当は、夏樹にもこんな風にしてもらいたかったんだと気付いた。
今更気付いたって遅いのに。
「幸、着いたよ」
体を優しく揺すられてまぶたを開いた時には、マンションの前に停車したタクシーの中だった。
ぼんやりした頭で、いつの間にタクシーに乗ったんだっけと考える。
どうやら私は、タクシーのシートで恵介にもたれて眠っていたらしい。
「はい、つかまって。降りられる?」
「うん……」
恵介の手を借りてタクシーから降りた。
まだ足元がふらついている。
そんなに飲んだっけ?
2杯目までは覚えてるんだけど。
「幸は酒弱いんだな。あれくらいでこんなに酔うとは思わなかった」
「私、何杯飲んだ?」
「3杯」
私は元々そんなにお酒が強い方じゃないから、あんな風に早いペースで日本酒を3杯も飲んだら酔っ払って当然だ。
これからは飲みすぎないように気を付けよう。
「ごめん……また迷惑かけちゃったね」
「いいよ、これくらいどうってことない」
ホントに優しいな、恵介は。
世話焼きの恵介のことだから、これまでもこんな風に、たくさんの女の子を介抱したり送ったりしてきたんだろう。
エレベーターの中で、恵介が小さく「あっ」と声をあげた。
「どうしたの?」
「思ったより早く幸が酔ったから、美味しい御飯食べてない」
「そうだっけ……。でもお料理はどれも美味しかったよ」
「だろ?また行こう。でもお酒は控えめにしような。今度は美味しい御飯食べさせてやるから」
「うん」
恵介は私をお気に入りの店に連れていってくれて、こんなに酔って迷惑を掛けても、また行こうと言ってくれる。
もし隣にいるのが夏樹だったら、そんな風には言ってくれなかっただろう。
恵介が当たり前のように私にしてくれることは、私にとっては当たり前のことじゃない。
夏樹が私にしてくれなかったことを恵介がしてくれるたびに、どうして恵介はこんなに優しくしてくれるんだろうと思う。
夏樹の代わりなんて、恵介には無理だよ。
恵介は優しすぎるから。
きっと私は今、とんでもなくだらしない顔をして笑ってるんだろうなと思うと、自分で自分がおかしくてカッコ悪くて、思わず笑ってしまった。
「まったくもう……。酔い潰れても知らないからな?」
「平気だよー、恵介が送ってくれるもん。だからおかわりぃ」
「俺が送るから平気って……。男として傷付くわ」
からになったグラスを突き付けると、恵介は呆れ顔でグラスを受け取った。
呆れてるって言うか困ってる?
もうちょっと困らせてやりたいなんて、完全に酔いの回った頭で柄にもないことを思ったりする。
「前も思ったけど、幸ってお酒飲むとちょっと人格変わる?……ってか、意外と酒癖悪い?」
「酒癖悪いなんて失礼な……。ちょっと陽気になるだけでしょー?」
「はいはい、そうだね。でもお酒はもうおしまい。意識なくなる前に帰るよ」
「恵介が飲ませたくせにぃ……」
居酒屋を出て、恵介に手を引かれながらふらつく足取りで歩いた。
「幸、フラフラだな」
「ちゃんと歩いてるでしょー?」
「はいはい、歩いてますよ。でもフラフラだから早いとこタクシー捕まえよう」
恵介は立ち止まって、足元のおぼつかない私を支えながら空車のタクシーを待つ。
私は重いまぶたがくっつかないように必死で堪えながら、流れていく車のライトをぼんやりと眺めた。
夏樹とはこんなことなかったな。
たまに私の部屋で一緒にお酒を飲んでもこんなに酔ったことはなかったし、酔い潰れて介抱してもらった記憶もない。
わがままを言ったこともなかったし、それどころか本音を語ったこともなかったような気がする。
長い間一緒にいたはずなのに、夏樹の前では自分の弱さとかダメな部分をさらけ出せなかった。
呆れられて嫌われるのが怖かったから、ものわかりのいい女のふりをしていた。
恵介と付き合いだして、私は本当は、夏樹にもこんな風にしてもらいたかったんだと気付いた。
今更気付いたって遅いのに。
「幸、着いたよ」
体を優しく揺すられてまぶたを開いた時には、マンションの前に停車したタクシーの中だった。
ぼんやりした頭で、いつの間にタクシーに乗ったんだっけと考える。
どうやら私は、タクシーのシートで恵介にもたれて眠っていたらしい。
「はい、つかまって。降りられる?」
「うん……」
恵介の手を借りてタクシーから降りた。
まだ足元がふらついている。
そんなに飲んだっけ?
2杯目までは覚えてるんだけど。
「幸は酒弱いんだな。あれくらいでこんなに酔うとは思わなかった」
「私、何杯飲んだ?」
「3杯」
私は元々そんなにお酒が強い方じゃないから、あんな風に早いペースで日本酒を3杯も飲んだら酔っ払って当然だ。
これからは飲みすぎないように気を付けよう。
「ごめん……また迷惑かけちゃったね」
「いいよ、これくらいどうってことない」
ホントに優しいな、恵介は。
世話焼きの恵介のことだから、これまでもこんな風に、たくさんの女の子を介抱したり送ったりしてきたんだろう。
エレベーターの中で、恵介が小さく「あっ」と声をあげた。
「どうしたの?」
「思ったより早く幸が酔ったから、美味しい御飯食べてない」
「そうだっけ……。でもお料理はどれも美味しかったよ」
「だろ?また行こう。でもお酒は控えめにしような。今度は美味しい御飯食べさせてやるから」
「うん」
恵介は私をお気に入りの店に連れていってくれて、こんなに酔って迷惑を掛けても、また行こうと言ってくれる。
もし隣にいるのが夏樹だったら、そんな風には言ってくれなかっただろう。
恵介が当たり前のように私にしてくれることは、私にとっては当たり前のことじゃない。
夏樹が私にしてくれなかったことを恵介がしてくれるたびに、どうして恵介はこんなに優しくしてくれるんだろうと思う。
夏樹の代わりなんて、恵介には無理だよ。
恵介は優しすぎるから。
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