Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
おかしな展開 (3)
私の涙も落ち着いてきた頃、富永さんはポケットから取り出したハンカチで優しく涙を拭いてくれた。
「少しは落ち着いた?」
「うん……。つまらないことに付き合わせてごめんね」
「謝らなくていいし、つまらなくはないと思うよ。君はそれだけ真剣に彼が好きだったんだろ」
琴音が富永さんに頼りたかった気持ちが、少しだけわかるような気がする。
たしかにこの人に甘やかされるのは心地がいい。
夏樹は私には甘えてきたけど、私を甘やかしてくれたりはしなかった。
私自身が気恥ずかしくて素直に甘えられなかったことも、夏樹に愛されなかった理由のひとつなのかも。
「どんなに好きでも、もう私のところへは来ないけどね。私がもっと素直で可愛いげのある女なら、夏樹も少しは私を好きになってくれたのかも知れないけど……」
今更言っても仕方のないことばかりが、勝手に口からこぼれ落ちる。
自分の気持ちを一度も伝えなかった私には、夏樹を責める資格なんかない。
我ながら女々しくて鬱陶しい女だ。
こんなことを聞かされて、富永さんもきっと困っているだろう。
「俺さっきから、幸さんが言ったことがずっと気になってるんだけど……」
「……何?」
ずっと気になるほどたいしたことを言ったっけ?
「彼にとっては女じゃなかった、って……」
それか……。
酔っ払いのどうでもいい戯言をよく覚えてるな。
これだけみっともないところをさらしてしまったんだ。
今更気取って取り繕っても仕方ないか。
「最初のうちは女だったから、したんだと思う。だから勘違いしたんだけどね。でもだんだんそういうこともしなくなって……家族みたいな感じになってたのかな」
「なんとなくわかる気はするけど」
「富永さんもそう思うんだ。地味で可愛いげのない私には、女としての価値もないって」
夏樹だけでなく、富永さんもそう思っていると言うことは、誰の目から見ても私には女としての魅力はないって言うことかな。
「幸さんのことじゃなくて。俺も琴音のことは、女とは思えないから」
「あんなに美人なのに?」
美人は3日で飽きるとか言うけれど、どんなに美人でも、見慣れてくるとなんとも思わなくなるのかな?
「俺は依存心の強い女は好きじゃない。頼って当然って顔して甘えられても、かわいくもなんともないよ」
「ふーん……。富永さんってちょっと変わってるね」
「そうかな?俺はむしろ、自分でなんとかしなきゃって頑張ってる女の姿見るとグッと来るよ。俺が支えてやらなきゃって、思いっきり甘やかしてやりたくなる」
男の人もいろいろなんだな。
私は夏樹に頼られても甘えられてもイヤじゃなかったけど……夏樹が私を甘やかしたことなんてなかった。
夏樹が私をどう思っていたのかなんて、今となっては確かめようもないんだけど。
「そんなわけで、俺は幸さんに、彼が求めなかったものを求めたいと思うんだけど、どう?」
……は?
夏樹が私には求めなかったものを求めたいって……何?
思わず首をかしげた。
「あの……意味がわからないんだけど……」
「そのまんまの意味だよ」
缶ビールを飲みながら富永さんの言葉の意味を考える。
仕方なく琴音の世話を焼いていたけど、ホントは世話を焼くより焼いて欲しかったとか?
3年も夏樹の世話を焼いていた私になら、遠慮なく甘えられるって?
“そのまんまの意味”をそんな風に解釈すると、富永さんがやたらと親身になってくれることになんとなく納得した。
「富永さんも夏樹と同じで、ホントは甘えたい人なの?」
私が尋ねると、富永さんは私の手から缶ビールをヒョイと取り上げてテーブルの上に置いた。
「そういう意味じゃなくて。彼に求められなくてずっとしてなかったってことは、君自身も彼を求めなかったからだよね」
えっ、そういう意味?!
「つまり君自身も、彼を男とは思ってなかったんじゃない?」
「私も……?」
そんな風に考えたことはなかったけれど、たしかに私は恥ずかしさもあって、自ら夏樹を求めたりはしなかった。
それどころか、なければないで良しとしていたような気もする。
「少しは落ち着いた?」
「うん……。つまらないことに付き合わせてごめんね」
「謝らなくていいし、つまらなくはないと思うよ。君はそれだけ真剣に彼が好きだったんだろ」
琴音が富永さんに頼りたかった気持ちが、少しだけわかるような気がする。
たしかにこの人に甘やかされるのは心地がいい。
夏樹は私には甘えてきたけど、私を甘やかしてくれたりはしなかった。
私自身が気恥ずかしくて素直に甘えられなかったことも、夏樹に愛されなかった理由のひとつなのかも。
「どんなに好きでも、もう私のところへは来ないけどね。私がもっと素直で可愛いげのある女なら、夏樹も少しは私を好きになってくれたのかも知れないけど……」
今更言っても仕方のないことばかりが、勝手に口からこぼれ落ちる。
自分の気持ちを一度も伝えなかった私には、夏樹を責める資格なんかない。
我ながら女々しくて鬱陶しい女だ。
こんなことを聞かされて、富永さんもきっと困っているだろう。
「俺さっきから、幸さんが言ったことがずっと気になってるんだけど……」
「……何?」
ずっと気になるほどたいしたことを言ったっけ?
「彼にとっては女じゃなかった、って……」
それか……。
酔っ払いのどうでもいい戯言をよく覚えてるな。
これだけみっともないところをさらしてしまったんだ。
今更気取って取り繕っても仕方ないか。
「最初のうちは女だったから、したんだと思う。だから勘違いしたんだけどね。でもだんだんそういうこともしなくなって……家族みたいな感じになってたのかな」
「なんとなくわかる気はするけど」
「富永さんもそう思うんだ。地味で可愛いげのない私には、女としての価値もないって」
夏樹だけでなく、富永さんもそう思っていると言うことは、誰の目から見ても私には女としての魅力はないって言うことかな。
「幸さんのことじゃなくて。俺も琴音のことは、女とは思えないから」
「あんなに美人なのに?」
美人は3日で飽きるとか言うけれど、どんなに美人でも、見慣れてくるとなんとも思わなくなるのかな?
「俺は依存心の強い女は好きじゃない。頼って当然って顔して甘えられても、かわいくもなんともないよ」
「ふーん……。富永さんってちょっと変わってるね」
「そうかな?俺はむしろ、自分でなんとかしなきゃって頑張ってる女の姿見るとグッと来るよ。俺が支えてやらなきゃって、思いっきり甘やかしてやりたくなる」
男の人もいろいろなんだな。
私は夏樹に頼られても甘えられてもイヤじゃなかったけど……夏樹が私を甘やかしたことなんてなかった。
夏樹が私をどう思っていたのかなんて、今となっては確かめようもないんだけど。
「そんなわけで、俺は幸さんに、彼が求めなかったものを求めたいと思うんだけど、どう?」
……は?
夏樹が私には求めなかったものを求めたいって……何?
思わず首をかしげた。
「あの……意味がわからないんだけど……」
「そのまんまの意味だよ」
缶ビールを飲みながら富永さんの言葉の意味を考える。
仕方なく琴音の世話を焼いていたけど、ホントは世話を焼くより焼いて欲しかったとか?
3年も夏樹の世話を焼いていた私になら、遠慮なく甘えられるって?
“そのまんまの意味”をそんな風に解釈すると、富永さんがやたらと親身になってくれることになんとなく納得した。
「富永さんも夏樹と同じで、ホントは甘えたい人なの?」
私が尋ねると、富永さんは私の手から缶ビールをヒョイと取り上げてテーブルの上に置いた。
「そういう意味じゃなくて。彼に求められなくてずっとしてなかったってことは、君自身も彼を求めなかったからだよね」
えっ、そういう意味?!
「つまり君自身も、彼を男とは思ってなかったんじゃない?」
「私も……?」
そんな風に考えたことはなかったけれど、たしかに私は恥ずかしさもあって、自ら夏樹を求めたりはしなかった。
それどころか、なければないで良しとしていたような気もする。
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