Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
おかしな展開 (2)
……ってい言うか、琴音は富永さんに一生面倒みてもらって、他の男の人と好き放題遊ぶつもりだったとか?
「ふーん……生活の面倒みてもらって、他の男の人と遊ぶなんて勝手だよね」
「俺は琴音のそういうところも受け入れてくれる男がいたら、それでいいと思ってたんだけど……」
なるほど。
ほってはおけないけど、早く手放したかったから泳がせていたと……そういうことか。
「夏樹は琴音のそういうところもわかった上で結婚したのかな?」
「どうかな。琴音はとにかく早く結婚したかったみたいだし、バレないうちに急いで結婚したのかもね」
琴音にそんな強い結婚願望があったのは意外だった。
美人だからモテたけど、結婚には向いてないと言う理由で男の人が離れていって、なかなか結婚はできなかったのかも。
一度も口に出したことはなかったけれど、私にもいずれ夏樹と一緒になれたらと思っていた頃があった。
夏樹もそう思ってくれているのかもと思ったから、焦って台無しにしたくなくて、私との関係をどうしたいのか、あえてハッキリとは聞かなかった。
結局それは単なる私の自惚れだったんだけど。
「夏樹……私には好きだとか付き合おうとか一度も言ってくれなかったのに、琴音とはあっという間に結婚するんだもん。それだけ琴音が好きってことだよね」
「勢いだけって可能性もあるけどね」
「勢いもあったかも知れないけど……それでも夏樹はずっと世話焼いてた地味な私より、美人の琴音を選んだんだよ。ここ何年かは私なんか女とも思われてなかったんだと思う。もしかしたら、私以外にも都合のいい女がいたのかもね」
また込み上げてくる虚しさをかき消してしまおうと、缶に残っていたビールを一気に飲み干した。
ビールは苦いばかりでちっとも美味しくない。
それなのに酔いばかりが回って、また私の思考回路を狂わせる。
「おかげで気付いたわ。私みたいな地味な女は、人より努力しないと誰にも愛してもらえないって。愛されるどころか女でもない」
言葉にしてみるとまた自分が惨めに思えて、唇から自嘲気味な渇いた笑いがもれた。
私は今、きっと世界一情けない顔をしているんだろう。
富永さんは小さく息をついて、優しい笑みを浮かべた。
「あのさ。君、彼が来なくなってから一度も泣いてないでしょ」
「そもそも付き合ってたわけでもないし……そんなことでいちいち泣かないよ……。いい歳した大人だからね」
うつむいて呟くと、大きな手が私の頭を優しく撫でた。
「大人だって悲しい時は思いきり泣いていいんだよ。そういう気持ち吐き出さずに溜め込んでたら、しんどいだろう?」
絶対に泣かないと思っていたのに、うつむいた私の視界は次第にぼやけて、気が付くとテーブルの上にポトリポトリと涙が落ちていた。
人前で泣くなんて恥ずかしい。
慌てて手の甲で涙を拭った。
それなのに涙はとどまるところを知らず、次から次へと溢れ出す。
「なんだ……ちゃんと泣けるんじゃん」
「泣いてなんか……」
みっともない泣き顔を見られたくなくて、顔を上げることもできない。
うつむいて涙を拭っていると、富永さんは私のすぐそばに座って頭を撫でてくれた。
「頑張りすぎ。今だけ自分を解放してやりなよ。そうすればきっと少しはラクになれるから」
「うっ……」
嗚咽が堪えきれなくなって小さな声をあげると、富永さんは私の肩を抱き寄せた。
「遠慮しないで思いっきり泣きな。俺が最後まで責任持ってやるって言っただろ?」
堰を切ったように涙が溢れた。
それからしばらくの間、私は富永さんの肩に寄りかかって、声をあげて泣いた。
富永さんはただ黙ったまま私を抱き寄せて、頭を撫でてくれた。
悲しいとか悔しいとか通り越して涙も出ないなんて思ってたけれど、私は本当は、こんな風に声をあげて誰かの胸で泣きたかったのかも知れない。
「ふーん……生活の面倒みてもらって、他の男の人と遊ぶなんて勝手だよね」
「俺は琴音のそういうところも受け入れてくれる男がいたら、それでいいと思ってたんだけど……」
なるほど。
ほってはおけないけど、早く手放したかったから泳がせていたと……そういうことか。
「夏樹は琴音のそういうところもわかった上で結婚したのかな?」
「どうかな。琴音はとにかく早く結婚したかったみたいだし、バレないうちに急いで結婚したのかもね」
琴音にそんな強い結婚願望があったのは意外だった。
美人だからモテたけど、結婚には向いてないと言う理由で男の人が離れていって、なかなか結婚はできなかったのかも。
一度も口に出したことはなかったけれど、私にもいずれ夏樹と一緒になれたらと思っていた頃があった。
夏樹もそう思ってくれているのかもと思ったから、焦って台無しにしたくなくて、私との関係をどうしたいのか、あえてハッキリとは聞かなかった。
結局それは単なる私の自惚れだったんだけど。
「夏樹……私には好きだとか付き合おうとか一度も言ってくれなかったのに、琴音とはあっという間に結婚するんだもん。それだけ琴音が好きってことだよね」
「勢いだけって可能性もあるけどね」
「勢いもあったかも知れないけど……それでも夏樹はずっと世話焼いてた地味な私より、美人の琴音を選んだんだよ。ここ何年かは私なんか女とも思われてなかったんだと思う。もしかしたら、私以外にも都合のいい女がいたのかもね」
また込み上げてくる虚しさをかき消してしまおうと、缶に残っていたビールを一気に飲み干した。
ビールは苦いばかりでちっとも美味しくない。
それなのに酔いばかりが回って、また私の思考回路を狂わせる。
「おかげで気付いたわ。私みたいな地味な女は、人より努力しないと誰にも愛してもらえないって。愛されるどころか女でもない」
言葉にしてみるとまた自分が惨めに思えて、唇から自嘲気味な渇いた笑いがもれた。
私は今、きっと世界一情けない顔をしているんだろう。
富永さんは小さく息をついて、優しい笑みを浮かべた。
「あのさ。君、彼が来なくなってから一度も泣いてないでしょ」
「そもそも付き合ってたわけでもないし……そんなことでいちいち泣かないよ……。いい歳した大人だからね」
うつむいて呟くと、大きな手が私の頭を優しく撫でた。
「大人だって悲しい時は思いきり泣いていいんだよ。そういう気持ち吐き出さずに溜め込んでたら、しんどいだろう?」
絶対に泣かないと思っていたのに、うつむいた私の視界は次第にぼやけて、気が付くとテーブルの上にポトリポトリと涙が落ちていた。
人前で泣くなんて恥ずかしい。
慌てて手の甲で涙を拭った。
それなのに涙はとどまるところを知らず、次から次へと溢れ出す。
「なんだ……ちゃんと泣けるんじゃん」
「泣いてなんか……」
みっともない泣き顔を見られたくなくて、顔を上げることもできない。
うつむいて涙を拭っていると、富永さんは私のすぐそばに座って頭を撫でてくれた。
「頑張りすぎ。今だけ自分を解放してやりなよ。そうすればきっと少しはラクになれるから」
「うっ……」
嗚咽が堪えきれなくなって小さな声をあげると、富永さんは私の肩を抱き寄せた。
「遠慮しないで思いっきり泣きな。俺が最後まで責任持ってやるって言っただろ?」
堰を切ったように涙が溢れた。
それからしばらくの間、私は富永さんの肩に寄りかかって、声をあげて泣いた。
富永さんはただ黙ったまま私を抱き寄せて、頭を撫でてくれた。
悲しいとか悔しいとか通り越して涙も出ないなんて思ってたけれど、私は本当は、こんな風に声をあげて誰かの胸で泣きたかったのかも知れない。
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