最強のカップルはただ単に楽しみたい ~最強(トール)と天魔(パートナー)の学園無双~

志水零士

第二章 ~入学直後~  6 そろそろ

「お、いたいた。ノイ、そろそろ教室に向かうぞー」

 ノイは相馬が本を読んでいた場所とは別の読書スペースにいた。相馬は慣れた手つきでノイの顔と本の間に手を出し、ノイに向かってそう言う。
 意地悪ではない。そうでもしないと集中が切れないため、ノイにもしっかり許可を取ってある手段である。

「……ん、もうそんな時間?」
「さぁ? だが、入学式にも出てないわけだし、そろそろ行った方がいいだろ」
「なるほど。それじゃあ、片付けて来るの」
「その本の山を、一人で全部か?」

 ノイの目の前には、百を優に上回るほどの本が、無造作に置かれていた。さすがにこれらを片付けるのには、しばらくの時間が必要だろう。

「……よろしく頼むの」
「うい、了解」

 そう言うと、相馬は先ほどの命令を口にする。ノイには知られているため、聞かれていても問題はない。

「我が父、オーディンの眷属たる大いなる二羽のワタリガラス。その片方にして、知を象徴するムニンよ。その膨大の知の一部を、我に貸し与えたまえ」

 テーブルの上の本を納めるべき場所の情報が流れて来る。そして相馬は、次々にその場所を指を差した。

 ――白支配マイカラー、起動――

 服の一部を操り、ノイは本を相馬が示した場所に即座に片付けていく。二人だからこそできる、連携であった。
 一分も経たずに本を片付け終えると、ノイは相馬に向かって言う。

「やっぱり、神話は優秀なの」
「その件なんだが、俺らだけで独占してるのもつまらんし。機を見て広めてみるのはどうだ?」
「……確かに、それはいいかもしれないの」
「だろ? だがまぁ、しばらくは俺たちの力を知らしめるのに費やした方がいいだろうがな」
「なるほど……それじゃ、そうすることにするの」
「よし。ってことで、教室に行くか」
「ん。さっさと向かうの」
「ああ、素早くな」

 そして二人は、巧みな動きで本棚などの障害物をよけながら、超高速で図書館の外へと向かった。図書館の中を走っている時点で、まともな思考ではないのだが。
 図書館を出た後も、二人の走りは止まらなかった。二人は今までに重ねて来た経験によって、素の状態でもかなりの身体能力を持つのである。

 二人は無数の建物の一つに入ると、その中の一室のドアを開けた。一着と二着――つまり、まだ教師やクラスメイトたちは来ていなかった。

「んー、まだ入学式は終わってないみたいだな」
「どうやらそのようなの。最前列にでも腰掛けて、待つことにするの。……さっき呼んだ本のおかげで、考えることはいくらでもあるし」
「ああ、それはいいな。俺も、さっき呼んだ神話から新しい命令文を考えるか」

 そう言うと二人は席に座り、それぞれ考え込み始めた。




問題です。入学式が予定通りに終わっていれば、既に終わっている時刻である。
さて、何故入学式が終わるのが、遅れているのでしょう。
正解は次の話で。

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