最強のカップルはただ単に楽しみたい ~最強(トール)と天魔(パートナー)の学園無双~

志水零士

第二章 ~入学直後~  4 あえて

「因みにだが、お前は俺たちが今からでも入学式に行くべきだと思うか?」
「そりゃあそうですよ。それと、自分はレカルです」
「まぁ、そうだよな。……それじゃ、行かないことにする」
「いやいやいや……話、聞いていましたか?」
「もちろん聞いていたぞ」
「それなら、なんでそんな考えになるんですか?」

 徐々に顔に疲れが見え出すレカル。相馬の行動に慣れていない常人の反応としては、至極真っ当なものである。
 そんなレカルの状態なんて全く気にせず、相馬は愉快そうな笑みを浮かべて言う。

「いいか、レカル?」
「……呼び捨てですか。一応私は、相馬くんより年上なんですがね」
「そんなことは知らん。それでレカルは、学園長の正体まで聞いているのか?」
「……ええ。聖域ワンマンアーミー、ですよね。自分に教えてくれた教師も、かなり驚いていました」
「ああ、そうだ。一つ前の、数十年に渡って序列一位だった男が二位であった時の一位。一人で一つの軍隊と同等の力を発揮することから、その名を受けた男。まぁ、化け物の一種だな」
「……それで、それがどういう話に繋がるんですか?」

 全く話の流れが掴めないという表情をするレカルに、相馬は更に笑みを深めて言う。

「昨日の試験で、ノイは試験管を完膚なきまでに叩きのめした」
「……何かの冗談ですか?」
「で、それによって試験の続行が不可能になった試験管の代わりに学園長が戦ってくれて、俺が勝ったというわけだ」
「……相馬くんは、化け物か何かですか?」
「いや、それはさすがに失礼じゃないか。せめて規格外とか、そこらへんにしといてくれよ」
「貴方がそれを言いますか……さっき、学園長のことを化け物と評した貴方が」

 呆れ顔で、レカルは相馬の言動につっこんだ。しかし相馬は、それを軽く流して言う。

「ま、そんなことはどうでもいいんだよ。で、それだけの実力を持つ俺たちが学園に入学したのは、一体どういう理由だと思う?」
「……分かりません。何故ですか?」
「学園長からの依頼だよ。学園に新しい風を吹き込んでほしいっていうな。そのためには、目立った方がいい。学園長がつくってくれたスピーチ枠をそのまま使わせて貰うより、あえてスルーしたほうがいいだろ」

 実際は新しい風なんて甘いものではなく改革とでもいうべきものだが、間違ってもいない。ただし、そこにそこまで大きなものではないように勘違いをさせようとする、相馬の意志が存在しないかと言えば決してそんなことはない。

「……なんというか、ただの司書である私が聞いていい話だったんですかね?」
「大丈夫大丈夫。漏れたら真っ先に、レカルを叩きのめしに来るだけの話だから」
「それは大丈夫とは言わない気がするんですが……一つだけ、聞いてもいいですか」
「ああ、いいぞ」
聖域ワンマンアーミーの異名を持つ学園長を倒した相馬くんの正体は、いったいなんなんですか?」
「……分かってって言ってるだろ? それで間違いないよ」
「……そうですか」

 かなりの実力者で、神話を参考にしているという情報、それだけの情報があれば、相馬の正体に行きつくのはそれほど難しくはなかった。





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