最強のカップルはただ単に楽しみたい ~最強(トール)と天魔(パートナー)の学園無双~

志水零士

第一章 ~入学試験~  15 ノイの試験(中)

「……相馬さん。ノイさんの現夢想マジックって何なんですか?」

 白い化け物たちが教師を襲っているのを見て目を見張りつつ、フェイロはそう質問した。相馬が答えるより前に、フェイロは更に言葉を紡ぐ。

「ノイさんの現夢想マジックを、仮に白い何かを呼び出し、それを操るものだとしましょう。ですが、それだけでかなりの性能の現夢想マジックになるはずです。ただの現象を起こしているのならともかく、一時的とはいえ、無から何かを生み出しているわけですから。ですがあの白い何かは、それに加えてあの教師の現夢想マジックを破った。……説明してください。あれは、一体――」

 そこで相馬は、フェイロの額を小突いた。相馬はあくまで冷静に、フェイロに向かって言う。

「興奮しすぎだ。一旦落ち着け」
「……すみません。冷静さを欠いていました」
「まぁ、それは分からなくもないがな……まず、俺にノイの現夢想マジックについて話す義務はない。だが、俺たちもお前の現夢想マジックについて聞いたわけだからな。少しだけ、話してやる」
「それはありがたいんですが……あれ、放っておいていいんですか?」

 そう言ったフェイロの視線の先では、教師を襲っていた三体の怪獣がそれぞれ三つに分裂し、九体の獣となって再度襲い掛かっていた。更に絶望的な状況に顔を青くする教師に、受験者たちからの同情的な視線が多数寄せられた。具体的な効果はない。
 明らかにやり過ぎなのだが、相馬はフェイロに対して、適当に言葉を返した。

「多分大丈夫だろ。あいつの目的からして、気絶する前にはやめるだろうし。……いや、気絶させて起こす可能性もあるか? まぁ死にはしないから大丈夫だろ」
「大丈夫かどうかの基準が、僕とはかけ離れてるんですが……」
「気にしたら負けだ。で、ノイの現夢想マジックについての説明だが……フェイロの考えに、訂正を入れて詳細を追加する感じでやろうか」
「訂正と詳細ですか。では、それでお願いします」

 明らかに無理やりな話題転換だったが、さすがに慣れたらしい。特に何かを言うこともなく、フェイロは普通に返答した。

「了解。それじゃあ訂正だが、ノイは何も生み出してはいない。単に変質させ、操作しているだけだ」
「……まさか、あの白い服ですか?」
「正解だ。因みに服の形が変わっていない理由は、あの生き物やさっきの翼は、中身のない張りぼてだからだな」
「なるほど……どれほど繊細な技術が必要なのか、僕には想像もつきませんが、とりあえず納得はしました」
「で、詳細の方は、あの白いのが服をどう変化させたものかって話だ。って言っても、これについては説明が難しいんだがな……体積を持った、『白』という概念そのものに変化させている、とでも思っておいてくれ」
「分かりました。……もしかして、それが教師の現夢想マジックを破れた理由ですか?」
「多分な。どれくらいまでの攻撃を無効化出来るのかは知らないが、正直それはどうでもいい。重要なのは、さっき教師の体は透けていたが、完璧に透明になっていたわけじゃないってことだ。『白』という概念そのものである干渉しているのは、あくまで色だからな。色さえあれば、間接的に物体そのものに干渉したんだろ」
「なるほど」

 そんな話を淡々とする相馬とフェイロに、恐ろしいものを見るような目を周りの受験者は向けていた。現夢想マジックを使わせることも出来ずに自分たちは教師に負けたのに、ノイはそんな教師を一方的に攻撃している。そんな尋常じゃない状況なのに、自然に会話をしているのだから、そりゃあそんな目にもなるだろう。

 そして戦闘は、終盤に突入する。




 ――派生技ブランチ白紙アイソレーション、展開――








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