最強のカップルはただ単に楽しみたい ~最強(トール)と天魔(パートナー)の学園無双~

志水零士

第一章 ~入学試験~  13 フェイロの試験(後)

 フェイロは、試験が既に始まっているにも関わらず、歩いて教師の方に向かう。とても自然に、まるで試験が始まっていないかの如く。

 意識的に自然な行動をとることは、かなり難しいことだ。ほとんどの人は、どこかしら不自然なところが出てくる。
 その理由としては、自分の行動を掌握しきれていないことや、緊張によるミスなどが上げられる。そしてフェイロは、周囲に環境に溶け込むために、自分の行動を完璧に制御できるようになっていた。緊張も、さっき相馬にやられた強引な手法によって感じていない。
 表情にも不備はない。何の感情も読み取れない、完全なる無表情だ。

 相馬たちの隣で、受験者たちが騒めく。それも仕方がないことだろう。
 完全な想定外故に、読めないのだ。フェイロが何を狙っていて、何のためにこのような行動をとっているのかが、全く分からないのである。

 そして、それが分からないのは、試験の相手を務める教師も同じ。未知に対して本能的な恐怖を覚えた彼は、話しかけようと口を開いて――その瞬間、フェイロは動く。

「――ッ 」

 ひっそりと自分の真後ろに集めておいた空気を、フェイロは一種にして拡散させた。その反動によって先生の方に、文字通りに飛ぶ。
 話しかけようとした瞬間の行動で不意を突かれたため、教師は戦闘態勢がうまくとれていなかった。そのせいで急に変わった速度に動揺し、動きに遅れが生じる。

 空中で体勢を整え、フェイロは拳を振りかぶる。失敗は許されない、たった一度の攻撃。
 放たれた拳は、教師の鳩尾に完璧な角度でぶつかった。かなりの衝撃だったはずだったが、教師は数歩後ずさっただけで、意地で転倒だけは避けた。

「うぐ……はぁ。全く、容赦がねぇなぁ………」
「す、すみません」
「いや、あやまる必要はないんだけどな……文句なしの、合格だ。このまま強くなっていったら、覚醒者ブレイバーの中でもかなりの実力者になれるんじゃないか? 将来的には、上位十人に入るのを狙うのもいいかもしれないぞ?」
「さすがにそこまでは……今の攻撃だって、パンチ自体には現夢想マジックを使っていないんですよ。つまり、実際に邪生タイラントと戦う際の攻撃手段にはなりえないんです」

 現夢想マジックの作用していない拳でのパンチ。相馬が言った『人相手だからこそ、取れる選択肢』とは、こういう意味だった。

「そりゃあ並大抵の努力じゃあ無理だろうが、目標にするのは自由だろ? とりあえず、戻っていいぞ」
「あ、はい。ありがとうございました」

 一礼した後、教師のもとから戻ってくるフェイロ。彼は微笑みながら、相馬とノイの二人に視線を向けている。
 それに対して二人は、フェイロの方を見ていた。ただ、視線が向けられているのはフェイロではなくその後ろ、教師の方だ。

「相馬。悪いけど、次の順番を譲って欲しいの」
「別にいいが……やり過ぎるなよ」
「努力はするの」

 そう言って、ノイは教師の方へ向かう。ノイとすれちがったフェイロは、彼女の鋭く細められた瞳に恐怖を覚えた。

「そ、相馬さん! ノイさんが滅茶苦茶怖かったんですが、どうかしたんですか?」
「まぁ……ちょっとな」

 絶対ちょっとどころの話じゃないと、フェイロはそう思ったが、空気を読んで黙っていることにした。

 ――白支配マイカラー、起動――

 それぞれの長さが十メートルを優に上回る、四対の純白の翼。さも背中に付いているように展開したそれを、ゆらゆらと揺らしながらノイは堂々と言う。

「さぁ、早く試験を始めるの」




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