最強のカップルはただ単に楽しみたい ~最強(トール)と天魔(パートナー)の学園無双~

志水零士

第一章 ~入学試験~  8 瞳

『時間だ。悪いが、これ以降に来たものは、受験者として認めることは出来ない。つまり今年度の受験者は、これで全員ということだ』

 二人が列に並んでしばらくして、試験会場全体にそんな声が響き渡った。自然と、受験者たちの間に緊迫感が走る。

『今から、百人ごとのグループに分ける。そしてその後、この学園の教師たちと順番に戦ってもらう』
 教師の指示に従い、みんなが動き始める。そんな中、二人はボーっと話し合う。

「今の大声って、現夢想マジック邪生タイラントの体を使った道具、どっちだと思う?」
「多分だけど、現夢想マジックだと思うの」
「……へぇ。どうしてそう思ったんだ?」

 その反応で、ノイは相馬が逆の考えだということに気づいた。ただ、だからと言って、彼女の考えが変わったりはしない。
 二人の関係は相手に合わせるのではなく、正面衝突を仕掛け合うものなのだ。常日頃からぶつかり合っているからこその、二人の関係なのである。

「相馬は現夢想じゃないと思ってるみたいだけど、私は邪生タイラントの体は、あくまで戦闘目的で使われていると思うの。便利グッズみたいなものの研究開発なんかじゃなくて」
「それはそうかもな。だが、邪生タイラントの素材を使った道具――正確には、特異物エルピスって言うらしいが、ともかくその研究は様々な国で行われてる。その途中で、偶然声を大きくする特異物エルピスの作り方が分かって、その試作品をどこかの国が学園に寄贈した可能性は、無くもないんじゃないか?」
「……基本的に、邪生タイラントの死体を使った道具――何だっけ?」
特異物エルピスな」
「そうそれ。で、特異物エルピスの性質っていうのは、もととなる邪生タイラントの特性と、ほとんど一致するの」
「……ああ。つまり、大声を出すような邪生タイラントの死体を使わないと、そんな性質の特異物エルピスは出来ないってことか」
「そう。そして、大音量を発生させるなんていう、自分たちにも害になる特異物エルピスは戦闘には使えない。それなのにそんなものを作り出そうとするわけがないから、副産物として声を大きく出来るような特異物エルピスが作成出来るわけがないの」
「なるほどなぁ……」

 周りの様子なんて構わずに、意見交換をする二人。彼らは緊張なんて、全くしていなかった。
 そして、良くも悪くも異物は目立つ。周囲の受験者たちは、かなり彼らに注目していた。

「あ、あの」
「ん? どうかしたか?」

 勇気を出し、一人の少年が二人に声を掛けた。周りの視線を浴びながら、彼は言う。

「いえ、その……みんなが緊張している中で、お二人だけは普通に話していたので、どうやったら緊張しないのかを知りたくて……お、お願いします!」

 そう言うと、彼は頭を下げた。突然の行動に、受験者たちが騒めく。
 しかし相馬はニヤリと笑うと、彼に向かって言う。

「いいぞ。とりあえず、顔を上げてくれ」
「は、はい!」

 顔を上げた男は、相馬の顔に視線を向ける。そして思わず、息を呑んだ。
 正面に彼の顔があったため、他の人は見えていない。虚空のように果てしなく黒い、その瞳は。

 目を鋭くしているわけでもなければ、殺気を放っているわけでもない。ただ、隠していないだけだ。
 本人が今までに見て来たもの。そのほとんどが、瞳には刻まれている。
 そして相馬の瞳を見た男は、その壮絶な経験を垣間見た。そして――恐怖した。







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