最強のカップルはただ単に楽しみたい ~最強(トール)と天魔(パートナー)の学園無双~

志水零士

第一章 ~入学試験~  7 感覚の違い

「ここが試験会場か? 思ったより多いな」

 試験会場はとても広い広場のようなところだった。そこに、数万人ほどの受験者が並んでいる。

「そう? 世界中から集まって集まってるんだったら、少ないくらいだと思うんだけど」
「……それもそうかもしれない。もしかしたら、身分証明書の発行がかなり難しいのかもな。なんか、王様のサインが必要だとかって話だったし」
「そうなの?」
「ああ。さっき、受付のあの人がそう言っていたからな。彼女、出してすぐにあのカードが何なのかに気づいたわけじゃなかったから」
「なるほど。つまり、誰彼構わず試験を受けれるわけではない、と。……もったいない話なの」
「それは俺も同感だな。俺みたいな大器晩成型も、中にはいるだろうに」

 相馬とノイは好き勝手に意見を述べているが、学園だって馬鹿じゃない。全年齢を対象とすることで、そこらへんもカバーしているのだ。
 もっとも、十歳から十五歳の間に、年齢層が偏っているのも事実ではあるのだが。例に漏れず、相馬とノイも十四歳である。

 ただ、二人の意見が正しいかどうかはともかく、二人はそんなことを考えている場合ではなかった。みんなが並んでいるにも関わらず、離れたところからそれを眺めていたら、当然のことだが目立つ。

「おい! そこの二人、さっさと並べ  着いたらすぐに並ぶようにって、受付のところで言われてるだろうが!」

 一人の男性教師が、二人に向かってそう怒鳴る。だが、二人はそんな話は聞いていない。
 これは、受付のあの人が伝え忘れたというわけではない。確かに、そのことを教えてくれる先生もいるが、それは単にそういう先生もいるというだけのことであり、別に義務だったりするわけでもないのだ。

 だが、試験を受けさせてもらうものとして、ここは納得がいかなくても、反論したりはしないところだ。……普通は。

「そんな話は聞いてないぞ? なぁ、ノイ?」
「私も聞いてないの。情報伝達ミスじゃないの?」

 そんなことを言われたら、まぁ怒る。彼だって、沢山の受験者の誘導などをして、かなり疲れているのだ。

「……お前、いつまでもそんな態度でやっていけると思うなよ。ほら、早くいけ!」

 教師は相馬の肩を叩くことで、列に並ぶように促そうとした。しかし彼は、それを実行できなかった。

 ――白支配マイカラー、起動――

「何のつもりなの?」
「ひっ 」

 大剣、直剣、大斧、首狩り包丁、ギロチン……etc。純白のそれらが、教師を囲むように現れた。
 言うまでもなく、これはノイの白支配マイカラー――その基本効果である、白い物体の操作によるものだ。ただ、無数の切断具を形成しているのも関わらず、彼女のドレスの形状はほとんど変わっていない。
 ノイが形成するものは、基本的に張りぼてなのだ。それだけでなく、物体は彼女が操作し始めた瞬間、粒子の集合体ではなくそういう体積のものへと変化する。
 つまり、しようと思えばいくらでも薄くできるのだ。そしてどんなに薄くても、強度は現夢想マジック依存のため問題無い。

 そんな多種多様な脅威にさらされた彼は、へたり込むことも出来ず、微妙な態勢を維持し続ける。返答を待つノイに向かって、相馬は言う。

「ノイ。多分その人、俺に早く列に並ばせようとしただけだぞ」
「……ああ、そう。それならさっさとそう言うの」

 一瞬にしてそれらを服に戻すと、二人は列の方に向かう。特に、何もなかったように。
 彼らからしたら、戦場ではあんなことをしたら殺されてもおかしくないのだから、おかしいことをやっているつもりはなかったのだ。それが、一般人に理解できるかは別として。

 幸いなことに、受験者たちは反対の方を向いていたため、見ていた人はいなかった。二人のその異常性に気づいたのは、まだ彼一人だけである。





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