最強のカップルはただ単に楽しみたい ~最強(トール)と天魔(パートナー)の学園無双~
第一章 ~入学試験~ 6 壁の中に入って
「お、うまくいったか?」
テントから出て来たノイに、門に通らずに待っていた相馬が声を掛けた。対してノイは、複雑そうな表情で言う。
「まぁ、一応。……受付の人、かなり疲れてたけど」
「ああー……やっぱりそうなったか。まさかあんな仕掛けが組み込まれてなんてな……」
「全くなの。多分カードに所有者が身分証明に使った時にどこかに連絡をする仕掛けがあって、声の方はその連絡先の覚醒者の現夢想によるものだったんだろうけど……そういう技術は、広く公表するべきなの」
ノイが不満だったのは、あくまでそこだったらしい。普通の人なら何か言いたくなるところだろうが、長年の付き合いの相馬はまともに返答したりはせず、当然のようにスルーして話を変える。
「あの人には、かなり迷惑を掛けたな。今度、匿名で滋養強壮によくきく薬でも送った方がいいかな?」
「……多分だけど、何もしないのが一番だと思うの」
「その理由は?」
「突然そんなのが送られてきたら、勘のいい人なら私たちのことを疑ってもおかしくない。そして、私たちとの遭遇がトラウマになっている可能性は、さっきの様子を見る限りかなり高いの」
ノイの考えを聞いて、相馬は押し黙った。彼自身も、確かにその可能性は十分あると思ってしまったのだ。
「……それもそうだな。それじゃあ、出来るだけ彼女には関わらないように気をつけるとして――入りますか」
「ん」
そして二人は、壁の中へと足を踏み入れた。一瞬にして、空気が変わる。
乱雑に匂いが入り混じる外の空気とは違い、心を穏やかにしてくれるほどに澄み切った空気。気温も、高くも低くもない丁度いい適温だ。
そしてその様相は、相馬にその凄さ以上の衝撃を与えた。
「……ノイ。悪いんだが、もう一回この空間を解析してもらえないか」
「了解なの」
自分の解析した結果が疑われたところで、ノイが怒ることはない。もっともそれは、相馬限定ではあるが。
愛情故に、などと言った理由ではない。今までの経験から、根拠も無いのにそんなことは言わないと、彼のことを信頼しているのだ。
――白支配、起動――
――派生技・無の浸食、展開――
目を閉じ、彼女は解析に集中する。さっきは一瞬でやったことを、今度はじっくりと、時間をかけて行う。
「……解析終了なの。結論から言うと、具体的な効果は邪生の弱体化と継続ダメージだけだったけど、それ以外に流れのようなものが存在していたの。……こう、うまくは言い表せないんだけど」
もどかしそうに、ノイは顔を顰めた。その頭を、相馬はポンポンと叩く。
「それだけで十分だよ。俺の予想が当たっていたら、これは誰も理解できなかったもののはずだからな。何らかの流れがあるってことに気づけただけ凄いさ」
「そうなの?」
「ああ。あの人の現夢想はそういうものだからな。ノイも異名くらいは知ってるはずだぞ? ……この学園の長は正体不明って話だったが、彼だとしたら納得だ。」
「……私はちょっと、思い浮かばないけど」
「なら、試験が終わった後に会いに行ってみるか?」
理屈になっていない。ノイが分からないなら、相馬が教えてあげればいいだけなのだ。
しかし二人の間では、こういうことはよくあることだ。立場が逆のパターンも、またしかり。
「そんな簡単に、学園長に会えるもんなの?」
「普通は無理だろうが、何事にも例外はある。手紙の送り主はおそらく学園長だから、多分会うのは難しくないだろ。彼なら、俺たちのことを知っていてもおかしくないからな」
「……ますます誰なのか気になるの」
「それは、試験後のお楽しみってことで。……そろそろ、試験会場の方に向かうか」
「了解なの」
そして二人は、試験会場に向かって歩みを進める。
昨日は投稿できませんでしたが、別に毎日投稿するって言ってるわけでもないですし……いえ、すみません。
フォローといいねをよろしくお願いします。いいねは、面白いと思った話だけでいいので。
テントから出て来たノイに、門に通らずに待っていた相馬が声を掛けた。対してノイは、複雑そうな表情で言う。
「まぁ、一応。……受付の人、かなり疲れてたけど」
「ああー……やっぱりそうなったか。まさかあんな仕掛けが組み込まれてなんてな……」
「全くなの。多分カードに所有者が身分証明に使った時にどこかに連絡をする仕掛けがあって、声の方はその連絡先の覚醒者の現夢想によるものだったんだろうけど……そういう技術は、広く公表するべきなの」
ノイが不満だったのは、あくまでそこだったらしい。普通の人なら何か言いたくなるところだろうが、長年の付き合いの相馬はまともに返答したりはせず、当然のようにスルーして話を変える。
「あの人には、かなり迷惑を掛けたな。今度、匿名で滋養強壮によくきく薬でも送った方がいいかな?」
「……多分だけど、何もしないのが一番だと思うの」
「その理由は?」
「突然そんなのが送られてきたら、勘のいい人なら私たちのことを疑ってもおかしくない。そして、私たちとの遭遇がトラウマになっている可能性は、さっきの様子を見る限りかなり高いの」
ノイの考えを聞いて、相馬は押し黙った。彼自身も、確かにその可能性は十分あると思ってしまったのだ。
「……それもそうだな。それじゃあ、出来るだけ彼女には関わらないように気をつけるとして――入りますか」
「ん」
そして二人は、壁の中へと足を踏み入れた。一瞬にして、空気が変わる。
乱雑に匂いが入り混じる外の空気とは違い、心を穏やかにしてくれるほどに澄み切った空気。気温も、高くも低くもない丁度いい適温だ。
そしてその様相は、相馬にその凄さ以上の衝撃を与えた。
「……ノイ。悪いんだが、もう一回この空間を解析してもらえないか」
「了解なの」
自分の解析した結果が疑われたところで、ノイが怒ることはない。もっともそれは、相馬限定ではあるが。
愛情故に、などと言った理由ではない。今までの経験から、根拠も無いのにそんなことは言わないと、彼のことを信頼しているのだ。
――白支配、起動――
――派生技・無の浸食、展開――
目を閉じ、彼女は解析に集中する。さっきは一瞬でやったことを、今度はじっくりと、時間をかけて行う。
「……解析終了なの。結論から言うと、具体的な効果は邪生の弱体化と継続ダメージだけだったけど、それ以外に流れのようなものが存在していたの。……こう、うまくは言い表せないんだけど」
もどかしそうに、ノイは顔を顰めた。その頭を、相馬はポンポンと叩く。
「それだけで十分だよ。俺の予想が当たっていたら、これは誰も理解できなかったもののはずだからな。何らかの流れがあるってことに気づけただけ凄いさ」
「そうなの?」
「ああ。あの人の現夢想はそういうものだからな。ノイも異名くらいは知ってるはずだぞ? ……この学園の長は正体不明って話だったが、彼だとしたら納得だ。」
「……私はちょっと、思い浮かばないけど」
「なら、試験が終わった後に会いに行ってみるか?」
理屈になっていない。ノイが分からないなら、相馬が教えてあげればいいだけなのだ。
しかし二人の間では、こういうことはよくあることだ。立場が逆のパターンも、またしかり。
「そんな簡単に、学園長に会えるもんなの?」
「普通は無理だろうが、何事にも例外はある。手紙の送り主はおそらく学園長だから、多分会うのは難しくないだろ。彼なら、俺たちのことを知っていてもおかしくないからな」
「……ますます誰なのか気になるの」
「それは、試験後のお楽しみってことで。……そろそろ、試験会場の方に向かうか」
「了解なの」
そして二人は、試験会場に向かって歩みを進める。
昨日は投稿できませんでしたが、別に毎日投稿するって言ってるわけでもないですし……いえ、すみません。
フォローといいねをよろしくお願いします。いいねは、面白いと思った話だけでいいので。
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